パーフェクト・カップル Vol.27

2018年ヒット小説総集編:「パーフェクト・カップル」(全話)

誰もがインターネットやSNSで監視され、さらされてしまうこの時代。

特に有名人たちは、憧れの眼差しで注目される代わりに、些細な失敗でバッシングされ、その立場をほんの一瞬で失うこともある。

世間から「パーフェクトカップル」と呼ばれている隼人と怜子は、一挙一動が話題になり「理想の夫婦」ランキングの常連として、幸せに暮らしていたが…。

結婚6年目。「世間の目」に囚われ、「理想の夫婦」を演じ続ける「偽りのパーフェクトカップル」の行く末とは?

今年もよろしくお願いします。昨年2018年のヒット小説総集編、「パーフェクト・カップル」一挙に全話おさらい!

第1話:誰もが憧れる「理想の夫婦」。そのすべては演技と嘘、だった

「試しに、キスしてみない?」

テキーラで有名な恵比寿のバー。常連だけが予約できる個室のソファー席で、私がそう言った相手は、10年来の親友と言うべき男友達の堀河隼人(ほりかわはやと)だった。

葉巻をくわえていた彼が、私の言葉にむせて笑いだす。その笑い声に一瞬怯みそうになったけれど、私は何とか笑顔を作ると、精一杯軽い口調で言った。

「で、もしキスできたら、結婚しない?」

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第2話:週刊誌に撮られた夫の、ヘタな嘘で“夫婦の終わり”が始まる

聞いた直後にはショックだったはずの「夫の密会」に対して、今は少し冷静になっていた。それは、ある「違和感」を感じていたから。

夫の滑舌の良い声が流れてきて、私は画面に視線を戻す。カメラ目線、最高の笑顔で喋る夫と目が合い、無言で問いかける。

―あんなに警戒してたあなたが、女の子と撮られるなんて。何があったの?

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第3話:「完璧に演じよう」と互いに約束し、世間を欺く“理想の夫婦”

結婚してからも「親友」。子供が生まれてからは「両親」としての絆が深まった実感はあっても、自分が「女」としての感情をこんな形で隼人に抱く日が来るとは思わなかった。

困惑した気持ちをごまかしたくてワイングラスを手に取ると、私の携帯がなった。

着信画面の名前は、さっき帰った社長。もう、悪い予感しかしなかった。

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第4話:家族を守るための、妻の「完璧な演技」とは?

―最後まで笑顔で、対応してみせる。

舞台の幕開けを待つ女優はこういう気持ちなのかもしれない。また何枚かシャッターが切られ、その音がまるで開幕の合図のように、私はピンクベージュに塗った唇の口角を上げ、覚悟を決めて口を開く。

「何でも聞いてください。どんな質問にも…正直にお答えします。」

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第5話:噂は止められない…。理想の夫婦を襲う、SNS炎上の恐怖

インスタに朝食をアップした直後、待ち構えていたように書き込まれたそのコメントに、私は釘づけになったまま動けずにいた。

アンチと呼ばれる人たちからの悪口に攻撃されることには慣れているし、普段ならどんなに辛辣な言葉でけなされたとしても気にしないことにしている。

けれど昨日、記者の取材を受けたばかりで、隼人の番組が始まる直前のこのタイミングに「浮気」というワードを使われるなんて。

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第6話:「僕を降ろせと言われたんですか?」人気アナウンサーの、スキャンダルの代償

「…笹崎?お前、ロケもう終わったの?」

僕が番組で自分の不倫疑惑について喋り終え、着替えて楽屋を出ると「仕事で番組には出られない」と言っていた3期下の後輩アナウンサー、笹崎拓真(ささざき たくま)が待っていた。

まだ午前9時過ぎ。こんな時間にロケが終わることはそうそうない。笹崎は、本当に申し訳さそうな、泣きそうな顔になりながら言った。

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第7話:No1.じゃなければ自分が壊れる…。トラウマと闘うカリスママモデルの苦悩

「友香は怜子さんを超えたいとか言ったことないし、気にしてもいないだろうけど、ついに、だわ!すぐに編集部も気が付くだろうし、友香の時代がきちゃうかも!」

興奮して早口でまくしたてるマネージャーに、スタイリストがキャー!と言う声で大げさに同調する。すると「お待たせしましたあ」という友香ちゃんのんびりした声が聞こえた。

「友香、何してたのよ!すぐインスタチェックして!はやく!」

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第8話:「好感度」は魔物である。「好感度」に囚われ、自分を見失い始めた人気アナウンサーの苦悩

人間を「商品」として見る、凄腕の「人を見るプロ」である彼の眼差しは、体のどこまでも入り込んでくるようで、内臓の奥まで見られている気になる。

それは決して居心地の良いものではない。しかし彼はそんな僕の気持ちさえも、見透かしたように笑って言った。

「僕は今のところ、堀河さんの敵というわけではありませんから、怖がらないでください。だからと言って、安心もして欲しくないんですけれど。」

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第9話:自分でも自覚している異常なコンプレックス。「理想の妻」を演じる女が抱える孤独のワケ

「今日、香川さんとお話しして、僕にとって『テレビ局のアナウンサーとして誰よりも有能である』というプライドが、いかに大切なものかということに気が付きました。だから…。」

座ったままの僕を、微動だにせずに見下ろす香川さんの目をまっすぐに見つめ返し、僕は宣言する。

「僕は、局を辞めずにトップを守ることで、証明してみせます。僕の代わりには誰もなれないことも、僕の時代が終わらないことも。僕の持っているすべての力とカードを使って。」

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第10話:「隼人くんのせいだよ?」人気アナウンサーをハメたあざとい元カノの攻撃と、悪意の連鎖

―少しだけでも、話したい。

私から5mほど離れた場所で、スタッフと談笑を始めた隼人くんに、何度か視線を送ってみる。気を引きたくて笹崎さんの話に大げさな笑い声を立ててみたりもした。だけど隼人くんは全く私を見ない。まるで私の存在など見えていないようなその態度に、あの日のことを思い出す。

―私だって、あんなことするつもりなかったのに。隼人くんのせいだよ。

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第11話:匿名で拡散されるデマは、止まらない。SNSに暴かれる人気ママモデルの過去と悲劇

大勢の所属タレントの総指揮をしている社長が、私のすべての現場に付き合うことがどれだけ大変で、無理をさせているかと思うと、本当にありがたかった。

そんな彼女をこれ以上心配させたくなくて、私は自分が抱えている不安の原因を言えずにいた。というより、どう説明すればいいのか分からずにいる、と言った方がいいのかもしれない。

―自分でも、何がこんなに怖いのか…分からないんだから。

そう考えながらも、やめればいいと分かっているのに、私は不安に駆りたてられ、また携帯を開いてしまった。

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第12話:クビを宣告されて私生活の切り売りを始めた、人気アナウンサーの“誤算の始まり”

隼人が私に番組への出演依頼をしてきたのは3日前、自宅で。彼はまず、番組内容の説明を始めた。

「今までテレビに出たことのない著名人を口説いて『テレビ初出演』してもらうってことを売りにした番組なんだ。日曜の昼の1時間番組なんだけど、初回はノーベル文学賞受賞作家で俺の担当。2回目は野球選手で笹崎の担当。」

取材VTRとスタジオでのトーク構成で、俺たち司会者が取材も担当する、と言った後、続けた。

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第13話:バッシング覚悟で挑んだ、人気アナウンサー夫婦の番組共演。その危うい舞台裏とは

収録終わり。撤収しているスタッフをかき分け私に駆け寄ってきた女性アナウンサーが、興奮気味に感想をくれた。その言葉に嘘は無さそうで、番組進行が上手くいった事を感じ、私はひとまずホッとする。

私が感謝の言葉を伝えて立ち去ろうとしても、彼女はまだ興奮を抑えきれない様子で続けた。

「私の質問への答えにも、すごく感動しました。」

それは、番組終了間際のある質問のこと。どうしても最後に、怜子さんに聞きたいことがあるんですが、いいですか?と彼女が突然切り出した質問だった。

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第14話:「マジでずっとムカついてました」。後輩からの痛烈な一言に言葉を失くした、人気アナの苦悩

「あ、今はフリーになるとかやめてくれよ。オレが会社に怒られちゃうよ。ずっと追われる立場のスーパーエースでいてくれよ。な?」

彼の言葉に嫌気がさし、強引に振り切って足早にエレベーターホールへ向かう。上へ向かうボタンを押した所で、声をかけられた。

「隼人さん。」

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第15話:「なんで今さら?」深い傷を残した昔の男からの連絡で、心が崩壊しそうになる人気モデルの苦しみ

「…なんで、今さら…。」

撮影の合間に、楽屋で開いていたパソコンに突如届いたメール。その差出人を確認した瞬間、私は凍りついた。忘れたはずの深い闇に一瞬で引き戻される感覚に、意識を失いそうになる。

自分の携帯番号を変え、あの男の情報をすべて捨て去った6年前。あの時に、なぜ、パソコンのメールアドレスも変えておかなかったのか。後悔しても、もう遅い。

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第16話:「あなたは小悪党に過ぎない」。人気アナウンサーを叩きのめす、敏腕芸能マネージャーの思惑

「今回、隼人さんではなく僕を選んだ本当の理由を…聞いておきたくて。正直、佐藤さんが人見知りをするということ以外に、何か裏が…あるんじゃないかと思っていますが…違いますか?」

探るような、疑念のこもった眼差しを隠さない笹崎アナに、私は思わず笑い出しそうになった。

―自分が裏を仕掛ける人間ほど、人の裏を疑うものですからね。

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第17話:理想的な夫が隠し続けていた秘密。衝撃の告白に揺さぶられた、妻の決意とは?

「…ちょっと俺の話、していいかな。」

黙ったままの私に、隼人が言った。優しい口調に救われた私が頷くと、隼人が照れくさそうに喋りだす。

「俺の秘密をバラすよ。俺が、怜子と結婚を決めた理由。世間体が悪いからとか、打算的なことじゃなかったんだよ。本当はさやかのことなんてとっくに吹っ切ってた。」
「……どういうこと?」

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第18話:「どこからが嘘で、演技だった?」婚約破棄された恋人に、ずっと聞きたかった1つの疑問

「あなたに会うのは、今日で本当に最後と決めてます。最後の質問だから、絶対に正直に答えて。私があの時怖くて聞けなかったこと…。」

彼は笑顔を崩さない。けれど瞳が少し揺らいだように見えた。

「私に言ったことの、どこからが嘘で演技だった?それとも最初から?」
「…えっ?」

彼の反応で、確信を持った。彼はおそらく、知らないままなのだ。7年前。私が何を、知ってしまったか、を。

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第19話:「もっと際どい写真も、撮りました」。過去のプライベート写真流出の危機に、迫られる究極の選択

―なんで、こんなことに…。

怜子の事務所の社長室まで、強引に押しかけてきた男性が…香川さんが、社長に挨拶しているのを眺めながら、僕はまだ状況を把握できずにいた。

怜子に付き添い、何かがあったら対処できるようにと待機していた僕に、香川さんからの着信があったのが、30分ほど前。あとでかけ直せばいい、と2度ほどその着信を無視したところで、ショートメールが入った。

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第20話:「駆け引きだったのか?」人気アナが選択を迫られた、敏腕芸能マネージャーからの2つの提案

堀河アナには、あえて2つの提案をした。楽な道は、後者。自分の地位やステータスを守るため、傷を少なくするためには、後者が正しい選択だ。

テレビ局は巨大な組織だ。アナウンサーといえども、一会社員に過ぎず、この手の問題で彼を本気で守るとは思えないし、そんな仕組みも持っていない。

テレビ局の顧問弁護士の専門は芸能ではないし、スキャンダルが2度目になってしまう堀河アナは、会社に頼ったところで今度こそ切られるのがオチだ。

―私の1度目の誘いは断られ…あなたは会社を選びましたが、今回はどうでしょうね。

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第21話:「この日を一生忘れない」。スキャンダルにまみれた人気アナウンサーの、運命の1日

僕と怜子は、社長には後日きちんと説明することを伝え、場所を貸してもらったお礼を言ったあと、家に戻ってきた。

僕たちは握った手を離さないまま、リビングのソファーに並んで座った。お茶でも淹れてこようか、と言った僕を遮り、怜子が話し始めた…。

この日のことを、僕は一生忘れないだろう。僕たち夫婦の関係が、変わることになった、この日のことを。

第21話の続きはこちら

第22話:「清く正しく」を続けることができなかった、人気アナウンサーの転落劇

「私たち、確かに世間が思ってるような、パーフェクトカップルじゃないけど、さやかちゃんに攻撃されて壊れるような絆じゃないと信じたい。私たちは少しずつ、夫婦になってきたはずだから。」

隼人にそう言いながら、自分に言い聞かせているような気持ちになった。ここでさやかちゃんや世間の噂に負けたら、私たちの6年間も否定され、翔太にとっても誇れる親じゃなくなってしまう。

―選ぶべき手段は一つだけ。

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第23話:全てを失うのは、誰?清純な悪女vs人気アナウンサーの戦いに、世間が下した非情なジャッジ

「記事に書かれていたことで反論したいのは、私は彼女を捨てて怜子を選んだわけではない、ということ。そして怜子と結婚してからは、写真誌に撮られるまで、一度も彼女にあったことはない、ということです。」
「それを、証明できることはありますか?」

記者の質問に隼人は正面をむいたまま、隣に座る私の手を、机の下でそっと握り…そして言った。

「記事に対する皆さんの疑問に正直に答えていきますので、あとは皆さんが判断してください。」

室内の空気が一瞬、ピン、と張り詰め…緊張感の中、記者の質問が始まった。

第23話の続きはこちら

番外編:生粋のお嬢様が、人気アナを陥れるほどの悪女になるまでと、その破滅

私の実家の店には芸能界のお客様も多かったし、その手のパーティーにも幼い頃から出席していたから、世間で「華やかだ」と言われる世界には慣れていた。だから仕事にはすぐに馴染んだ。

物怖じしないのが良かったのか先輩たちにも重宝され、私は仕事が思いのほか楽しくなったけど、パパはいつもこんなことを言っていた。

「うちのお姫様には仕事よりも、早く素敵な人を見つけて欲しいんだけど。」

私が隼人くんと出会ったのは、そんな時だった。

番外編の続きはこちら

番外編:敏腕芸能マネージャーが語る、人気アナウンサーのスキャンダルの裏側と、最後の秘密

―しぶといですね、堀河さん。

あの堀河アナが開いた記者会見から、ちょうど1年ほどが経つ。

堀河アナは、徐々に深夜番組やスポーツ番組のナレーションでその声を聞くことが多くなってはいたが、ついに華々しい表舞台に復活の道が用意されたというわけか。

しかし、私は納得が行かなかった。

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