パーフェクト・カップル Vol.14

「マジでずっとムカついてました」。後輩からの痛烈な一言に言葉を失くした、人気アナの苦悩

誰もがインターネットやSNSで監視され、さらされてしまうこの時代。

特に有名人たちは、憧れの眼差しで注目される代わりに、些細な失敗でバッシングされ、その立場をほんの一瞬で失うこともある。

世間から「パーフェクトカップル」と呼ばれる隼人と怜子は、一挙一動が話題になり、「理想の夫婦」ランキングの常連として幸せに暮らしていた。しかし結婚6年目、人気アナウンサーの夫・隼人が女の子と週刊誌に撮られてしまう

謹慎処分を受けた隼人だったが、彼を陥れたのは、2人の悪意の偶然の連鎖の結果だった。夫のピンチが続く中、妻は番組での夫婦共演を決意したがその結果は…。

「世間の目」に囚われ、「理想の夫婦」を演じ続ける「偽りのパーフェクトカップル」の行く末とは?


「やっぱり流石だった、と言うべきかな、堀河くんは。」

その月の視聴率に貢献した番組やスタッフが呼ばれる「月間貢献賞」の表彰式。

「ありがとうございます。」

社長の言葉にお礼を言い、賞状を受け取り一礼すると、会場から拍手が起こった。僕は檀上から会場全体を見渡した。

社内の催事が行われる広いホールに集まったのは、社長を筆頭とした役員一同と、局内でもやり手の制作スタッフ達。総勢100人程といったところか。みなフォーマルな格好をし、記録用にカメラもまわっている。

その中には、笹崎の姿もある。僕と目が合うと、彼は「後輩らしい笑顔」で笑って見せた。だから僕も「先輩らしい笑顔」を返してやる。

拍手が鳴り響くなか社長にマイクが渡され、咳払いと共に社長のスピーチが始まった。

「今回、堀河くんが表彰される理由は2つ。1つは新しく立ち上げた新番組の高視聴率への貢献。もう1つは、朝のニュース番組の視聴率回復への努力です。」

僕の方をちらりと見た社長に、軽く頭を下げて答えると、また会場から拍手が起こった。その拍手の中、社長は言葉を止めず喋り続けた。

「僕は正直、堀河くんが写真誌に撮られた時、がっかりしましてね。」

会場が笑いと共にどよめいたが、社長の表情が硬いままだったため、すぐにその笑いは収まった。

社長は現役時代、報道のスペシャリストと言われた人物。この業界では珍しく叩き上げで社長に上り詰めた「硬派」な人柄でよく知られている。

「堀河くん1人のせいにするべきではないが、あの写真誌の騒動の後、番組の視聴率は下降した。画面に映る人物が自分の気持ちを不快にするならば、私だってその番組を見なくなると思います。朝の番組なら尚更。」

褒められている気にはなれない社長のスピーチに、居心地が悪くなる。

「ただその後、堀河くんは、必死の努力で挽回しました。捨て身で奥さんを口説いて新番組に出演させ、朝の番組では、普通なら新人アナウンサーがこなすような小さな取材もバカにせず、体を張って挑戦した。」

檀上から、笹崎がうつむくのが見えた。

「視聴者に、その『必死さ』が伝わったのだと思います。今の視聴者が求めているのは、『ガチ感』つまりウソの無さです。その結果が数字になって出たのだと思います。おめでとう。良く頑張ってくれました。」

社長が僕の方を見ながらスピーチを締めると、再び大きな拍手がおこり、僕にマイクが渡された。僕はもう一度笹崎を見たが、彼は下を向いたままでその表情は見えなかった。

―笹崎、ちゃんと聞いてろよ。

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