パーフェクト・カップル Vol.13

バッシング覚悟で挑んだ、人気アナウンサー夫婦の番組共演。その危うい舞台裏とは

誰もがインターネットやSNSで監視され、さらされてしまうこの時代。

特に有名人たちは、憧れの眼差しで注目される代わりに、些細な失敗でバッシングされ、その立場をほんの一瞬で失うこともある。

世間から「パーフェクトカップル」と呼ばれる隼人と怜子は、一挙一動が話題になり、「理想の夫婦」ランキングの常連として幸せに暮らしていた。しかし結婚6年目、人気アナウンサーの夫・隼人が女の子と週刊誌に撮られてしまう謹慎処分を受けた夫・隼人だったが、彼を陥れたのは、2人の悪意の偶然の連鎖の結果だった。

そこに芸能界に絶大な力を持つ香川の思惑が加わり夫婦のピンチが続く中、番組で夫婦共演することになるが…。

「世間の目」に囚われ、「理想の夫婦」を演じ続ける「偽りのパーフェクトカップル」の行く末とは?


「堀河怜子さん入られまーす!」

隼人と共演する生放送番組の、収録開始10分前。

フロアディレクターの呼び込みとスタッフの拍手に迎えられて、私は収録スタジオに入った。

「マイクをつけさせて頂きます。」

音声スタッフが近寄ってきて、私のラベンダー色のシャツの襟もとにピンマイクをセットしてくれた。

彼女がマイクの位置を調整してくれている間にスタジオを見渡すと、隼人はセットのソファーにスタンバイし、資料に目を通しているようだった。

背もたれに寄り掛からず、背筋をピンと伸ばし集中している。

隼人が座っている場所だけ空気が違って見えて、フロアには数十人のスタッフがいるというのに、彼の孤独を感じた。

―隼人、緊張してるな。

人に弱みを見せることが嫌いで、感情を隠すのが上手い彼の緊張感に気が付いている人はおそらく1人もいないだろう。

そしてそれは私も同じで…。

「いやあ怜子さん流石ですね。生放送なのに、実に堂々としてらしゃる。」

近づいてきたプロデューサーが、ガハハ、と笑いながらそう言ったけれど、本当は9cmヒールの足先が震えそうなくらい緊張している。けれどそれが伝わらないように平然と微笑んでみせた。

「では怜子さん、音楽が始まったらセットのセンターを歩いて、隼人さんのお隣の席にお座りください。」

スタッフが私に段取りを説明してくれた。

出演者は、隼人と私、アシスタントの女性アナウンサーの3人。

NYの古い図書館をイメージしたセットで壁一面が本棚。その前に革張りのこげ茶色のソファーが3つ置かれていた。

私が理解したことを確認したスタッフが「では本番です!」と大声を出すと、広いスタジオ内が静まりかえった。

「本番まで、5秒前!4、3…」

音楽が鳴り始め、私は拍手の中を隼人の方へ歩いていく。

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