パーフェクト・カップル Vol.8

「好感度」は魔物である。「好感度」に囚われ、自分を見失い始めた人気アナウンサーの苦悩

誰もがインターネットやSNSで監視され、さらされてしまうこの時代。

特に有名人たちは、憧れの眼差しで注目される代わりに、些細な失敗でバッシングされ、その立場をほんの一瞬で失うこともある。

世間から「パーフェクトカップル」と呼ばれる隼人と怜子は、一挙一動が話題になり「理想の夫婦」ランキングの常連として幸せに暮らしていた。

だが結婚6年目、人気アナウンサーの夫が女の子と週刊誌に撮られてしまう。その代償として2週間の謹慎処分を受けた夫に、近づいてきた人物が、ある提案を…。

「世間の目」に囚われ、「理想の夫婦」を演じ続ける「偽りのパーフェクトカップル」の行く末とは?


「堀河さん。あなたと、あなたの会社のトップシークレットを、こんなに早く僕が知っているということが、どういうことか分かりますか?」

そう言ったのは香川東吾。日本有数の芸能プロダクションの敏腕マネージャーであり、その会社の幹部でもある。

本来ならとっくに現場から離れるポジションにいるのに、今でも俳優やタレントたちの撮影に付き添う。そして彼が担当した芸能人たちは、必ず売れていく。

まだ40歳を少し過ぎたばかりの彼は、日本の芸能界を牛耳るドンと呼ばれる人たちに比べ、はるかに若いが、そのドンたちさえも彼には一目置いているらしく、事務所を超えた協力者が多いと聞く。

―怖いな。

恐怖を感じたことを気付かれぬよう、僕は笑顔を作り、彼の質問に答える。

「正直、全くわかりません。」

僕の言葉に、彼は「では説明しましょう。でもその前に注文を」と言って店員を呼び、同じシャンパーニュをもう1本注文した。

ジャックセロス。安くとも1本5万円は超えてしまう、高級シャンパン。僕の大好きな酒だが、それを彼がなぜ知っているのかも謎だ。

女性アナウンサーならともかく、男性アナウンサーがシャンパン好きであることなど、あまり世間の受けがよくなさそうで、僕はどこにもその趣味を公表していなかった。

―この人の情報網はどうなってるのか。

人間を「商品」として見る、凄腕の「人を見るプロ」である彼の眼差しは、体のどこまでも入り込んでくるようで、内臓の奥まで見られている気になる。

それは決して居心地の良いものではない。しかし彼はそんな僕の気持ちさえも、見透かしたように笑って言った。

「僕は今のところ、堀河さんの敵というわけではありませんから、怖がらないでください。だからと言って、安心もして欲しくないんですけれど。」

―怖がるな、安心もするな。

矛盾したその2つの言葉を一気に並べた真意が分からず僕は、切れ長の目を細めて微笑む彼を見つめたまま、返事もできずにいた。

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