パーフェクト・カップル Vol.16

「あなたは小悪党に過ぎない」。人気アナウンサーを叩きのめす、敏腕芸能マネージャーの思惑

誰もがインターネットやSNSで監視され、さらされてしまうこの時代。

特に有名人たちは、憧れの眼差しで注目される代わりに、些細な失敗でバッシングされ、その立場をほんの一瞬で失うこともある。

世間から「パーフェクトカップル」と呼ばれる隼人と怜子は、一挙一動が話題になり、「理想の夫婦」ランキングの常連として幸せに暮らしていた。しかし結婚6年目、人気アナウンサーの夫・隼人が女の子と週刊誌に撮られてしまう謹慎処分を受けた夫・隼人だったが、彼を陥れたのは、2人の悪意の偶然の連鎖の結果だった。

夫のピンチが続く中、妻は番組での夫婦共演で夫を救うことに成功する。夫は以前の名声を取り戻した。が、今度は妻に過去のトラウマが迫る。

「世間の目」に囚われ、「理想の夫婦」を演じ続ける「偽りのパーフェクトカップル」の行く末とは?


香川:「脅しではなく、タイムリミットだ」


「香川さん、今から少しお話しできませんか?」

うちの事務所に所属しているアスリートを交えた打ち合わせが終わり、彼女をタクシーに乗せた後、玄関まで送りにきていた笹崎アナにそう言われた。

「あと30分でここを出なければなりませんが、それまででよければ。あまり聞かれたくない話ですよね?」

私がそう返事をすると笹崎アナが頷いたので、テレビ局の地下駐車場に2人で向かった。

辺りに誰もいないことを確かめてから、私は自分の車の後部座席に笹崎アナを座らせ、自分は運転席に乗り込む。

私が移動に使っているのは社用車で、タレントを乗せることもあるため、窓にはスモークが貼ってある。後部座席に座れば、笹崎アナの姿は外からは見えないはずだ。

―私たちが2人で話し込んでいた、なんて噂が出回れば、どんな風におヒレがつくか分かりませんからね。

この業界の情報は、週刊誌や写真誌にとってはまだまだ美味しいようで、こまめに番組スタッフに接触し、金で情報を買い取る記者たちもいる。

つい最近も、入ったばかりの若手のスタッフたちが、ドラマの打ち上げで酔っ払った有名人の写真を「悪気なく」SNSにアップし、問題になったばかりだ。

私はもう一度、車の周りに人影がないことを確認したあと、バックミラーを笹崎アナが見える位置に合わせながら言った。

「お話とやらを、聞きましょうか。残り時間は…25分を切りましたから。」

笹崎アナは、ここまで歩いて来た時も車に乗り込んでからも、まだ一言も発していない。そんな彼を急かすつもりで、私はやや大げさに、腕時計を気にしているふりをする。

脅しではなく、それが私が次の現場へ向かうタイムリミットだ。それ以上は彼に時間を割くつもりはない。

すると大きな体が動く気配がし、鏡の中の笹崎アナが、私に目線を合わせると喋り始めた。

「今回、隼人さんではなく僕を選んだ本当の理由を…聞いておきたくて。正直、佐藤さんが人見知りをするということ以外に、何か裏が…あるんじゃないかと思っていますが…違いますか?」

探るような、疑念のこもった眼差しを隠さない笹崎アナに、私は思わず笑い出しそうになった。

―自分が裏を仕掛ける人間ほど、人の裏を疑うものですからね。

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