パーフェクト・カップル Vol.24

パーフェクト・カップル 番外編:生粋のお嬢様が、人気アナを陥れるほどの悪女になるまでと、その破滅

誰もがインターネットやSNSで監視され、さらされてしまうこの時代。

特に有名人たちは、憧れの眼差しで注目される代わりに、些細な失敗でバッシングされ、その立場をほんの一瞬で失うこともある。

世間から「パーフェクトカップル」と呼ばれ、幸せに暮らしていた隼人と怜子。しかし結婚6年目、人気アナウンサーの夫・隼人が女の子と週刊誌に撮られてしまう。彼を陥れたのは夫の元カノ・橘さやかと、後輩アナウンサー笹崎の悪意の連鎖だった。

夫婦が協力して危機を脱したのだが元カノ、橘さやかが、夫婦に2度目のスキャンダルを仕掛けてきた。絶体絶命の夫婦は、世間に立ち向かう決意をするが…橘さやかは、一体なぜ、そこまで「パーフェクトカップル」を壊すことに執着するのか?さやかの心境に迫る。

最終回は今夜19時配信予定!


さやか:「私だって、大変だったんだから」


―誰かにちゃんと話を聞いてもらえるのって、すごく、すごく久しぶり…。

出版社の会議室で、記者さんとカメラマンさんと向かい合って、隼人くんとの関係についての質問に答えながら、そんなことを思う自分が虚しくなる。

「橘さんも大変だったんですね。こんな写真が出たら、ご主人にもバレちゃったでしょう。怒られなかったですか?」

私は頷くわけでもなく、否定するわけでもなく、曖昧に笑った。夫はそんなことに怒るほど私に関心がないと思う、とは言えず、そうですね、離婚とかになるかもですね、と他人事のように答えた。

記者さんは私の話を、それは辛かったでしょう、と相槌を打ちながら親身に聞いてくれる。それが本当に嬉しくて、涙が出た。

―隼人くん達だけじゃなくて…私だって、大変だったんだから。

それを分かってくれる人が目の前に現れた。

夫にも、隼人くんにも無視された、「可哀想な」私のことを。

記者さんの質問に答える度に、カメラのシャッター音が切られたけれど、そんなこと全く気にならなかったし、その音にむしろ、何だかすごく興奮した。

「堀河アナウンサーとお別れすることになった原因を…お伺いしても?」

何個目かの質問で記者さんがそう言った時…すぐに怜子さんの顔が浮かんで、すごく嫌な気持ちになった。

―怜子さんに会うまでは、隼人くんと私、すごく幸せだったのにな。



私の実家は、銀座でも老舗といわれる料亭で、私は両親が年をとってから生まれた末娘。年の離れた兄が後継に決まっていたし、私は“ただ可愛いらしく、女の子らしく”育ってくれればいい、と言われ続けて成長した。

お勉強もできないわけじゃなかったけれど、母が選んだ習い事は、バレエに茶道、そして華道。日舞は途中でやめてしまったけど、着物は1人で着ることができるようになった。

「さやかは、我が家のお姫様だから。」

パパはいつもそう言ってたし、私が欲しいと思ったものは、いつも誰かが「先回りして」準備してくれている人生だった。いわゆるお嬢様育ちなんだと思う。

親に勧められるまま、女子高、女子大に進学し、就職先はパパがお友達のアパレル会社の社長さんに話をつけてくれた。

「さやかちゃんは美人さんだから、PRの部署でどうかな。」

パパのお友達のおじさんがそう言い、私にも何の不満もなく、あるブランドのプレスアシスタントとして新卒採用された。

そのブランドは、ファッション誌やテレビへの貸し出しも多かった。

でも私の実家の店には芸能界のお客様も多かったし、その手のパーティーにも幼い頃から出席していたから、世間で「華やかだ」と言われる世界には慣れていた。

だから仕事にはすぐに馴染んだ。

物怖じしないのが良かったのか先輩たちにも重宝され、私は仕事が思いのほか楽しくなったけど、パパはいつもこんなことを言っていた。

「うちのお姫様には仕事よりも、早く素敵な人を見つけて欲しいんだけど。」

私が隼人くんと出会ったのは、そんな時だった。

【パーフェクト・カップル】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo