パーフェクト・カップル Vol.19

「もっと際どい写真も、撮りました」。過去のプライベート写真流出の危機に、迫られる究極の選択

誰もがインターネットやSNSで監視され、さらされてしまうこの時代。

特に有名人たちは、憧れの眼差しで注目される代わりに、些細な失敗でバッシングされ、その立場をほんの一瞬で失うこともある。

世間から「パーフェクトカップル」と呼ばれ、幸せに暮らしていた隼人と怜子。しかし結婚6年目、人気アナウンサーの夫・隼人が女の子と週刊誌に撮られてしまう。彼を陥れたのは、2人の悪意の偶然の連鎖の結果だった。夫のピンチが続く中、妻は番組での夫婦共演で夫を救うことに成功する

夫は以前の名声を取り戻した。が、妻が過去のトラウマと対峙している最中、夫に元カノの捨て身の攻撃が迫る。

「世間の目」に囚われ、「理想の夫婦」を演じ続ける「偽りのパーフェクトカップル」の行く末とは?


隼人:「香川さんは、大げさに騒ぎ立てる人ではない」


―なんで、こんなことに…。

怜子の事務所の社長室まで、強引に押しかけてきた男性が…香川さんが、社長に挨拶しているのを眺めながら、僕はまだ状況を把握できずにいた。

怜子に付き添い、何かがあったら対処できるようにと待機していた僕に、香川さんからの着信があったのが、30分ほど前。

あとでかけ直せばいい、と2度ほどその着信を無視したところで、ショートメールが入った。

『大至急お会いする必要があります。今どちらに?』

簡潔だが、急を要することはよく分かるその文章。だが、大至急は無理だし、香川さんに状況を説明するわけにもいかない。

少し迷った挙げ句、僕が今一人ではなく、さらに仕事をしているように思わせられれば、納得してくれるだろうと考え、こう返信した。

『今は妻の事務所にいますが、打ち合わせ中なので終わったらすぐに、ご連絡します。何かあったのでしょうか?』

とっさに上手いウソ…しかも、あの香川さんをごまかせそうなウソは思いつけず、居場所だけは、「本当の場所」を使ってしまった。

僕のメールに返信は来ず、しばらくすると今度は社長室の電話が鳴り、スタッフが「僕への来客」を知らせに来た。

緊急事態だとおっしゃっている、と伝えられ、僕は余程のことなのだろうと思い、香川さんを招きいれることにしたのだが。

社長と香川さんは元々顔見知りだったようで、社長は「香川くん」と呼び、懐かしそうに近況を尋ねようとしていた。だが、香川さんは挨拶もそこそこに、こう切り出した。

「堀河さんと2人でお話させて頂くために来たのですが…。この部屋をお借りしても?」

社長は、チラリと僕を見たが、やはり今は隣の部屋にいる怜子のことが気になったのだろう。微笑みを絶やさぬまま、香川さんに返事をする。

「あと数時間待てないかしら。今、怜子が会議室で取材を受けてるんだけど、それ終わりで、隼人くんもその編集者と打ち合わせすることになってるの。今度夫婦で出る雑誌の打ち合わせだから…」

「待てません。」

ウソをついて断ろうとした社長の話を遮る勢いで、香川さんは言い放った。

「突然押しかけた挙句、勝手なお願いなのは承知しています。どうしても無理、とおっしゃるなら、私は帰りますが…。」

言葉を止めた香川さんの視線が、社長から僕に移り、また社長に戻る。その射抜くような目の鋭さに、社長が怯むのが分かったのか、香川さんは少し微笑んでみせた。

「私が帰る、ということは、最悪の事態が起こる、ということですよ。…堀河夫妻にとって。」

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