御三家。
それは、首都圏中学受験界に燦然と輝く、究極の伝統エリート校を指す。
男子は開成・麻布・武蔵。女子は桜蔭・女子学院・雙葉。
5万人ともいわれる首都圏中学受験生の頂だ。
挑戦者を待ち受けるのは、「親の力が9割」とも言われるデス・ゲーム。
子どもの頭脳、父の経済力、そして母の究極の献身が求められるこの戦場に、決して安易に踏み込むなかれ。
運命の2月1日、「真の勝者」は誰だー。
「御三家ウォーズ」一挙に全話おさらい!
第1話:美人妻が何も知らず踏み込んだ、御三家中学受験。「親の力が9割」のデスゲームとは
「ママ、ここで待ってる?俺ひとりでみてこようか」
―そんなわけない。そんなわけがない。
勝っても負けても。あの掲示板に番号がなくても。
「ママも行く。翔と一緒に見るよ」
私にとっての勇者は君だ。私たちは、歩み寄り、前進し、そして仰ぎ見た。東京都、私立男子校御三家。麻布学園中学校の、合格者掲示板をー。
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第2話:「あなたみたいな母親に、受験は無理」と言われた女。最難関校に合格するために、必要なモノとは
「すっごいや麻布…これってほんとに中学生や高校生がやってるの?」
翔がステージの狂乱に目を奪われたまま、彩に尋ねた。
「う、うん、どうなんだろ?…確かに先生、さっきから一人も見ないよね?」
彩は、カオスという表現がぴったりの空間に、すっかり驚いてしまった。エネルギー渦巻くこの空間の運営スタッフは、完全に生徒のみで、先生の影も形もない。
しかしイベントはうまく仕切られているような気がする。一見奇妙な風貌の学生たちだったが、彩たちを誘導するさまは堂に入っていた。
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第3話:ママ友から「ろくに勉強したことないでしょ?」と言われた女。高学歴の専業主婦が放った痛烈な一言
次の入塾試験はなんと今週末。申し込みの締め切りは明日だという。
今夜にでも翔と相談しようと、お礼を言って出ようとした時、奥の教室から突然たくさんの母親の大群が出てきた。
港区らしく身綺麗な母親が多かったが、塾というTPOに合わせているのだろう、シックな出で立ちが多い。しかしその中でミントグリーンのワンピースに華奢なヒール、こなれたヘアアレンジの女が声をかけてきた。
「彩?!偶然、こんなところで…!」
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第4話:「憎たらしい義両親と夫に、見せつけてやるの…」。罵られた美人妻が、逆襲を誓ったキッカケ
すでに将棋部で麻布生のすごさを体感しているせいか、翔は彩の話にそれほど驚くことはなかったようだ。そして、こう言った。
「僕さ、やってみたい。あと1年半しかないから難しいって祐希ちゃんも言ってたんだよね?じゃあダメ元っていうの?かえって気楽だよ、だって誰も俺がそんなすごい学校受かるなんて思ってないもん」
彩は思わずのけぞった。
―その発想はなかったー!じゃあ挑戦するってこと?中学受験に?
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第5話:「以前は、素敵な夫婦だったのに…」3年間で、子どもが怯えるほど豹変してしまった夫婦
「もちろん母親が完全に伴走できるなら、それがハマれば劇的に効果がある。でも肝心なのは、母親が自分の子供をよく見ること。そして、中学受験の『目的』を決して見失わないことよ」
「よく見る…?そんなの当たり前じゃない?それに目的っていうと…どんな学校を目指すかっていうこと?それとも将来の夢?」
彩は訝しげに画面越しの祐希の顔を見る。
「簡単だと思うなら、彩はまだ、中学受験の狂気を分かっていないわ」
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第6話:「あなたなんかに負けるわけにはいかないの」仲良しのママ友が、一瞬にして敵に変わった出来事とは
彩は、ホテルのティーラウンジで、とっておきの手土産『ルワンジュ東京』のトリュフシューを携え、瑠奈と薫子に頭を下げていた。
「お忙しいのに、二人ともありがとうございます。塾の保護者会が始まるまで40分くらいだけど、良かったらブランチも召し上がってください」
数日前、少しだけ話を聞かせてくれないかと瑠奈にLINEをした。
そして図々しいのを百も承知だが、「もう一度、薫子さんにつなげてほしい」と頼んだのだ。瑠奈は案外乗り気で承諾してくれて、この会合が実現した。
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第7話:朝6時、ママ友から恐ろしいLINEが…!美人妻が“卑怯者”呼ばわりされた理由
「翔!翔!早く帰っておいで!選抜だよ、ついに麻布への扉が開いたかも!」
彩は、誰もいないリビングを無駄にダッシュで往復する。
はやく、翔に見せてやりたい。この数か月の地を這うような努力は、無駄ではなかったのだ。
…それが「地獄の1丁目」だとはまだ知らずに、彩は翔の帰りを待ちわびるのだった。
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第8話:エリート校合格には、妻の「究極の献身」が必要か?限界まで追い詰められていく女たち
彩は、スマホ画面を見つめながら混乱していた。友人・瑠奈からのLINEには、「翔がカンニングをして選抜に入った」と書いてある。翔に気づかれないようにリビングをそっと出た。
寝室に移動し、スマホから塾のアカウントにアクセスする。前回試験の解答用紙はスキャンされており、いつでもオンラインで見ることができるのだ。
―試験の解答用紙を見直しても、不自然にできていると思う問題はない。苦手なところは解けてないし…。
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第9話:美しき妻が、涙を流して懺悔を…。高学歴の女が告白した、本番120日前の非常事態
「薫子さん、カフェラテとコーヒーどっちがいいですか?」
彩は、カフェの隅でぼんやりと外を見て座る薫子に、ドリンクを差し出した。
もし座って話すのが嫌そうだったらすぐに出ようと思って、テイクアウト用のカップにしてもらった。だが薫子は、両手でカップを受け取るとソファにほんの少し身を沈めた。
「…ごめんなさい。大して知りもしない人に急に泣かれて、気味が悪いったらないわよね」
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第10話:数百万円で解決できるなら安いもの。課金ゲーム化した戦いで、暴走する妻たち
「祐希ちゃん。もう生徒は取らないっていうのは分かってるけど…お願い。お金はいくらでもいい。翔の勉強を見てやってください。あの子を何としても麻布に入れてやって。お願いします」
彩がそう言うのを予想していたのか、祐希は動じる様子もなく、飲んでいた紅茶をテーブルに置いた。
「彩。私を『いい先生』だなんて思ってるなら、幻想よ。なんせ私は、何人もの子どもの人生を台無しにした女なんだから…」
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第11話:「本番1週間前に、嘘でしょ…」合格のためにすべてを賭けてきた親子を襲った悲劇
周囲から聞こえてくるのは、彩にとって衝撃的な話ばかりだった。
入浴中も脱衣所で親がテキストを読み上げる、1時間2万円の合格請負人と呼ばれるプロ家庭教師を毎日雇う、インフルエンザ予防のために下の子と父親をホテルに移す…。
そんな中で、彩と翔は「普段通りに」必死に勉強していた。ただ、そのままでは大きく巻き返すことなど不可能にも思えてくる。
そして、一つだけ迷っていることがあった。1月の学校登校についてである。最近、驚くべき話を塾で聞いた。この近所にある受験率100%近い公立小学校では、なんと1月に登校する6年生はまばらだというのだ。
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第12話:2月3日、運命を分ける掲示板。壮絶な戦いに挑んだ親子に与えられる、衝撃の結果とは?
朝。5時のアラームの前に、彩の意識は覚醒した。
―ついにこの日が来た…。
昨夜はどうにも眠れず、まどろんだのは明け方だったが、不思議と頭は冴え冴えとしていた。
朝食を作ってから真一を起こそうと思い、そっとベッドを出ると、傍らから「おはよう」と声がする。振り返ると、ベッドの中の真一と目があった。
「2月1日。いざ出陣だな」
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