東京札幌物語 Vol.1

東京札幌物語:北海道出身の希(23歳)の上京ストーリーが始まる。

生まれ育った場所を「地元」と言うならば、日本中の全てが、きっと誰かの「地元」。歳を重ねるごとに、変わりゆく価値観、パートナー、経済感覚。刻々と変化し続ける自分の人生において、調子がよいときには煩わしくも感じる「地元」の存在は、期せずして訪れる挫折と絶望のとき、優しく手を差し伸べてくれるはず。

これは、北海道大学を卒業したのち東京の会社を中心に就職活動をし、渋谷にあるとあるインターネット企業に就職した北原希(きたはらのぞみ/23歳)の「東京」と「地元」の物語。


恋人よ。僕は旅立つ。
東へと向かう列車で。
はなやいだ街で君への贈り物。探す 探すつもりだ。

昔、父親が口ずさんでいた昭和の名曲「木綿のハンカチーフ」が頭の中で流れていました。故郷に恋人を残して、上京した男が都会に染まり帰らぬ人となる。というその歌詞に、子供心ながら東京の華やかさと、故郷の物哀しさの明暗のコントラストに胸がざわざわしたのを覚えています。

新千歳空港の出発ロビー。振り返ると、豆粒のように小さくなるお母さんがまだそこに立っていて、飛行機の中、涙が溢れてきました。

通話:まあくん携帯  @品川駅


まぁくん?今品川駅に着きました。

お父さんは最後まで東京で働くことに反対していたけれど、お母さんは「もっと広い世界を見てきなさい。」って背中を押してくれました。

北海道で生まれ育ったお母さんは、氷点下にまで下がる冬の薄暗い朝、誰よりも早く起きて、あの小さい体で次から次に降ってくる途方もない雪をかき分け家の前に道を作ってくれてました。きっと、まあくんのお母さんもそうだよね?雪国の母親ってなんであんなに働き者なんだろうね。

お母さんを思い浮かべるとき、ぬくぬくの布団にくるまれながら聞いたあのガリガリという雪かきの音が鮮明に蘇ります。


北海道大学を卒業して、地元の企業で働くか、上京するか。

散々悩んで、渋谷のインターネット企業に入社を決断したのに、飛行機の中で早くもホームシックで泣いちゃうなんて情けないね・・・(笑)

それでもね、羽田空港の上空から乱立する高層ビル郡を見たとき、心細さや不安が一気にぱっと晴れて、胸が熱くなったの。

さぁ、いよいよ、ここから、始まるんだって。

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