無我夢中で働き、仕事や生活の変化に目まぐるしく対応した若かりし頃を経て、真の大人の成熟に到達する52歳。
お金も時間も余裕のあるいま無性に惹かれるのは、心地良い食体験ができる店。それでいて一緒に行く仲間やパートナーが喜んでくれたら心底嬉しい。
そんな意外性のある店を、センス溢れる5人の食通に聞いた。
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この世代のイケオジ代表!
1971年生まれ。『THE UPPER』や『THE APOLLO』など人気店を数多く手掛け、国内外で評価される。話題のピックルボールをいち早く仕掛けるヒットメーカー。
1.一線を走る実業家は、深夜の上質なイタリアンで心の距離を近づける
『tens.』
「いい意味で緊張しない感じがこの店の魅力。“自分をわかってもらう”には深夜のカウンターが良いですね」
青山の予約困難なイタリアン『malca』が昨年10月、外苑前にひっそりと姉妹店『tens.』を出店。“食べたいものを、好きなだけ”というアラカルト主体のコンセプトは本店同様だ。
「料理の温度、オープンキッチンから漂う香りや音を直に体感してほしい」とオーナーシェフ北野 司さんは言う。
深夜の同店へ社内外の仲間を連れて頻繁に通うのが“トランジット”代表の中村貞裕さん。
「『TACUBO』出身でパスタ担当だった北野シェフが作るパスタが絶品!デザートまですべてがハイレベル、これに尽きます」と絶賛する。
仕事柄、国内外のグルメに精通する中村さんレベルともなれば“美味しい”は大前提。
パスタが常時20種類から選べる楽しさに加え、メニューにないリクエストにも対応してくれる柔軟さ。
加えて「うちは22時からが本番」と北野シェフが話すように、深夜限定の裏メニューが登場するワクワク感もある。
24時までの連絡でラストオーダーは自由自在なため、深夜に絶品にありつけることも、舌の肥えた多忙な大人たちを射止める所以だ。
夜中にもかかわらず贅沢な時間を過ごせる、そんな心地良い裏切りが仲間の心を掴んでいる。
この世代のイケオジ代表!
1975年生まれ。よく書き、よく食べる放送作家。代表作に「アナザースカイ」「オモウマい店」「有吉くんの正直さんぽ」。「巨大マグロ戦争」など特番も手掛ける。
2.気鋭の放送作家が描くもてなしのシナリオは、赤羽でワインという非日常
『Nomka』
「赤羽にして、中華バル的なメニューとナチュラルワインが豊富というサプライズ感。一筋縄ではいかない皿ばかり!」
小山薫堂さんの一番弟子で、ヒット番組を手掛ける放送作家の塩沢 航さん。
師匠譲りのグルメ作家として知られ、多忙の中でも後輩を食事に連れ出すなど食へのこだわりは強く、厳しい。そんな塩沢さんが、10年以上通い続ける店が赤羽にある。
「繁華街とは逆のエリアで、立体駐車場の地下の『ループ館』という場所に店がある立地のマニアックさ。
気の利いたメニューが豊富にそろう、意外性に次ぐ意外性。そしてなぜこのレシピに至るのかと想像を巡らせるサプライズ感。訪れるたび新しい皿に出逢えます」
店主の五十嵐祐二さんは日暮里で香港料理店を営んでいたが、赤羽に移転し、ワインを楽しみながら料理をつまめる店としてリスタート。
ワインはナチュラル・クラシック両方を扱い、味わいが優しいものをセレクト。合わせる料理は発酵やフルーツを取り入れた、香りや旨みをじっくりと味わえるひと皿が充実する。
全員が注文する前菜盛り合わせ
「おつまみ盛り合わせ」(1名分¥1,380)でボトルワイン1本が空いてしまうほど。
「香港人が思い描いた洋食」をイメージした「タコと野菜のマカオ風ドリア」(¥2,380)は、ココナッツソースに無糖の練乳や豆板醤を加えサフランで香り付け。
ジューシーで生き生きとしたオーストリアの白と。
「マンゴーソースのエビマヨ」(¥2,200)は、「外せない逸品」と塩沢さんイチオシ。
果物のアロマが香るドライな白が寄り添う。
「いつも散々悩んだ挙げ句ひと通りオーダーする羽目に」と塩沢さん。
中華なのに食後感が軽く、でも物足りなくない絶妙な塩梅で、ワインもテンポよく進む。想定外の場所にある美食は、訪れる人に驚きと感動を与えるのだ。
■店舗概要
店名:Nomka
住所:北区赤羽西1-7-1 ループ館 地下飲食店街
TEL:03-5948-4233
営業時間:18:00~LO21:30(日祝18:00~LO21:00)
定休日:不定休
席数:カウンター6席
※利用は1組3名まで
※支払いは現金のみ
この世代のイケオジ代表!
1966年生まれ。広告キャンペーン、パッケージ、キャラクターデザインなど幅広い分野で活躍。広告界きっての美味しいもの好きで、飲食店のロゴも多く手掛ける。
3.この焼き鳥に潜む意外性。デザインの寵児が推す新名店は伊達じゃない
『酉囃子』
「神楽坂の頃から通っています。炭だけでなく薪も使っていて、お料理すべてが絶品なんです」
今年2月にオープンするやいなや、話題店となった麻布十番『酉囃子(とりばやし)』。神楽坂で人気を博した『焼鳥 茜』が店名も刷新して移転、パワーアップした新店だ。
店主の林 裕太さんは「これまでの経験をベースに、吟味した素材に新たなアイデアをかけ合わせた、ここにしかない焼き鳥を召し上がってほしい」と意気軒昂。
神楽坂時代から定期的に通っているという秋山具義さんは「緻密な仕事から生まれる串は、味はもちろんビジュアルも見事だし、ワインのセレクトも素晴らしい!」と、林さんの味と技、そしてソムリエールである奥様・茜さんのおもてなしにすっかり惚れ込み、『酉囃子』のロゴデザインも手掛けたほどだ。
「林さんの焼き鳥は柑橘や大葉といった香りの要素が忍ばせてあるなど、クリエイティビティに満ちています。
コースの途中で意表を突いてくるさつま揚げも相変わらず絶品だし、お連れした人が驚いてくれるポイントがあるのがうれしいですね」
薪火で火を通したのち藁の香りで仕上げる「白レバー」。
骨を抜いて食べやすい「手羽先」。
皮と肉の間に柑橘の皮を射込んである手間のかけよう。爽やかな香りが時間差で口の中に広がる。
奥様の茜さんが鹿児島出身であることから生まれた、神楽坂時代からのスペシャリテ。
1本の串で、野菜のさつま揚げと、チーズ&クミンのさつま揚げを一度に楽しめる。料理はすべてコース(¥13,000)の一例。
◆
辣腕クリエイターも認める創意溢れる品々を目の前に、仲間同士で会話も弾むこと確実だ。
この世代のイケオジ代表!
1970年生まれ。世間とは一線を画した独自の感性で食を追求。ラジオ番組で素麺を販売している。こだわりの食技法を綴った『グルメ外道』(新潮社)が発売中。
4.多才な熟練タレントの一手は、有無を言わさずカラスミパスタで唸らせる
『ワイン食堂 MAREA』
「ここのパスタは唯一無二。他の料理の付け合わせにも仕事が施され、ぬかりないな、と思わせてくれます」
これまでにない鋭いグルメ論を生み出すマキタスポーツさん。特に麺へのこだわりが強く「10分どん兵衛」という食べ方を提唱し、日清食品に評価された逸話を持つ。
そんな猛者をして「ここのパスタは唯一無二」と唸らせているのが中野富士見町にある“MAREA”のカラスミパスタだ。
現在使う麺は『浅草開化楼』の製麺師・不死鳥カラス氏とサローネグループの樋口敬洋シェフが開発したカラヒグ麺というパスタ生麺。
「極限まで加水を減らすことで、小麦の旨みが引き出され、乾麺でも生麺でもないプリプリの食感が楽しめます」とオーナーシェフの半田雄大さんは言う。
その麺を贅沢にもカラスミ、ミモレットチーズ、卵黄を合わせてカルボナーラ仕立てに。とろけるコクのあるソースにカラスミの塩気が絡んだ、ワインの進む味。
実はこちら現在はメニューにない裏メニューで、6年来の常連というマキタスポーツさんの、仲間に対するサプライズなひと皿でもある。

イタリアのナチュラルワインが中心。ボトル40種類は¥5,000均一、グラス8種類も¥900均一と破格。マキタスポーツさんが必ず注文する花のアロマが華やかな「アントヌッティ フリウラーノ2022」(左)
遊び慣れた大人には新鮮に映る立地も相まって、レストランは「心の潤い」と語るマキタスポーツさんらしい、食の個性が隠された一軒だ。
■店舗概要
店名:ワイン食堂 MAREA
住所:杉並区和田1-17-17 新村ビル 1F
TEL:03-6304-8127
営業時間:18:00~LO20:30(土日 12:00~LO13:30/17:30~LO20:30)
定休日:月曜
席数:テーブル18席、半個室1(6席)
この世代のイケオジ代表!
1968年生まれ。博報堂入社後、クリエイティブエージェンシー博報堂ケトルを設立。下北沢『本屋B&B』運営やラジオ出演、著書執筆などで活躍。ワインに造詣が深い。
5.含蓄に富む店主と心地いい音。名クリエイターの提案は大人好みのゆるやかな時間
『ボーゼスプリ』
「ジャス、ボサノバ、ロックや歌謡曲が響く、店主のセンスが光る空間で仲間と雑談するのが好きです」
ガラス扉を開けると出迎えてくれるのは、“アルテック”の古いスピーカーから流れる大音量の音楽。
純白のカウンターと壁には本やギターが並び、キャップにスウェット姿でワインを注ぐのが、店主の有馬 基さんだ。早くも彼の趣味部屋を訪れたような気分に。
「『ボーゼスプリ』に仕事仲間を連れて雑談する時間が好き」と話すのは、クリエイターの嶋 浩一郎さん。
「音楽と本とワインという、有馬さんが大好きなものが溢れた空間が唯一無二で、誰を連れていっても喜んでくれる。その日の気分でジャンルレスに曲が流れます」
有馬さんは長年ワインの輸入業を生業に、欧州各国を飛び回っていた。そのためワインの説明はプロフェッショナル。
「有馬さんが付き合ってきたフランスのワインの生産者や、東京のキラ星のごとくのシェフの皆さんにまつわるお話が面白い」
小難しいワインの蘊蓄はさておき「これ美味しいから飲んでみて!」と友達に注ぐようなフランクさとチャーミングな人柄に誰もが魅了される。
浅草で香るフランスのエスプリは、経験値高き大人にこそ刺さるのだ。
■店舗概要
店名:ボーゼスプリ
住所:台東区駒形2-6-4 丸山ビル 1F
TEL:03-6231-7110
営業時間:【月・水~金】17:00~(L.O.22:30)
【土】17:00~24:00
【日】15:00~22:00
定休日:火曜、不定休
席数:カウンター8席
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