2022.12.08
私にふさわしいオトコ Vol.15『20代のうちに結婚したほうがいい』
一昔前の価値観と言われようとも、そう考える女性も少なくはない。
そんな焦りにとりつかれ、30歳目前でスピード婚をした広告デザイナー・穂波。
しかし穂波は、すぐに後悔することになる。
「なんで私、焦ってプロポーズをうけてしまったんだろう」
私にふさわしい男は、この人じゃなかった――。
「私にふさわしいオトコ」一挙に全話おさらい!
第1話:スピード婚は後悔のはじまり…?30までの結婚を焦った女が落ちた罠
一樹が微笑んで、胸ポケットから小さな紺色の箱を取り出す。静かに開かれた箱の中には、煌びやかなハリー・ウィンストンの指輪が鎮座していた。
まばゆい輝きに、思わず涙が出てくる。これまでの人生で感じたことのない、その場にへたり込みそうなほどの強い安堵がこみあげてきた。
― これで30歳になる前に結婚できるわ!
「はは。穂波、泣いている」
「だって、あまりに嬉しくて…」
出会って3ヶ月。狙い通りのスピードゴールインだ。
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第2話:「なんか、冷たい?」両家顔合わせで、婚約者の両親が塩対応。その理由とは?
今日は、両家顔合わせ。会場に選んだのは、目黒雅叙園だ。ロビーには、同じく今日顔合わせをすると思われる振袖姿の女性が、ほかにも数人いた。
― 私が、圧倒的に目立ってるな。
穂波はひとり、得意げな表情を浮かべる。深紅の振袖に、古風なヘアスタイル、輝く白肌。完璧だ。
― きっと一樹のご両親は驚くわね。
息子がこんな綺麗な女を連れてきたら、一樹の両親はさぞ喜ぶに違いない。考えるだけで、気分が高揚した。
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第3話:「これってさ…」新婚生活4日目の夜。夫が食卓に並んだ料理を見て放った、衝撃的な一言
― 一樹、ご飯を待ってくれているのに。
金銭的な負担はすべて一樹が負う代わりに、家事全般は穂波の担当。そう決めたばかりなのだ。申し訳ない気持ちで家に着くと、時刻は21時半。
一度はキッチンに立ったものの、料理をする気力がない。そこで、冷凍庫にストックしていたパスタとスープを温めて食卓に出した。
「いただきます」
「いただきます」
2人で手を合わせ、数口パスタを頬張ったそのとき、一樹が不意に切り出した。
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第4話:結婚してまだ1ヶ月なのに…。退屈を持て余した新妻が、男友達と飲みに行って感じたこと
「この秋岡って人、私の知り合いかも」
登壇予定の3人のうち1人の名前に、見覚えがあった。秋岡颯斗。肩書には、広告事務所の社長をしていると書かれている。
「なんの知り合い?」
「大学時代の、学部の同期」
― でも、ほんとにあの秋岡颯斗かな?どうも、社長になるような感じには、思えないけど…。
疑いながらも客席で待っていると、本当に知り合いの秋岡颯斗が登壇してきた。
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第5話:男友達と2人きりで、深夜まで…。遅くに帰宅した女に、新婚の夫が見せた反応
「…なんか、ごめんね。今日はね、大学時代の友達にひさびさに会ったの。すごい偶然だから、急遽、ご飯行こうって流れになったのよ」
一樹は、軽く相槌を打ったきり、何も言わなかった。
― もしかして、さすがに怒ってる?
一樹があまりに無表情なので、颯斗と2人で会っていたことがばれているような気さえしてくる。居心地の悪さに耐えかねて踵を返したとき、一樹が口を開いた。
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第6話:夫への興味がなくなった女。「独身の頃みたいな自由な生活がしたい」と、正直に伝えたら…
「穂波の、理想の夫婦像を知りたい。どんな関係を望んでいるの?」
穂波は、ぼんやり黙り込む。入籍するまでは、結婚そのものが目的だった。結婚さえすれば、あとは幸せになれると思っていた。今考えると馬鹿みたいに楽観的だったと、穂波は反省する。
「そうね、強いて言うなら…」
遠慮がちに口を開いた穂波を、一樹は無言でじっと見ている。
「つまり、昨日も言ったけど…。一樹の人生を支えるっていうスタンスは、嫌なの。なんというか…お互いに、独身の頃と変わらないような自由な生活がしたい」
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第7話:「酔っちゃった…」カウンター席で、若手社長に肩を寄せた女。しかし男はまさかの反応で…
身勝手な欲に突き動かされた穂波は、ついに酔ったふりをして、颯斗のほうにぐっと体を近づけてみた。少しでも甘い雰囲気を演出すれば、颯斗は簡単に自分に落ちるだろうと見込む。
― だって、あのパッとしない佐奈なんかより、私の方が圧倒的に魅力的だもん。
しかし、颯斗は少し体をずらして、穂波の体をひょいと避けた。
― あれ…。
思っていたのと違う反応だ。にわかに信じられず、もう一度体を寄せてみる。すると、颯斗は顔を覗き込んで、こう言った。
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第8話:「結婚して豹変したよね」夫に“詐欺師”呼ばわりされた30歳女。女のまさかの言い分とは
「まるで、詐欺師だよ。前も言ったけど、結婚前と結婚後の穂波は別人だ。ついこの間までは、小料理屋みたいな完璧な料理を作って、マッサージをしてくれてたのに」
そんなの過去の話だと思いながら、穂波は口をとがらせる。
「なのに、いざ結婚したら豹変して、そのあげくやっぱり離婚したいだって?最悪だよ。一体どうするんだよ。親になんて言うの。会社には?」
一樹は、頭を抱えた。
「恥だよ。大恥。結婚報告をしてまだ3ヶ月ちょっとで、この有様?大人として恥ずかしい」
「ねえ、一樹。良いこと教えてあげる」
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第9話:結婚後に、運命の男を見つけた女。「離婚するから付き合おう」と自信満々に告白した結果…
佐奈は、颯斗に対してかなり淡白だった。2人が別れるまで秒読みだと、穂波は内心にんまりする。
「じゃあ、佐奈的には、もう別れたいってかんじ?」
「うーん。でも、ちょっと事情がね」
「事情?」
「なんていうか、颯斗ね、私のことをすっごく好きなの。だから、別れるのも大変で」
― なにそれ。
「身のほど知らず」と穂波は心の中でつぶやく。この冴えない子が、そんなセリフを言うなんて。そう思ったとき、見知らぬ高身長の男性が、近づいてきた。
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第10話:「誰か来てるの…?」夫婦喧嘩で家出していた妻が、1週間ぶりに帰宅。玄関で見知らぬヒールを見つけ…
「とりあえず…帰るか」
いつまでもホテルにいるわけにもいかない。観念した穂波は、荷物をスーツケースに入れ、麻布十番のマンションへと戻った。
「ただいまー」
1週間ぶりにドアを開けたその時、穂波は固まる。玄関に、自分のものではないヒールの靴がきれいに揃えられているではないか。
「え?なに?誰か、来てるの?」
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第11話:「ごめん、チャペルには1人で行ってくれる?」そう夫に告げた女は、式場見学の最中に別の男に電話して…
穂波はスマホを片手に、ホテルの階段の踊り場に立つ。背を丸めながら、浮かれた声で問いかけた。
「どうしたの、颯斗?」
颯斗と連絡を取るのは、パーティーの日に「離婚するから一緒になろう」と言ってしまって以来だ。
― あれは実質告白だったから…こうして電話をくれたってことは、告白の返事が聞けるのかな?
「もしかして、この前のことで…?」
甘い期待が、声に混じった。
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第12話:「彼女には、内緒ね」男にセカンド扱いされた女は、怒りのあまり…
― 私と寝たにもかかわらず、惚れないなんて、ホントどういうこと?
穂波にとって「手を出された」こと自体は、あまり問題ではなかった。なにより許しがたいのは、自分の美しい体を知っても、颯斗が落ちてくれないことだった。
バッグを持ち、髪を振り乱して廊下をズカズカと進む。颯斗は、玄関まで追ってきた。
「穂波…本当に、本当にごめん」
無視してパンプスに足を滑り込ませていると、彼は突然、意を決したように言った。
「あのさ…穂波!」
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第13話:離婚寸前の夫に内緒で外泊。翌朝、女のスマホを鳴らした意外な人物とは
― ということは、もしかして…颯斗と佐奈が別れたのって、あの忘れ物が原因?
佐奈は、ヘアゴムを見て颯斗の浮気を知り、本気で別れたいと思ったのかもしれない。「もしそうなら、かわいそうなことをしたわ」と同情したとき、颯斗から、追加のLINEが来た。
颯斗:で、話があるんだけど、今から電話できる?
― え。別れたって報告以外に、まだ用事があるっていうの?
颯斗はこの直後、電話越しにまさかのセリフを口にする―。
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第14話:略奪愛を実らせ、同棲をはじめた1週間後。彼の元カノが“ある物”を持って訪ねて来て…
麻布のマンションに到着すると、妙な緊張がこみあげてくる。
― なんて言おう。男といたことは、なんとか隠さないと。離婚するにしても、財産分与は手に入れたいし。
ドアを開けるとすぐそこに、一樹が真顔で立っていた。
「楽しかった?」
「え?」
「広告事務所の社長さんとのデート」
― は?なんでバレてるの?
第14話の続きはこちら
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