貴女みたいに Vol.12

何もかも真似られ、盗まれ、奪われる女の恐怖…「貴女みたいに」全話総集編

「だって、私たち、親友でしょう」

なんでも打ち明けられるはずの女友達が、突然豹変したら?
あなたのもの全てを奪われたら?

もしかして、最初からそれが目的だったとしたら…?

恋も仕事も順風満帆。充実した毎日を送っていた夏絵(33)と、同じ会社に入社した恵理(28)。

「大好きだから、あなたみたいになりたい」

姿形も、仕事も、恋人も、全てコピーされ、人生全てを乗っ取られる。

それは、女の日常に忍び寄る黒い影−

「貴女みたいに」一挙に全話おさらい!

第1話:女の地獄が始まる。キャリアウーマンとコンパニオンの歪んだ格差友情

「足、痛そうですけど、大丈夫?」

もやもやする光景にしびれを切らし、広岡夏絵(ひろおか・なつえ)はそう声をかけた。

すると、コスチュームに身を包んだイベントコンパニオンの笹野恵理はパッと顔を上げ、救いを求めるように夏絵の顔を見る。同時に、恵理の体に触れそうなほど接近していた男性客は、気まずそうにブースを去っていく。

エキシビションに企業ブースを出展して今日で3日目。夏絵はため息をつきながら、恵理にお詫びの言葉をかけた。

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第2話:「私も一緒にいいですか?」いじめられている新入社員をかばったら…断れないまさかの要望

自他共に認める“まじめすぎる”夏絵は、正義感が強く曲がったことが大嫌いだ。だから、どうしても過去の自分の行いを許すことができない。

―既婚者って知らなかったとはいえ、結果的に不倫だもんね…。

社長の大島遼一と出会ったのは、新卒で入社した商社だ。夏絵より8歳年上の大島は面倒見もよく頼りがいもあった。学生時代勉強漬けだった夏絵に、はじめて大人の世界を見せてくれたのが大島だ。

大島の仕事っぷり。スマートな遊び方。穏やかな性格…。夏絵はそのすべてに憧れ、思い焦がれていた。そして大島もそんな夏絵の健気な思いを受け止めて、2人は自然と恋に落ちることになったのだ。

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第3話:待ちに待った彼氏とのデートに、むりやり美人後輩が割り込んできて…放った衝撃の一言

「あーあ。私も、彼氏ほしいなあ。お二人って、本当に理想のカップルなんですよ」

―なんだか、恵理ちゃんと一緒にいると、感情が忙しい。

自分のペースに人を巻き込むことができる。そこが恵理の魅力で、自分もその虜になっている一人なのかもしれない。そんな風に自分のことを納得させようとした、そのときだった。

「恵理」

強面の見知らぬ男性が、テーブルの傍に立っている。夏絵と智樹には目もくれず、恵理のことを睨んでいた。

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第4話:「たった一回の過ちで…?」恋も仕事も順調なはずの女に下された、ありえない決定

「夏絵さん。ごめんなさい。智樹さんのこと恋人だなんて言って」
「ああ。うん…。しょうがないよ。そうでも言わないと、諦めないでしょ。元カレ」

スマホの時計を見ると、午前4時前だ。頭痛も酷いが、眠り直すにも起きるにも中途半端な時間で、思考もうまく回らない。

「これからも、しばらく智樹さんに彼氏のふりしてもらっていいですか?」

もう、この状況でどう返事をすれば良いのかもわからない。夏絵は「もう一眠りするね」と告げ、布団を頭からかぶった。

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第5話:突然鳴ったインターホン。ドアの前に立っていたのは…恋人との時間をブチ壊すまさかの人物

夏絵は想像するだけで胸が踊った。きっと笑顔が絶えない家庭が築ける。智樹は間違いなく優しくて子煩悩な父親になるだろう。そんな風に想像してしまうのは気が早いのかもしれないが、でも、33歳の夏絵は悠長なことも言っていられない年齢だ。

―子育てのために、少しキャリアから離れることになるかな。

それはそれで、受け入れよう。そんな覚悟すらたやすくしてしまうほどに、智樹との日々は幸せなことばかり。そんな智樹が、夏絵の前ではじめて顔を曇らせる。

「彼氏のふりをして、デートをしてほしいって言われたんだ。恵理さんに」

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第6話:「過去の過ちは、結婚前に精算しなきゃ」婚約中の女を追い詰める、最悪のメールとは

―これじゃ、結果、怪文書通りって言われてもしかたないよ…。

恵理が大島に対して“特別な接待”をしているのか、純粋に恋愛に発展したのか、夏絵には知るよしもない。ただ、どちらにせよ不倫関係だ。

一度は自分も足を取られかけたからこそ、目撃者としてでも関わりたくない。そう強く感じた夏絵は、隣人として状況を把握していたものの、会社でも家でも何も気づいていないフリをして過ごすことを決め込んでいた。

しかし、事件は予想外の形で起きる。

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第7話:「彼氏をシェアしましょう」ありえない願望を口にする女の、本当の気持ちとは

「夏絵さんは、素敵な人だから、許してくれるよね?大島社長にも社会的制裁が下るし、夏絵さん満足してくれたかな。あとは、智樹さんをシェアできれば…」

恵理は、シェアというアイディアにじわじわと喜びがこみ上げ、一人で笑い出す。

「うふふふ。我ながら良いアイディア。私はもっともっと夏絵さんとそっくりになって魅力的な女性になって、当然智樹さんにも愛されて…夏絵さんもそばにいて…ふふふ」

恵理は壁に耳を当て、隣室の気配を懸命に感じようとしている。記憶を頼りに、部屋のインテリアもそっくりにした。それを自分のSNSに投稿していたら、夏絵に青ざめた顔で詰め寄られたのだ。

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第8話:「会いに来なければよかったよ」婚約破棄寸前の恋人を失望させた、33歳女の辛すぎる状況

「夏絵さん。言いがかりはやめてください。まったく身に覚えはありません」

恵理は、いつになく厳しい表情を夏絵に向けた。もう、恵理の奇行には怯まない。そう心に決めていた夏絵は、「昨夜どうして実家まで訪ねて来たのか」と、出勤するなり恵理を問い詰めたのだった。

「笹野」という恵理の名字を名乗る来客に、夏絵は家族を通して居留守を使った。教えてもいない実家にアポもなく現れるのは恐ろしいし、気持ち悪い。一体どういうつもりなのかと、徹底的に詰め寄るつもりだった。

しかし、恵理の返事は意外なものだった。

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第9話:「はい、500万円。○○のために使って…」親から手渡された大金の、残酷すぎる使い道

夏絵の目の前に現れた恵理の姉、麻理は美しい人だった。年子の姉妹なので年齢は29歳。離婚しており、今は旧姓の笹野に戻しているのだという。

「すみません。笹野と聞けば妹しか浮かびませんよね」

麻理は、ため息を吐きながらそう言い、夏絵に向かって「本当に妹が申し訳ありませんでした」と、深々と頭を下げた。

恵理が夏絵に迷惑をかけている。そう聞いた麻理は、謝るためにコンタクトを取ろうと模索していた。

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第10話:「あなたと結婚できない」大好きな恋人との結婚話を中断した、崖っぷち女の真意とは

スマホを耳に当てたまま、今いるシティーホテル内のカフェの名前を告げると、夏絵は電話を切った。ぐったりと疲れて、ソファーに沈んだまま体がピクリとも動かない。

気を失いそうなめまいの中で、恵理が現れてから嵐のように過ぎていった日常が、走馬灯のように蘇る。あの笑顔も、涙も、すべてのたくらみも、夏絵の脳裏に焼き付いて、決して消え去ることはないだろう。

「夏絵さん」

背後から聞きなれた声で、名前を呼ばれる。恵理は、一息つくと、小さく覚悟を決めて振り向いた。そこにいた智樹のあまりにも意外な姿に、夏絵は絶句した。

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第11話:距離を置きたい女友達を「二度と会いたくない」と拒絶したら…。予想外の反応が

「恵理ちゃん」

体は沈んだままピクリとも動かない。それでも不思議と苦痛を感じず、ふわふわとした浮遊感すら感じていた。

意識が遠のいていく途中では、けたたましいサイレンの音と、「恵理、恵理」と泣き叫ぶ麻理の声がどこか遠くで聞こえていた。

そして今は、耳元で大好きな人の優しい声が響いている。手が温もりに包まれている。あの人が、私の手を握ってくれているのだ。

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