「だって、私たち、親友でしょう」
なんでも打ち明けられるはずの女友達が、突然豹変したら?
あなたのもの全てを奪われたら?
もしかして、最初からそれが目的だったとしたら…?
恋も仕事も順風満帆。充実した毎日を送っていた夏絵(33)と、同じ会社に入社した恵理(28)。
「大好きだから、あなたみたいになりたい」
姿形も、仕事も、恋人も、全てコピーされ、人生全てを乗っ取られる。
それは、女の日常に忍び寄る黒い影ー
「足、痛そうですけど、大丈夫?」
もやもやする光景にしびれを切らし、広岡夏絵(ひろおか・なつえ)はそう声をかけた。
すると、コスチュームに身を包んだイベントコンパニオンの笹野恵理はパッと顔を上げ、救いを求めるように夏絵の顔を見る。同時に、恵理の体に触れそうなほど接近していた男性客は、気まずそうにブースを去っていく。
エキシビションに企業ブースを出展して今日で3日目。夏絵はため息をつきながら、恵理にお詫びの言葉をかけた。
「笹野さん、ごめんなさい。もっと早く気付けば良かった。すみません、嫌な思いさせてしまって」
イベント系のベンチャーでマーケティングを手がける夏絵は、この冬やっと開催できることになったデジタルテクノロジーのエキシビションに、毎日顔を出している。
それは仕事のためでもあったし、こうした会場の秩序を乱す不安要素を排除する意味もあった。
だが、美人のイベコンに忍び寄る“敵”は、夏絵の目を盗んで現れるのだ。
夏絵は、逃げるように去った男性を目で牽制する。
その猛々しくもある夏絵の様子を見て、恵理も口を開いた。
「大丈夫です。わざわざ、気にかけてもらってごめんなさい。コンパニオンは場を華やかにするために呼んでいただいているので、こういうのも仕事のうちだと…」
申し訳なさそうに目を伏せる恵理を見て、夏絵は慌てふためいた。
「そんなことないですよ!セクハラなんてもってのほかです。嫌な思いをするようなことがあったら、全部企業側の責任なので、全部報告してくださいね。あの男性のことは本当にすみませんでした」
「いえ…。そんな…」
「それに笹野さん、本当に足も痛そうだったから。そのハイヒールで長時間立っているの辛いですよね?」
優しく声をかけた夏絵だったが、恵理の体が小さく震えているのに気づき、ハッとする。
―え?泣いてる?
この記事へのコメント
なんだかこのクールの小説は似たような(しかも暗くなるような)話ばかりですね
報道ガールのような爽やかなお話を希望します
何もかも真似して最終的に婚約者
奪おうとする展開かな?