恋心の本質は、エゴイズムだ。
それが片思いなら、尚更。恋をすると、独占欲や嫉妬心に身体中を蝕まれ、イノセントな感情なんてきっと1/3にも満たない−。
広告代理店でコピーライターをしている橋本杏(24歳)は、同期の沢口敦史(24歳)に淡い恋心を抱いている。
“友達以上”の態度をとる敦史に期待してしまう杏。しかし敦史が恋人に選んだのは…あろうことか、杏を最も傷つける相手だった。
2019年は、本当にありがとうございました。2019年ヒット小説総集編、「1/3のイノセンス 〜友達の恋人〜」一挙に全話おさらい!
第1話:“親友”のレッテルを貼られてしまった女の悲劇
−ねぇ。私のこと、好き?−
半歩先を歩く広い背中に。電車待ちのホームで見上げた横顔に。そっと心の中で問いかけたのは、一度や二度じゃない。
沢口敦史。
あなたにとって私は特別?それとも…。
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第2話:「今、私のこと避けた…?」友達以上の関係だった男が、急に冷たくなった理由
−敦史くんって、本当に面白いのね−
くすくすと、まるで鈴の音のように愛らしく笑う優香の声が、耳から離れない。
そしてそんな優香を見つめる、敦史の眼差しが目に焼き付いて消えない。2年以上もそばにいたはずの私が、見たこともないような表情だった。
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第3話:「俺と彼女、どう見える?」2年以上片想いしていた彼から言われた、残酷な一言
私のほうがずっと敦史を知っている。彼のことをわかっている。優香なんかより私のほうが、ずっとずっと敦史のことが好きなのに。
それなのに、どうして敦史は優香をデートに誘うの...。
考えれば考えるほど、震えるほどの後悔が襲ってくる。
どうしてあの時、優香を呼んでしまったのだろう。浅はかにも、敦史と優香を引きあわせてしまったのだろう。
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第4話:「こう言えば、この男は落ちる」。男は気づかない、清純ぶった女の戦略
「ねぇ…お願いだから、もうかけてこないで」
杏と敦史を店内に残し外に出た私は、声を潜め、しかし強い口調で電話の向こうに訴えた。
「一方的に別れるなんて、どうしたっていうんだ」
「とにかくもう一度会って話そう。優香、頼むよ。俺を困らせないでくれ」
俺を困らせないでくれ…?何を言っているのだろう、この男は。散々私を困らせ、振り回しているのは他ならぬあなただというのに。
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第5話:「危険な男だと知っていたのに...」道ならぬ恋に溺れる女が、理性を失った夜
「俺はさぁ、わざわざ休みの日に呼び出すこともないって言ったんだけど。優香がどうしても杏に報告したいって言うから…」
–え…?
不意に聞こえた敦史の言葉。その内容に、私は明らかな違和感を覚えた。私が優香に聞いていた話と食い違う。優香は私に「敦史が3人で食事したいって」と言っていた。モヤっとした感情が胸を覆い、優香に対する不信感が膨らむ。
しかし「なぜ」を繰り返す私の思考は、敦史の問いかけによって遮られた。
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第6話:「騙すつもりはなかったの…」彼氏に隠れて元カレからの電話を受けた女の、下手な言い訳
事件が起きてしまったのは、レストランでの食事を終え、地上へと戻る途中だった。
敦史が施設を見て行きたいと言って、彼の背中を追いかけながらショップやギャラリーを覗いて回っていたその時。私の手のひらで、スマホが光った。…入江だ。
「敦史、私ちょっと電話…」
慌てて声をかけ、怪訝な顔で振り返る敦史をその場に残したまま、逃げるように彼から離れる。急ぎ足でエレベーターホールの壁際までたどり着いてから、私は応答ボタンを押した。
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第7話:親友の彼氏から不意打ちのキス…!その瞬間、女が無意識にとった裏切りの行動とは
−バカみたい、私…。
結局、他の誰かで埋めようなんて無理なんだ。それなのに安易に健一の誘いに乗り、それで結局、敦史の話ばっかりして彼を傷つけた。独りよがりな自分が嫌になって、私はひとり頭を振る。するとその時、左手に持ったスマホが光るのが見えた。
“沢口敦史”
画面に浮かぶのは、思いがけない敦史の名前だった。
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第8話:「あなた、女として見られてないもの」。親友ポジションの女を嘲笑う、恋敵からの痛烈な一言
翌日。私が会社で終始ぼうっとしていたことは言うまでもない。打ち合わせへと向かうエレベーターの中。資料作成の途中で集中力が切れた時。
私は昨夜の残像をありありと思い出し、まるで乙女のように頬を赤らめる。しかしその直後「ごめん」と呟いた敦史が、私を再び落胆させるのだ。
−キスしたり、謝ったり。どういうつもりなのよ…。
そんな調子で浮いたり沈んだりを忙しく繰り返し、どうにか一日を終え、その日ラストの打ち合わせを終えてデスクへと戻ったとき。私を待っていたのは…あろうことか、最も会いたくない人物からの呼び出しだった。
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第9話:「私の本気、見て欲しいの…」既読スルーの彼と復縁を果たした、女のテクニック
…約束通り21時前に会社を出ているなら、もうそろそろ着いていてもおかしくない。
急な案件が入り、遅れているのだろうか。でもそれなら連絡をくれたっていいはずだ。
会社近くを避け、わざわざ自宅の最寄駅、恵比寿で落ち合うことにしたのは、誰に目撃されるかわからない場所で会いたくないと思ったから。
今夜は、ただの同期として会うわけじゃない。今度こそ、今夜こそ、素直な気持ちを伝える。そう決めていた。
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第10話:「今…別の女のこと考えてた?」ベッドで彼女に尋ねられた男が、犯してしまったミス
担当クライアントの商品撮影に立ち会った帰り道。恵比寿駅前で偶然見かけたシルエットに、僕は迷うことなく声をかけた。
後ろ姿でもすぐにわかる。長い髪をクリップで束ね、背筋を伸ばし凛と佇む、あの立ち姿は杏に違いない。
しかし…彼女が僕を振り返った瞬間。僕は思わずたじろいだ。杏の目に、涙が浮かんでいたからだ。
「健一…」
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第11話:親友の彼氏と2人きりの夜。惹かれ合う男女の、バレてはいけない秘密の会話
優香から「杏とゆっくり会いたい」と誘われたが、午後はお互いに予定があり(私はヘアサロン、優香はネイル)、それなら久しぶりに代官山の『IVY PLACE』でブランチをしようということになった。
「聞いたよ、杏!健一さんと付き合うことにしたんでしょ?」
席に着くなり、優香は待ちきれないといった様子で私を覗き込む。驚いて目を丸くすると同時に、私は「ああ、このために呼び出したのか」と即座に理解した。
「え、どうして…」
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第12話:「キスされても、何も感じない…」優しい彼に抱かれながら、違う男を想う女の後悔
「何してるの?」
突如聞こえた低い声は、私を反射的に動かした。私はまるで何かに打たれたように飛び上がり、肩にかけられた敦史のシャツをさっと取り払う。そして逃げるように敦史のそばから離れた。
「ごめん、もう大丈夫」
シャツを手渡したとき、一瞬見えた敦史の顔は歪んでいた。
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第13話:“友達”ポジションに甘んじていた女が、親友に奪われた男を取り戻すまで
−ごめん。俺もう、優香とは付き合えない−
…ああ、イライラする。
自室のベッドで仰向けになり、私は感情を押さえ込むようにして両手で顔を覆った。
頭に浮かぶのは蓼科の別荘での夜のこと。そして、その帰り道…あれは本当に最悪だった。
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