1/3のイノセンス ~友達の恋人~ Vol.6

「騙すつもりはなかったの…」彼氏に隠れて元カレからの電話を受けた女の、下手な言い訳

特別だと思っていたのは、私だけだったの−?

広告代理店でコピーライターをしている橋本杏(24歳)は、同期の沢口敦史(24歳)に淡い恋心を抱いている。

“友達以上”の態度をとる敦史に期待してしまう杏。

しかし学生時代からの親友・優香と敦史を引き合わせてしまったことから関係が一変。

強がることしかできない杏をよそに付き合い始めた二人

だが優香はその裏で既婚者・入江との関係を清算しきれておらず、彼に誘われるままホテルで再会してしまうのだった。


優香:「私はただ…猶予が欲しかっただけ」


「へぇ。やっぱり美味いもんだな」

今年、代官山に誕生した新スポット KASHIYAMA DAIKANYAMA。その4階にあるフレンチレストラン『コトー』で、敦史が驚いたように目を見開いた。

「いや俺、フレンチとか全然よくわからないけど、でもここは美味いな」

…いけない。

飾り気のない感想を述べる敦史に、私も慌てて感謝を伝える。

「ね、本当美味しい。連れてきてくれてありがとう」

『コトー』は、紹介制でありながら予約困難で知られる神谷町のフレンチ『スガラボ』の須賀シェフが監修したことで話題の店。

敦史が職場の先輩に勧められたとかで、私を連れて行きたいと予約してくれたのだ。

それなのに、私はともすると意識を別の男に持っていかれそうになる。“あの夜”の残像が頭に蘇り、私の思考回路を奪うのだ。

その度に私は、胸を締め付けるそのイメージを振り払う。そして、まるで頭に入らない敦史の話に笑顔で相槌を打つ。

だが突如、敦史が思い出したかのように尋ねた質問は、私の顔から笑顔を消した。

「この間さ、杏と何話してたの?」
「え…?」

予想外の追及に、私はとっさに言葉を失ってしまう。

「杏に聞いたら、あいつ、優香に直接聞けって言うからさぁ」

…なぜ、適切な答えを用意しておかなかったのか。

浅はかな自分を悔やみながら、私は必死で頭を回転させた。

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