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1/3のイノセンス ~友達の恋人~ Vol.1

1/3のイノセンス 〜友達の恋人〜:“親友”のレッテルを貼られてしまった女の悲劇

現れた“彼女”


恵比寿のビアバー『101 TOKYO』。喧騒の中で、着信に気づいたのは偶然のことだった。

「お前もさぁ俺とばっか飲んでるけど、他にいい男いないのかよ」

酔いがまわり饒舌になった敦史が私をからかう。

「あのねぇ。私は敦史が誘ってくるから仕方なく付き合ってあげてるのよ」

憎まれ口に憎まれ口で返す私。口を尖らせじろりと睨んでみせるけれど、彼は楽しげに肩を揺らすだけだ。

「まったく、もう」と言いながら手持ち無沙汰にスマホを触る。ちょうどそのタイミングで、画面に“三浦優香”のLINEアカウントが表示されていたのだ。

「もしもし、優香?どうしたの?」

電話をよこしたのは、大学時代からの友人・優香。

都内の私立大学で出会い、絵に描いたような青春時代を共に過ごした親友だった。

卒業後、バリキャリ志向だった私は大手広告代理店に入社。優香は自身の父親が名の知れた弁護士であるツテもあり、4大ローファームの一つに秘書として採用された。

最近は生活サイクルの違いでなかなか会えなくなっていたから、こんな風に電話がかかってくるのは珍しい。

「杏、いまどこにいるの?」

どこか切羽詰まった様子の親友に、私は一応周囲に配慮をし、声を潜めて答える。

「同期と恵比寿で飲んでる。ほら、優香にも話したことあるでしょ、敦史と一緒にいるのよ」

優香と敦史に面識はない。しかし私は優香と一緒にいる時、“仲の良い同期”として頻繁に敦史の話題を出していた。それゆえ彼女はすぐに「ああ、敦史くん」と理解したようだ。

「ちょっと杏に話したいことがあったんだけど…大丈夫、また今度にする。お邪魔してごめんね」

優香はそう言って電話を切ろうとした。しかしいつもより明らかに低い声のトーンが心配になり、私の方から彼女を引き止めたのだ。

「優香、本当に大丈夫?」

敦史に「少し待ってて」と目配せをしてから、私は優香との会話に戻ろうとした。するとそれまでやり取りを黙って聞いていた敦史が、私にこんな提案をしたのだ。

「ここに呼んであげれば?女の子なら、俺はむしろ大歓迎」

この記事へのコメント

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No Name
急ぎで話したかった内容とかって、こう言うシチュエーションだと言いづらいことだろうに。なぜわざわざ呼ぶ?そしてなぜわざわざ来る?
2019/07/06 07:0599+Comment Icon4
No Name
せめて友達には仲のいい同期ってだけではなく、好きって言っておけば良かったね。
ま、言ってたとしても彼が友達を好きになっちゃう可能性はあるけど(笑)

今後の展開は彼と友達が付き合うんだろうけど、結末が予想出来ないから楽しみ!
2019/07/06 05:2899+Comment Icon5
No Name
タイトルが昭和 笑
東カレらしくなく純情な感情(笑)を貫いて、
マウンティング系の話にならないといいなー
2019/07/06 05:2361Comment Icon9
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1/3のイノセンス ~友達の恋人~

恋心の本質は、エゴイズムだ。

それが片思いなら、尚更。恋をすると、独占欲や嫉妬心に身体中を蝕まれ、イノセントな感情なんてきっと1/3にも満たない−。


広告代理店でコピーライターをしている橋本杏(24歳)は、同期の沢口敦史(24歳)に淡い恋心を抱いている。

“友達以上”の態度をとる敦史に期待してしまう杏。しかし敦史が恋人に選んだのは…あろうことか、杏を最も傷つける相手だった。

これはある男女が過ごしたひと夏の、切ないラブストーリー。

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