2019.07.06
1/3のイノセンス ~友達の恋人~ Vol.1「女の子なら大歓迎」などと調子のいいことを言ってはいたが、敦史の提案は正真正銘、親切心から出たものだと思う。
しかしそのおよそ30分後、淡いブルーのワンピース姿で、全身から清楚な風を漂わせた優香がふわり、と現れた時。
私はすぐさま二人を引き合わせたことを後悔したのだ。
「初めまして。優香ちゃん、だっけ?沢口敦史です」
それは“女の直感”というべき種類のもので、敦史がそう言って微笑んだことも、優香が「お噂はかねがね」などと言って笑ったのも、何ら不自然なものではなかった。
ただ私は最初から言いようのない不安に胸を圧迫され、どういうわけかずっと息が苦しくて、敦史の視線が優香の目に、肌に、胸元に注がれるたび、締め付けられるような痛みと戦わねばならなかった。
「二人は、よくこうして飲んでるんでしょ?」
喧騒に包まれた恵比寿のビアバーで、優香の存在はまるで一輪の花のようだ。
彼女もまた仕事帰りに立ち寄ったはずなのに、髪も肌もさらさらとしている。決して大声を出しているわけではないのに、まるで鈴の音のように、優香の声は喧騒の隙間をくぐり抜けてよく通った。
ああ、そういえば...と、今更ながら思い出す。もう昔のことで忘れてしまっていたが、大学時代のテニスサークルでも、彼女はいつもそうだった。
どちらかというと控えめで、自ら話題の中心になるようなことはなく、皆の輪の端の方で静かに佇んでいるだけ。とりたてて美人かと言われると、決してそういうわけでもないのだ。
それなのに男たちの視線は、いつだって優香に注がれた。
「いいなぁ…本当に仲が良いのね」
心から羨ましそうに、優香はそう言って小さく息をはいた。テーブルに肘をつき、両手をあごに当てて、敦史を上目で見遣る。
その仕草は、女の私さえもドキッとさせる色気があった。
「いや別に…ただ暇なんだよ、俺たちは。なぁ、杏?」
数回瞬きをして、優香から視線を逸らした敦史は、これまでに見せたことのない表情で私に同意を促した。
明らかに動揺している。
そんな敦史の反応に胸を締め付けられ、私は「うん」とも「違う」とも言えぬまま目の前の二人を呆然と見つめるのだった。
そして次の瞬間、両手で口元を押さえてクスクスと笑っていた優香が、ハッと思いついたように視線を上げる。
「あ!ねぇ、もしかして杏…沢口くんと?」
大きな瞳をさらに大きくして、私と敦史を交互に見遣る優香。
すると私が言葉を発するよりも早く、敦史が即座にこう言ったのだ。
「違うよ。俺と杏は“親友”だから」
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敦史から“親友”のレッテルを貼られた杏。そして恐れていたことが現実となる。
ま、言ってたとしても彼が友達を好きになっちゃう可能性はあるけど(笑)
今後の展開は彼と友達が付き合うんだろうけど、結末が予想出来ないから楽しみ!
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