ー総合商社に入れば、人生、一生安泰で勝ち組。ー
東京において、商社マンというのは一見、社会的ステータスの高い、万能なカードに見える。
しかし、果たしてそれは事実なのか?
商社という舞台には、外部からは計り知れない様々な人間模様があり、出世レースに関する嫉妬と憎悪に満ちた縦社会のプライド合戦も繰り広げられている。
早稲田大学商学部卒業後、大手総合商社に入社した優作。彼の商社マン人生は、薔薇色なのか、それとも?
「初めまして、優作です。」
「初めまして、賢治です。明大でアフトやってました!可愛い子が好きです」
先輩が主催するCAとの飲み会で、俺のあっさりとした挨拶の後にむさ苦しい同期・賢治の挨拶が続き、思わず笑ってしまった。商社マンと聞いて目を輝かせているCAの前でこの挨拶ができるのはさすが賢治だ。
挨拶が終わり、隣に座っているクミが早速甘い声で聞いてくる。
「優作さんは、どこの部署なんですか?」
顔は68点位、でも脚は綺麗。部署名を聞いて来るあたり、相当商社マンと飲み会をしているな...
「あぁ、エネルギーだよ。」
「えー凄い!エネルギーって、一番花形って呼ばれる部署ですよね!?」
エネルギーは出世コースと呼ばれているくらい、会社の中では花形の部署だ。エネルギー配属≒エリート街道、という法則が成り立っている。
「俺はね、食料の部署だよ!クミちゃんはどこの国に飛んでるの?」
隣で賢治が一生懸命話しかけているが、大した興味も持たれていないようだった。同期の中でも特に仲が良い賢治は同じ24歳なのに既に35歳のような風格をしている。しかし良いヤツで、皆から好かれている。
「優作さんは、普段どんな所でお食事されているんですか?よければ一緒に行きたいなぁ〜」
本当に女性の商社好きには驚く。昔からモテない方ではなかったが、商社マンになった途端に食事会の誘いは激増、今のところ100戦100勝かも?
商社マンというカードを手に入れ、ただのマリオが無敵のスーパーマリオになった気分だ。
多分このままクミは連れて帰れるな。でも会社の寮は壁も薄いし一応女子禁制だ。仕事も楽しいしモテるし最高だけど、寮住まいで、恵比寿や表参道から遠いのが難点だ。
「おい、優作飲んでるか?お前若いんだから飲めよ。」
先輩からの一言で我に帰る。うちの会社はかなりの縦社会だ。
先輩の命令は絶対。無駄に体育会系が多い。どちらかと言うと文化系だった俺には結構ハードだが、慌ててビールを飲み干し、笑顔で先輩のご機嫌取りに回る。
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