1/3のイノセンス ~友達の恋人~ Vol.10

「今…別の女のこと考えてた?」ベッドで彼女に尋ねられた男が、犯してしまったミス

特別だと思っていたのは、私だけだったの−?

広告代理店でコピーライターをしている橋本杏(24歳)は、同期の沢口敦史(24歳)に淡い恋心を抱いている。

しかし敦史はあろうことか、杏の学生時代からの親友・優香と付き合ってしまう

だが優香は敦史と付き合いながらも既婚者・入江との関係を清算できておらず、そのことが敦史にバレる

一方、杏は同期の健一とデートに出かけるが、まったく身が入らない。さらにはその日の夜、敦史が家までやってきて、あろうことかキスされてしまい動揺。

その翌日、優香に挑発された杏は、覚悟を決めて敦史を呼び出すが、彼は約束の場所に現れなかった


健一:「俺に、チャンスをくれないか」


「橋本?」

担当クライアントの商品撮影に立ち会った帰り道。

恵比寿駅前で偶然見かけたシルエットに、僕は迷うことなく声をかけた。

後ろ姿でもすぐにわかる。長い髪をクリップで束ね、背筋を伸ばし凛と佇む、あの立ち姿は杏に違いない。

しかし…彼女が僕を振り返った瞬間。僕は思わずたじろいだ。

杏の目に、涙が浮かんでいたからだ。

「健一…」

僕を認めると、杏は慌てた様子でいったん、後ろを向いた。涙を拭っているのだろう。そして再びこちらを向き直ったとき、杏は引きつった笑みを浮かべていた。

「敦史が…会う約束してたのにいくら待っても来なくてね。私ずっと待ってたのに…連絡もなくて。そしたら敦史、優香と一緒にいて…」

動揺しているのだろう。僕に“優香”が何者なのかきちんと説明することもなく、彼女は早口で続けた。

「ほんと、バカみたい私…」

乾いた声で呟いて、彼女は僕に笑って見せた。

精一杯の強がりを見せる杏。そんな彼女が居た堪れなくて、僕は思わず杏の腕を掴んでいた。

「…敦史のことなんか、もう忘れろよ」

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