女にとって、人生で最も幸せなときと言っても過言ではない、“プロポーズから結婚まで”の日々。
そんな最高潮のときに婚約者から「別れ」を切り出された女がいる。
澤村麻友、29歳。
夫婦の離婚とも、恋人同士の別れとも違う、「婚約解消」という悲劇。
書類の手続きもない関係なのに、家族を巻き込み、仕事を失い、その代償はあまりにも大きかった。
ーさっさと忘れて先に進む?それとも、とことん相手を懲らしめる?
絶望のどん底で、果たして麻友はどちらの選択をするのか?
「婚約破棄」一挙に全話おさらい!
第1話:「4ヶ月の間に、彼に何が…?」突然行方をくらました男が、女に送ったメッセージ
「また、あの日の夢…」
麻友はまだぼんやりとした頭で、夢の余韻に浸っていた。
寝る前に、機内での乾燥をふせぐためのマスクに、ローズのアロマオイルを1滴落としていた。バラの香りに包まれると、プロポーズの日の夢を見る。それは麻友にとって“幸せのジンクス”だ。
夢の続きを見ようと、再び麻友は目を閉じた。もうすぐ、4ヶ月ぶりに良輔に会える。
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第2話:姿を消した婚約者が、ある日戻ってきた…。女が男から受けた、非情な仕打ちとは
これまでずっとうまくやってきたと思う。別れ話はおろか、大きなケンカすらしたことがない。半年前のプロポーズも、4ヶ月前に旅立つときも、お互いの愛を確かめ合ったのに。
気の迷いか、あるいは泥酔していたのかもしれない。それとも質の悪い冗談だろうか。何かの間違いだと思いたいが、どちらにせよ本人と話さなければ始まらない。
ーでも、仕事も休んでるみたいだし、家にもいないし、どうすればいいの…。
とにかく、家でじっとしていても状況は変わらない。気が滅入るだけだ。麻友はカナダで買ったお土産を無造作に手に取り、家を後にした。
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第3話:「婚約破棄された原因、あなたにあるのでは?」無礼な男の一言に、人前で涙を流してしまった女
「婚約破棄!?嘘でしょ?どういうこと?!」
麻友の話を聞いて、美菜子は目を丸くして身を乗り出した。麻友はただ静かに頷き、美菜子もようやく周りを気にして声をひそめる。
「良輔からそんなこと言い出すなんて信じられない。だって、向こうがベタ惚れだったじゃない。理由は?なんて言われたの?」
「それが…聞いてないの。もう決まったことなら、聞いても仕方ないかなって…」
「だから麻友、そういうところだって」
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第4話:「昨夜、私の身に一体何が…?」酔って記憶を無くした女の部屋に残されていた、男の忘れ物
―私、どうやって帰ってきたんだろう…。
ジャケットとストッキングは脱ぎ捨ててあるものの、ブラウスとスカートは履いたままだ。とにかく水でも飲もうと立ち上がった瞬間、何か見覚えのないものがが床に落ちていると気づく。
…ハンカチ?
麻友はしゃがみ込んで恐る恐る拾い上げる。明らかに自分の物ではない。それどころか、男性物だ。
「…え?どうして?なんでこんなものがうちにあるの?」
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第5話:「彼、他に女がいたの…?」男のためにキャリアを捨てた結果、フリーターになってしまった女の悲劇
「誠司さん、いいんですか?お酒飲んじゃって。彼女さんのこと送れないじゃないですか」
麻友は慌てて「彼女じゃありませんから!それにもともと電車で帰るつもりだったので、大丈夫です!」と言い切った。
麻友の急に殺気だった様子に驚いたのか、店員はそそくさとその場を去る。さすがに吉岡も押し黙ると、コロナの瓶を手に乾杯しようという仕草を見せた。
「その前に、吉岡さん。昨夜のことですが…」
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第6話:「彼を奪った相手って、あなただったの?」男に捨てられた女が目撃した、信じられない光景
「愛は、どう思う?」
仕事の昼休み。社員食堂で、麻友は三原愛と一緒にランチを取っていた。
「麻友さん、私にもしかして恋愛相談してます?信じられない。こんな日が来るなんて」
愛がすっとんきょうな声を上げ、目を輝かせた。
「もう、なに嬉しそうにしてるのよ。こっちは不幸のどん底だっていうのに」
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第7話:「あなたみたいになりたい」過激な憧れの末、何でもマネをし“人の男”にまで手を出した女
時間が止まるというのは、まさにこういうことを言うのだろう。
爆音で流れているはずのダンスミュージックがピタリと止み、色とりどりのライトもまるで目に映らなくなった。
ごった返しているはずの人々も、まるでストップモーションのように動かない。
闇の中にぼんやりと浮かび上がる真っ赤なソファーには、良輔と愛が絡み合うように座り、麻友はその光景をただ茫然と見つめていた。
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第8話:「なんてみっともない男…」。女が一瞬で冷めた、男が家族の前で晒した醜態とは
「お父さん、お母さん。お願いです。頭を上げてください」
良輔の両親が、麻友の実家のリビングルームで、頭を床に擦り付けて謝罪している。
―二人は何も悪くないのに…。ご両親にこんなことまでさせるなんて…。
麻友は良輔の母親の肩を抱き、顔を上げるように促した。今日ついに、弁護士・吉岡立会いのもと、両家の話し合いの場が設けられたのだ。
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第9話:「俺、焦ってるみたいだな…」。彼から誘われている最中に、他の男のことを思い浮かべていた女
「澤村に聞きたいことが3つある」
麻友は、職場の上司・笠井修平と、日本橋の『レストラン サカキ』でディナーをしていた。
以前の約束では「すべてが片付いたら食事に行こう」ということだったが、どうやら長期戦になりそうなのでこのタイミングで話が進んだのだ。
グラスシャンパンで乾杯するやいなや、笠井から切り出す。
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第10話:「恋人を奪っただけでなく、仕事まで奪うの?」社内で出回った、怪文書の犯人とは
笠井と食事に行った晩、「麻友さんと話がしたいです」と何度もLINEを送ってきたが、返事をする気にはなれずにいた。
慰謝料を請求されるのが怖くて、弁明したいという魂胆が見え見えで、さすがに付き合いきれない。
だが、彼女が退職するまでは、お互い平然を装って同じ職場で働き続けるのだ。何かあれば向こうからアクションを起こしてくるだろうとは思っていた。
しかしそのアクションこそが、新たな恐怖の始まりだったのだ。開き直った愛が取った行動は、想像を絶するものだった。
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第11話:「彼への未練がないからできる」。婚約者に裏切られた29歳女が見せた、意外な行動
婚約破棄になったことを報告して以来、久しぶりに親友の美菜子と会った。美菜子は、前回はここ『バル ポルティージョ デサルイアモール』で、白ワインを飲みながら麻友の代わりに涙を流してくれた。
「今日は美菜子に良い報告ができるわ」
「え?もしかして良輔と復縁?」
「まさか!冗談じゃない。あんな最低の男、こっちから願い下げよ」
復縁という響きが自分にとってまったく“良い報告”ではない。美菜子に言われることでそのことを自覚した麻友の心は晴れやかだった。
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第12話:「彼女のことを懲らしめないと・・・」男を略奪された女が、思わず取った行動とは
「三原、飲みすぎだぞ。お世話になった先輩に変な絡み方するな。立つ鳥跡を濁さずって言うだろう」
愛が「笠井さん、ひどーい」と露骨に甘えた態度を取り始めたのでまずいと思ったのか、笠井はその場をしきるとお開きの挨拶をした。
時間も時間、その場の同僚達もうんざりしていたので、そそくさと帰る準備を始める。愛は「もう一軒行こう」などと一人で盛り上がっているが、周りの反応は冷たいものだった。
しかし、問題が起きたのはこの後だ。麻友が心底うんざりしながら店を出ると、そこには目を疑う光景があった。
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第13話:「俺ともう一度だけ…」。女を裏切り慰謝料まで請求された男が、再び姿を現したワケ
翌日、出勤してバックヤードで事務仕事をしていると、同僚が「澤村さん、お客様がお呼びです」と声を掛けてきた。
「ありがとうございます。どちら様でしょうか」
「日本橋松川の方が、ご挨拶がてらお会いしたいと…」
松川のご両親だろうか。それとも、広報担当が本当に挨拶に来たのかもしれないし、まさか良輔ではないだろう。麻友は椅子の背もたれに掛けていた上着を手に取り、バックヤードを後にした。
「澤村さん」
声を掛けられて振り返ると、そこにいたのは紛れもなく、良輔だった。
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