婚約破棄 Vol.7

「あなたみたいになりたい」過激な憧れの末、何でもマネをし“人の男”にまで手を出した女

女にとって、人生で最も幸せなときと言っても過言ではない、“プロポーズから結婚まで”の日々。

そんな最高潮のときに婚約者から「別れ」を切り出された女がいる。

―この婚約は、なかったことにしたい。全部白紙に戻そう。


澤村麻友、29歳。

夫婦の離婚とも、恋人同士の別れとも違う、「婚約解消」という悲劇。

書類の手続きもない関係なのに、家族を巻き込み、仕事を失い、その代償はあまりにも大きかった。

ーさっさと忘れて先に進む?それとも、とことん相手を懲らしめる?

絶望のどん底で、果たして麻友はどちらの選択をするのか?


元婚約者の良輔に、きちんと謝罪を求めようと、お互いの両親を交えて正式な場を設ける決意をした麻友。

最後に二人で話すために、麻友は週末に必ず良輔が出没するというクラブで待ち伏せし、弁護士の吉岡と共にVIPルームに乗り込む。

すると、良輔の浮気相手はなんと三原愛。麻友が最もかわいがっている後輩だった…。


時間が止まるというのは、まさにこういうことを言うのだろう。

爆音で流れているはずのダンスミュージックがピタリと止み、色とりどりのライトもまるで目に映らなくなった。

ごった返しているはずの人々も、まるでストップモーションのように動かない。

闇の中にぼんやりと浮かび上がる真っ赤なソファーには、良輔と愛が絡み合うように座り、麻友はその光景をただ茫然と見つめていた。

どれくらいそうしていただろうか。数分?いや、数秒の出来事かもしれない。

遠のきそうな意識をなんとか保ちながら、麻友は毅然と振る舞おうとだけ決意した。

―良輔とはもう終わった。

復縁という淡い期待がなくなったということ。そのことだけははっきりとわかる。

良輔の「麻友、違うんだ」という悲痛なつぶやき。

愛の「何も違わないです。こういうことなんです!」という甲高い叫び。

吉岡の「もう行きましょう」という静かな声。

脳内に直接響く三人の声。麻友は小さく息を吐くと、隣にいる吉岡の顔を見上げた。

「わかりました。行きましょう」

「はい」

麻友が吉岡と連れ立ってその場を去ろうとすると、悲痛な声で呼び止めたのは、良輔だった。

「なあ、待てって!」

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