女にとって、人生で最も幸せなときと言っても過言ではない、“プロポーズから結婚まで”の日々。
そんな最高潮のときに婚約者から「別れ」を切り出された女がいる。
―この婚約は、なかったことにしたい。全部白紙に戻そう。
澤村麻友、29歳。
夫婦の離婚とも、恋人同士の別れとも違う、「婚約解消」という悲劇。
書類の手続きもない関係なのに、家族を巻き込み、仕事を失い、その代償はあまりにも大きかった。
ーさっさと忘れて先に進む?それとも、とことん相手を懲らしめる?
絶望のどん底で、果たして麻友はどちらの選択をするのか?
良輔に結納返しとして渡していた封筒を、手つかずのまま返された麻友。婚約破棄は決定的なのだと、ようやく気付いた。
―麻友のそういうところが違うんだよ。
良輔に言い放たれた言葉を、麻友は理解することができなかった。
「長旅の前に写真を整理してはいけない」
そんなジンクスを持ち出したのは良輔の方だった。麻友はカナダに出発する前、帰国後の引越しや結婚式の準備に備えて、写真の整理も手掛けていた。
「縁起が悪いからダメ」
そう言って、麻友のことを良輔は止めた。
「どういう意味?ま......
またはアプリでコイン購入をすると読めます
この記事へのコメント