女にとって、人生で最も幸せなときと言っても過言ではない、“プロポーズから結婚まで”の日々。
そんな最高潮のときに婚約者から「別れ」を切り出された女がいる。
―この婚約は、なかったことにしたい。全部白紙に戻そう。
澤村麻友、29歳。
夫婦の離婚とも、恋人同士の別れとも違う、「婚約解消」という悲劇。
書類の手続きもない関係なのに、家族を巻き込み、仕事を失い、その代償はあまりにも大きかった。
ーさっさと忘れて先に進む?それとも、とことん相手を懲らしめる?
絶望のどん底で、果たして麻友はどちらの選択をするのか?
婚約破棄のショックで酔いつぶれた翌日、ついに事実を両親に告げた。どっと疲れた麻友に、因縁の男・吉岡誠司から電話がかかってくる。
昨晩、麻友の部屋に行ったと告げる吉岡だが、一体何があったのか思い出せない麻友はパニックに陥るのだった。
「吉岡さんは、どうして弁護士を目指そうと思ったんですか?」
助手席の麻友は、運転席の吉岡に半分背中を向けて、窓の外を見ながら聞いた。
結局家まで送ってもらうことはせず、近くでお茶をしようと麻友は提案したのだ。吉岡の行きつけの店まで車に乗ったものの、昨夜の話に触れるのが怖く......
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