報道ガールの恋愛事件簿 Vol.12

常に事件に追われる25歳女子。報道記者が恋をしたら…?「報道ガールの恋愛事件簿」全話総集編

—ありのままの自分を、好きな男に知られたくない。だってきっと、また引かれてしまうから…。

高杉えりか、25歳。テレビ局に新卒で入社し、花形部署で働いている…といった、表向きは華やかなキャリアを突き進む女。

しかしその実情は…。プライベートはほぼ皆無、男社会に揉まれ、明け方から深夜まで拘束される報道記者。しかも担当は、血なまぐさい事件ばかりだ。

だけど、恋愛も結婚もしたい。そんな普通の女の子としての人生も願う彼女は、幸せを手に入れられるのかー?

「報道ガールの恋愛事件簿」一挙に全話おさらい!

第1話:好きな男に職業を言えない…。一見華やかな25歳女が、素性を明かせない理由

「渋谷のラブホで見つかった遺体の女性、交際相手がトんでるって聞きました」
「若い女がラブホとか言うんじゃないよ、50のおっさん相手にさ」

男が息を吐くと、汗とタバコの匂いがゆらゆらと漂う。えりかは頬をふくらませ、上目遣いに男をわざとらしくにらみつけた。

「だって私、警視庁一課担当の記者ですから」

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第2話:早朝5時、「写真を撮ってこい」と命じられ…。女がタイムリミットに追われる理由

入社した最初の頃は、さすがに取材開始時間が早すぎるのではないかと思っていたが、犬の散歩をするためなどで早朝に外を歩く人は意外にもちらほらいる。

さらに朝の時間帯は、午前10時頃まで情報番組をオンエアしているので、取れた情報はどんどん反映できてしまう。裏を返せば、他局に情報を先行される、つまり「抜かれる」可能性が常にあるのだ。

えりかはデジカメとノート、ペンや名刺を入れた小さなバッグを持ち、ハイヤーから降りた。

先輩の情報を無駄にしないためにも、被害者の写真を何としても手に入れなくては。

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第3話:“女だから”というだけで、男たちの会に呼ばれて…。25歳の女がそこで知った衝撃的なコト

「今日さ、担当の警察官と飲み会あるんだけど、一緒に来てくれない?」
「担当って、生活安全部ですよね?」

生活安全部、通称「セイアン」は、薬物事件や風俗、違法賭博の一斉摘発などの事件を扱っている課だ。えりかたち刑事部の捜査一課とは別もので、本来えりかが行く義理は全くない。

「女の子来てくれると先方が喜ぶと思うんだよね。ねえ桑原、彼女借りていい?」

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第4話:「私、こんな格好でどうしよう…」。西麻布で男とデート中、25歳の女を襲った悲劇とは

「高杉よくやったよ、えらかった」

古びた事務イスに深く腰掛ける桑原は、嬉しげに言った。しかしえりかは、デスクに半ば突っ伏すようにぐったりと体を預け、はあ、と煮え切らない返事をする。

「なんだよ、特ダネ放送できて嬉しくないの?」
「いや、そうじゃないですけど…」

えりかは深いため息をつく。

「結局私がしたことって、女の武器を利用しただけなんですよ…」

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第5話:「俺より稼ぐんだね」男から卑屈なコトを言われ…。その後、女がカレシの部屋で抱いた違和感

「えりか?」

びくり、と足が止まった。その声に、懐かしさが込み上げると同時に、心が一気にざわつく。笑わなきゃ。そう思うが、頬が引きつってうまく笑えない。動揺に気付く様子もなく、ネイビーのスーツに身を包んだ男が、えりかの正面に回り込む。

「やっぱえりかだ。久しぶりだな」

快活な声色に、動悸が早くなる。

「慎二…」

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第6話:「こんな生活送ってる女と、付き合える男いないよ…」25歳の女が、恋人から全否定されたワケ

『ほんとごめん、今終わった、、、タクシー乗ってくから23時ちょい過ぎにはつく!』

その前に送っていたメッセージにも、やはり既読はついていない。もう一度インターフォンを押そうと指を伸ばした時、自動ドアが開いた。

こつ、こつ。ハイヒールの音が反響する。マスカラに縁どられた瞳が、えりかのほうを向いた。

ふわり。脳裏で何度も蘇ったあの甘い匂いが、今度はリアルに立ち込める。えりかは震える手でリュックからキーケースを取り出し、合鍵を差し込んだ。

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第7話:「私みたいな女と付き合える!?」食事中、男に迫った女。彼がすかさず返した答えとは…

「元カレほど器が小さくないにしても、普通の男性はやっぱ引くじゃないですか。24時間体制で事件追いかけてる女性記者なんて。それを再確認させられてしまい……」
「それで引くような男なんかと付き合っても面白くないっしょ。男が全員引くわけじゃないよ」

桑原は日本酒を舐め、「八海山、うま」と呟いた。その様子に、えりかは思わず身を乗り出す。

「じゃあ桑原さんは、私みたいな女性記者と付き合えますか?」
「付き合えるよ」

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第8話:デートに1時間遅刻し、“ありえない姿”で登場した女。彼女を見るなり、男が放った一言とは

―お前が見つけた、あの容疑者の祖父なんだけど。神崎アナにインタビューさせてやってくれない?

本郷キャップの電話を思い出し、苛立ちが蘇る。

警察官への取材で、えりかは、容疑者・相山一樹の親戚が住むおおよその場所を割り出した。そこから手当たり次第にインターフォンを鳴らして情報を辿り、相山の祖父の家をやっとの思いで探し当てたのだ。

祖父は、贖罪の意味を込めて取材に応じると言ってくれた。

しかし夕方のニュース番組は、その取材を神崎アナウンサーにやらせたいという。報道記者でも、所詮はサラリーマン。上司に指示されれば逆らえない、が…。

第8話の続きはこちら

第9話:これでもまだ、私を女として見てくれる…?デートの夜、素性を明かした女に男が取った行動

「創太さん。私、TQBテレビの報道記者なんです」

固く握った手のひらに、じわりと汗がにじむ。暑さのせいではない。ついに言ってしまった。

これまで食事会に参加しても、会社名を言うとその時点で“女”として見られなくなった。

キー局勤務というだけで男性陣の温度感が下がるのを肌で感じたし、「じゃああの女子アナ知ってる?紹介して!」とその場で言い出す男もいた。しかも、何人も。

さらに報道記者という肩書を明らかにすれば、そこからはもう、“お仕事説明会”の時間だ。

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第10話:「君の名前ググったら、動画がたくさん出てきた…」別れた男が、女を呼び出した本当の理由

えりかは店の前で、ごくりと生唾を飲んだ。

手入れの行き届いた木々が、美しくライトアップされている。Google Mapを2本の指で拡大するが、間違いない。3時間前、「今日ここね」とだけ添えられ、慎二から送られてきた住所。

『この前空港で置いて行ったお金、もらいすぎたから返したいんだけど会えない?』

今日の約束は、偶然再会した元カレの無遠慮な言葉に思わず叩きつけた5千円札のおつりを、なぜか今更返してもらう名目で呼び出されたのだが…。

第10話の続きはこちら

第11話:彼を受け入れる準備は出来ていたのに…。3回目のデートで女が男からされた、衝撃の告白

「…創太さんと付き合う人は、きっと幸せだろうな…」

ぽつりと呟いた言葉は、本心だった。創太が切れ長の瞳を、僅かに見開く。

「…えりかさん」

永遠にも感じられるような少しの間を置いて、創太はおもむろに口を開いた。まっすぐに向けられた視線が、交差する。

「えりかさんに、話があります」

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