報道ガールの恋愛事件簿 Vol.2

早朝5時、「写真を撮ってこい」と命じられ…。女がタイムリミットに追われる理由

—ありのままの自分を、好きな男に知られたくない。だってきっと、また引かれてしまうから…。

高杉えりか、25歳。テレビ局に新卒で入社し、花形部署で働いている…といった、表向きは華やかなキャリアを突き進む女。

しかしその実情は…。プライベートはほぼ皆無、男社会に揉まれ、明け方から深夜まで拘束される報道記者。しかも担当は、血なまぐさい事件ばかりだ。

だけど、恋愛も結婚もしたい。そんな普通の女の子としての人生も願う彼女は、幸せを手に入れられるのかー?

◆これまでのあらすじ

キー局で働く25歳の高杉えりかは、明け方から深夜まで休日返上で血なまぐさい事件ばかり取材する警視庁捜査一課担当の事件記者だ

タイプの男性・幸村創太と出会い恋の始まりを予感するが、仕事の過酷さに引かれるのが怖くて、職業を打ち明けられず…。


創太と知り合ってから、4日が経った。

『今日は、大学の同級生とタイ料理食べに行ったんだ。えりかさんはエスニック好きですか?』

送られてきたLINEには、色とりどりの料理がテーブルいっぱいに並んだ写真が添えられている。

ハイヤーの後部座席でぐったりと倒れこむように座るえりかは、「いいなあ」と呟きながら、首に巻きつけていたネックピローに頭を預けた。

『大好きですよー!カオマンガイが特に好きです』

そう返信したあとで、もう一通追加のメッセージを打ち込む。

「今度一緒に食べに行きたいです、ね……」

だが、そう入力しかけてふと指を止めた。

ドライバーの横で光るカーナビに目をやると、表示されている時刻は午前5時15分。小さくため息をつき、削除ボタンを連打してスマートフォンを伏せた。

こんな時間は、お誘いのLINEにふさわしくない。

「高杉さん、もうすぐ現場に着きますよ」

ドライバーの言葉につられ、えりかは窓の外を見た。

『被害者は20歳の“オオヤマ・サトミ”というキャバ嬢。一人暮らしをしていたが、練馬の実家に帰省しようと駅から歩いている最中に背後から刺され、何者かに殺害された模様。容疑者は逃走中。

警察からの公式発表はたぶん午前9時頃だから、それまでに被害者の顔写真見つけてきて。実家の住所は練馬区富士見台……』

今から3時間ほど前。えりかたち捜査一課担当記者のリーダーをしている先輩・桑原が、警察官からオフレコで情報を掴んできた。つまり、まだ発生したばかりなので、『広報文』と呼ばれる発表が出ていない事件だ。

発表されると同時にテレビで放送できる映像やインタビューを集めておくため、こういったオフレコの情報はとても貴重となる。

入社した最初の頃は、さすがに取材開始時間が早すぎるのではないかと思っていたが、犬の散歩をするためなどで早朝に外を歩く人は意外にもちらほらいる。

さらに朝の時間帯は、午前10時頃まで情報番組をオンエアしているので、取れた情報はどんどん反映できてしまう。裏を返せば、他局に情報を先行される、つまり「抜かれる」可能性が常にあるのだ。

えりかはデジカメとノート、ペンや名刺を入れた小さなバッグを持ち、ハイヤーから降りた。

先輩の情報を無駄にしないためにも、被害者の写真を何としても手に入れなくては。

この記事へのコメント

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No Name
このメガネの青年の言うことは正論だね。
報道ってなかなか難しい立ち位置ですね。
2020/07/20 05:3699+返信1件
No Name
写真の公開、家族の許可も取らないとは知らなかった!
2020/07/20 05:3999+返信2件
No Name
最後のメガネの男性の言い分は正論。多分実際の現場も大差ないはず。
こんなだからマスゴミって言われるんだよ。
2020/07/20 06:0785
No Name
なんで被害者の情報を勝手にバンバン流すのか、いつもほんとうに謎だった。顔写真はまだ、事件の目撃者探すために出すというのは分かる。でも職業とか、交際関係とか、亡くなってるとはいえプライバシーの侵害だよね?
若くて綺麗な女性なら世論に訴えかけられるから親族が写真出してくれという場合もあるかもしれないけど、勝手に出された遺族の気持ちはどうなるんだろう。
フィクションとはいえ20歳でなくなったサトミさんを
思って胸が痛くなるわ。
2020/07/20 06:0749返信1件
No Name
単なる恋愛ドラマで終わるのではなく、こうして社会への問題提起を投げかける連載も悪くないですね
2020/07/20 07:0230返信1件
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