恋と友情のあいだで~廉 Ver.~ Vol.16

「子どもができたの」まさか、そんな。婚外恋愛に溺れた男が突きつけられた、信じがたい現実

−なぜ今、思い出すのだろう?

若く、それゆえ傲慢だった同級生・相沢里奈の、目を声を、ぬくもりを。

これは、悪戯に交錯する二人の男女の人生を、リアルに描いた“男サイド”のストーリー。

一条廉は3歳年上の美月と結婚し、駐在先のシンガポールで新婚生活をスタートさせる。

しかしその心には、特別な思いを抱く大学時代の同級生・里奈がいた。

腐れ縁のように少しずつ距離を縮めていくふたりはやがて一線を超え、廉は情熱のまま「結婚しよう」とまで口走ってしまう。

不貞に気づいた妻の美月から一時的に別居を宣告された廉だったが、日本への本帰国が決まると、再び生活を共にするようになった。


取り戻した、穏やかな生活


「廉、今日は早く帰れそう?」

玄関先で、美月が僕に問う。

振り返った彼女は穏やかな笑みを湛えていたが、その遠慮がちな瞳の奥に明確な意思があることを、夫の僕は気づいてしまう。

しかしあえて何の含みも持たせず「ああ、うん」と僕は答えた。

シンガポールから日本に戻った後、彼女とは、再び僕の実家で生活を共にしている。

美月は抜群の包容力を見せる年上妻だが、以前から子どもを欲しがり、子作りに関する話になると神経が過敏になる。そんな妻に嫌悪感すら抱いてしまっていた時期もあったのだが…今は、そうでもない。

里奈と完全に終わったことが、僕に心境の変化をもたらしたのだと思う。

これからも美月と、円満に夫婦関係を続けていく。その覚悟をもってすれば、子づくりに協力することくらい、夫として当然の義務だと思えるようになったのだ。

「今日は18時…いや、19時には会社出れると思う。家で一緒に食事しよう」

そう答える僕に、美月は「じゃあロールキャベツにするね。廉、好きでしょ?」と控えめに笑う。

しかしながらこの日、僕は結局、妻との約束を守ることができなかった。

というのも、さぁオフィスを出ようかというタイミングで、意外な女が連絡を寄越したのだ。

【恋と友情のあいだで~廉 Ver.~】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo