2018.08.22
恋と友情のあいだで~廉 Ver.~ Vol.9廉:タブーを犯した夜
「そんなつもりじゃなかった」
…なんて、いまさら里奈にはとても言えない。
いや、しかし、これは僕の本音である。
「廉の部屋に連れて行って」
あのとき里奈が、そんなセリフを言わなければ。
そうすれば、僕はどうにか理性を保ったままタクシーで送り届けていたはずだし、部屋でふたりきりになった後も、彼女が抱きついてきたりしなければ、一線を超えることだけはなかったと思う。
それは僕が道徳的だとか、自制心があるとかいう話ではない。
情けない話だが、僕は昔から里奈を前にすると、ただただ臆病で弱気な男に成り下がってしまうのだ。
「里奈を、自分だけのモノにしたい」
「ずっと廉と、こうしたかった…」
ホテルの部屋で、ふたりきり。
一糸まとわぬ姿になった里奈が、瞳を潤ませそう呟いたとき。
僕の中で何かがプツン、と音を立て、抑えていた感情が堰を切ってあふれ出した。
「里奈、里奈、里奈…」
そうしていったん箍(たが)が外れてしまうと、もう流れだす欲望を止めることは不可能だった。
遠慮がちに触れるだけでは満たされず、僕は夢中で彼女を抱き寄せ、柔らかな肢体に唇を押し当てる。
すると里奈も、そんな僕に呼応するようにして切なげな吐息を漏らす。その妖艶な表情は、かつてのどの瞬間よりも僕の心を揺さぶるのだった。
けれどもう、強がる必要はない。里奈を愛しいと思う気持ちを、我慢せず放出していいのだ。
その開放感は、自分でも恐ろしくなるほどの快楽で僕に迫った。
そっと暗闇で目を凝らすと、これまで決して強気な態度を崩さなかった里奈が、すべてを曝け出し、さらには不貞というタブーを犯してまで僕を受け入れている。
その、あまりに刺激的な光景を見下ろしながら、僕は先ほど未祐が不用意に漏らしたあの言葉を思い出していた。
−里奈、もう旦那とは“したくない”みたい−
…もちろん、真偽は知らない。しかし旦那とはしたくない、と言ったらしい里奈が、今、目の前で本能のままに僕を欲している。
その事実は僕をどうしようもなく高揚させ、さらには里奈に対し、あまりに身勝手で、不謹慎な感情を呼び起こすのだった。
里奈を、自分だけのモノにしたい。
その思いは、華奢で滑らかな身体の線を探るたび、瑞々しい肌の感触を確かめるたびに肥大していき、ふたり同時に果ててしまった後も消えることはなかった。
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