恋と友情のあいだで~廉 Ver.~ Vol.5

「まさか、浮気…?」金曜夜の西麻布。新婚の商社マンが目撃した、ある男女の密会現場

−なぜ今、思い出すのだろう?

若く、それゆえ傲慢だった同級生・相沢里奈の、目を声を、ぬくもりを。

これは、悪戯に交錯する二人の男女の人生を、リアルに描いた“男サイド”のストーリー。

“商社マン”となった一条廉モテを堪能する日々を送るが、次第に抜群の包容力を見せる3歳年上の美月と半同棲状態に。

年上の御曹司とあっさり結婚を決めてしまう里奈に苛立つ廉。しかし彼女の結婚式に参列し、その幸福そうな笑顔にどこか達観した思いを抱く。

里奈の結婚&退職と時を同じくしてシンガポール駐在のチャンスを掴んだ廉は、ついに自身も美月との結婚を決意。プロポーズするのだった。


シンガポールでの新生活


朝。目が覚めて最初に見える景色に、僕はまだ慣れない。

キングサイズベッドを置いても余りある広々としたベッドルームには大きな窓があり、そこから差し込む南国らしい眩い光、眼下に広がる無数のタワー、濃く力強い緑などに、未だにしばし戸惑ってしまう。

「廉、起きた?」

ぼんやりと外を眺めていたら、日本で見慣れたものよりふた回りは大きいドアが開き、その隙間から僕の妻、美月が顔を覗かせた。

「今朝はカヤトーストを作ってみたの。ラッフルズで買ってきたカヤジャムだから、美味しいはず」

その弾んだ声とともに、彼女の背後からは、挽きたてのコーヒーとトーストの香りが漂ってくる。

シンガポール駐在をスタートさせ、間もなく1ヶ月が経とうとしている。

僕たちが暮らすのは、リバーバレーという場所にある小綺麗なプール付きコンドミニアム。大豪邸というわけではないが2人暮らしには十分すぎる広さの部屋を美月は一目で気に入り、大げさなまでの歓声をあげてくれた。

「こんな部屋で暮らせるなんて」とどこまでも健気な彼女は、大量の荷ほどきや慣れない場所での必需品の買い出しなど、骨の折れる作業も文句ひとつ言わず一切を引き受けてくれた。

一方の僕はというと、シンガポールでも赴任早々、あちこちから声がかかり飲みの誘いが絶えない。

「仕事だ」と胸を張れるものもあればそうでないもの(主にCAとの食事会)もあったが、しかし結婚前と同様、美月は僕の前で抜群の包容力を見せていた。

僕たちの新婚生活は順調だった。

…少なくとも、僕はそう思っていた。

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