2018.07.11
恋と友情のあいだで~廉 Ver.~ Vol.3年上女の魔力
そして里奈とは再び疎遠になった。
僕はその後も相変わらずふらふらと、特定の彼女はつくらず無責任な付き合いばかりを繰り返した。
女たちはいつも、気まぐれに近づいてきたかと思えばあっさりと(時には泣き喚いて)去っていく。
しかしそんな身勝手な女たちの中で唯一、ずっと穏やかな笑顔で寄り添ってくれる女がいた。
3つ年上の美月(みづき)と出会ったのは、僕を可愛がってくれている同じ部門の先輩、藤井さんの結婚式だ。
藤井さんは実に彼らしい選択でCAと結婚したのだが、そのCA妻、つまり新婦の女子大時代の友人として参列していたのが美月だった。
男性なら必ず共感してもらえるはずだが、結婚式に出席してすることといえば、新婦友人の品定めである。
その場で声をかけるような真似はしなかったが、その日、僕が心の中で勝手にナンバーワンを贈っていたのが美月だった。
単純に、小柄で華奢なスタイルと、年上ながら幼さの残る顔立ちが好みだったのだ。
後日、藤井さんから呼び出された僕は、ひょんな話の流れで美月とデートすることになった。
どうやら彼女のほうも、僕を気に入っているのだという。
とはいえ、先輩の紹介という多少の義理はあれど、僕としては最初から本気だったわけじゃない。他の女たちを切ってまで美月ひとりに向き合う気もなかった。
しかし彼女は、想像以上に包容力のある女だったのだ。
僕に他の女の影があることくらい、美月もすぐに気づいたと思う。しかし彼女は何も言わず、何も聞かない。
美月は某メガバンクの渋谷支店に勤めており恵比寿で一人暮らしをしていたが、しばらくすると自由が丘にある僕の家で過ごすことが増え半同棲のような状態となった。
それでもしょっちゅう深夜または午前様で帰宅する僕を、美月は決して問いただしたりしない。
怒るどころか「おかえり。お茶漬けでも作る?」などと声をかけてくる居心地の良さは、一度ハマると抜け出せない蟻地獄のような魔力があった。
もともと、母親と歳の離れた姉にさんざん甘やかされて育った僕だったから、年上の彼女に甘えるのはごくごく自然な流れだったとも言える。
「ねぇ…廉と私の関係って、なに?」
曖昧な関係が3ヶ月ほど続いた、ある夜のことだ。
ひとしきり抱き合った後、ついに美月からそう聞かれた。彼女は試すように、脱力した僕の腕を胸元に抱き寄せる。
当時28歳、黄金期を迎えた美月の身体には贅肉ではない程よい肉づきがあり、成熟した女だけがもつ艶をも纏いはじめていた。
その柔らかさを、包み込むような温もりを、失いたくなかった。
「何って…美月は俺の彼女でしょ?」
そう言って髪を撫でてみせると、彼女は安堵のため息をつき、その顔をぎゅっと僕の胸に押し当てた。
くぐもって聞こえた「ずっと、不安だったよ」という声は、涙で震えている。
華奢な肩を抱きながら彼女を守らなければならないと感じたのは、男としての本能というべきものだろう。
「ごめんな…ごめん」
不甲斐なさを詫びながら、僕は美月と本気で向き合うことを心に決めた。
ダメな自分をも受け入れてくれる美月の包容力こそが愛だと感じたし、そんな彼女を大切に思う気持ちが愛するということだと、そう信じていたからだ。
【恋と友情のあいだで~廉 Ver.~】の記事一覧
2018.11.07
Vol.21
「これで最後だから…」最愛の女から届いた“サヨナラメール”。そこに隠されていた真実とは?
2018.11.06
Vol.20
素直になれずすれ違う、男女の恋の結末は?いよいよ明日で最終話!「恋と友情のあいだで~廉 Ver.~」全話総集編
2018.10.31
Vol.19
「今度こそ、君を守りたい」独身に戻り、ついに覚悟を決めた男だったが...。予想外な彼女の反応とは
2018.10.24
Vol.18
豹変した妻から、突然の離婚宣告...独り身となった男が女々しくも思い出す “忘れられない女”
2018.10.17
Vol.17
従順だった妻が急に豹変した理由。夫は知る由もない、平日昼間の“ある出来事”とは
2018.10.10
Vol.16
「子どもができたの」まさか、そんな。婚外恋愛に溺れた男が突きつけられた、信じがたい現実
2018.10.03
Vol.15
夫の浮気相手が、私より先に妊娠した。男の過ちを全て受け入れた年上妻の、惨めな誤算
2018.09.26
Vol.14
暴走する、美しき人妻への愛欲。制御不能に陥った男が思わず口にした、不実な言葉
2018.09.19
Vol.13
「僕に、責任は取れない」人妻に手を出した男の本音。彼を恐怖に突き落とす、最悪のシナリオとは
2018.09.12
Vol.12
夫の浮気を見抜いた妻の執念。ホテルのロビーで4時間待ち続けた女が目にした、怒りの光景
おすすめ記事
2018.07.04
恋と友情のあいだで~廉 Ver.~ Vol.2
「好きだよ、可愛い」。ベッドでの常套句を駆使し、モテ期を堪能する商社マンの秘めたる思い
- PR
2023.09.26
「仕事終わりの一杯から、特別な日の乾杯にも」イタリア最高峰のスパークリングワインの魅力
2015.06.07
ドクターたちの恋愛事情
勤務医の医者は、「彼氏」としての価値は低い?
2018.11.23
想定外妊娠
「幸せな妊婦」を直視できない。“理想の母親”を演じ続けた女が、親友ともう会わないことを決めた理由
- PR
2023.09.25
シュワっと泡で乾杯!ふたりの距離がグッと近づく、青山の大人なテラス
2020.04.08
フレネミーな2人
フレネミーな2人:「あの子、失敗してくれたらいいのに」看板アナの座を狙う、新人女子アナの裏の顔
2019.10.24
聖女の仮面
「見かけは大人しそうな子が、影で凄いことしてたって」男が漏らした一言で、友人の本性を知った女
2018.03.29
ネブミ男
ネブミ男:「好きなタイプの男性は?」 。その回答で分かる、結婚できる女とできない女の差
2016.12.26
二子玉川の妻たちは
二子玉川の妻たちは:カードを出し、利益を享受し合う。それが、妻社会での社交のお作法
2021.08.31
夫力★向上委員会
夫力★向上委員会:結婚後、掃除機の場所さえ知らない36歳男。「離婚したい」と妻に切り出され…?
東京カレンダーショッピング
ロングヒット記事
2023.09.21
男と女の東京ミステリー
念願の食事デートで彼女が中座。数分後に戻ってきた女の姿に、28歳男が言葉を失ったワケ
2023.09.19
Editor's Choice~fashion~
買えるのは全世界で500人だけ!昨年、即完売したゼニスの「デファイ 21 クロマ」が装い新たに復活
2023.09.21
Editor's Choice~beauty~
ランコムがルーブル美術館とのコラボアイテムを発売。思わず見惚れるほど美しいパッケージに注目!
2023.09.22
大人の週末ToDoリスト
品川で開催するクラフトビール祭りから、イヴ・サンローラン展まで。今週末サクっと行けるイベント3選
この記事へのコメント