恋と友情のあいだで~廉 Ver.~ Vol.13

「僕に、責任は取れない」人妻に手を出した男の本音。彼を恐怖に突き落とす、最悪のシナリオとは

翌日、銀座・三越前で待ち合わせた妻の美月は、普段とは別人のようだった。

シンガポールにいるときの彼女はカジュアル一辺倒だが、大人っぽいブラックワンピースに身を包んだ妻は、遠くからでも目を引いた。

「どうしたの?おめかしして」

「綺麗だね」というべきか迷ってそう声をかけると、美月は僕の躊躇やよそよそしさを吹き飛ばすように、満面の笑顔をこちらに向けた。

「そりゃ、廉と久しぶりの銀座デートだもの」

「行こう」とさりげなく腕を絡ませた美月の温もりに、僕は不謹慎ながら昨夜の情事を思い出してしまう。

今頃、里奈はどうしているだろうか。

…あのあと、僕は彼女と電話をして「しばらく連絡は取らないでおこう」と話した。

二階堂に疑われている以上、そうするのが最善の策だ。

僕はあえて突き放すような声を出したが、里奈がそれを「わかった」と素直に承諾するのを聞いて、実は内心、自分勝手に胸を痛めたりしていた。

僕だけじゃない。やはり里奈も、今の生活を捨てる気はないのだ。

昨夜の電話は、そのことをお互いに確認するような会話だった。


「どうしたの?ぼんやりして」

美月がランチを予約していたらしい『シェ・トモ』で、ふいに顔を覗かれ我に返る。

妻に何かを悟られてしまわぬよう十分に気を配り、今は彼女との時間に集中しようと努力をしているはずなのに、気づけば上の空になってしまう自分がいた。

「いや、別に」......


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