私たちは、東京にいる限り夢を見ている。
貧しい少女にガラスの靴を差し出す王子様が現れたように、いつかは幸せになれると。
だが必ず、自分が何者でもないと気づかされる時が来る。
神戸から上京し、港区女子へと変貌を遂げる真理亜と、その生き様を見つめる彩乃。
彼女たちが描く理想像は、現実なのか、それとも幻なのか...
「東京シンデレラ」一挙に全話おさらい!
第1話:同じ空間にいても、誘われる女と誘われない女。その残酷な評価
手に入れた物よりも、手に入らない物の数を数え始めたのはいつからだろうか。
「東京は、権力者に可愛がられた者が勝つ」
今でも、私は真理亜に言われたこの言葉をふと思い出す。
私はこの東京で、何を得て、何を失ったのだろうか...
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第2話:東京で素晴らしい女性になるから。素敵なカバンと、靴をください
ずいぶん冷え込むようになった、表参道の並木通り。
私はショーウインドーの前で、かれこれ10分くらい立ち尽くしていた。
見つめる先には、約60万するシャネルの鞄があった。
頑張って働いたとしても、1ヶ月のお給料でも到底足りない。だけど、頑張ったら何とか買える気もするマトラッセ。
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第3話:素敵な男性に見初められねば、中の上の家庭出身者は永遠に報われない?
東京の街を高層階から眺めていると、不意に自分がちっぽけな人間に思えて仕方ない時がある。
この街に飲まれていくような、不思議な感覚。
そんなことを思いながら窓から見える景色を眺めていると、背後から声が聞こえた。
「彩乃ちゃん、ごめんね〜。お待たせ!」
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第4話:「純粋に、好きなの」。条件で男を選んでいた女の、裏切りのような言葉
「彩乃ちゃん、その靴今季の新作?可愛いね。」
真理亜と『ザ・ラウンジ by アマン』でアフタヌーンティーの約束をしていた木曜日の午後。
私は最近手に入れた、15万ほどする今季新作の靴を意気揚々と履いていた。
「そうなの、お店に行ったら一目惚れしちゃって。 」
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第5話:買ってきた惣菜を、トレイのまま食卓に出す品のなさ。高望みをし、甘い蜜を吸った女の誤算
東京の都心で女性が一人働いて家賃を払い、ある程度の生活水準を保っていくのは大変だ。皆、どうやって暮らしているのだろうかとたまに疑問が湧く。
一生懸命働いても家賃と生活費に全て消えていく虚しさ。
その時にいつも思うことは同じだった。
「どこからか王子様が現れて、素敵なお城に住ませてくれないだろうか」と。
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第6話:東京でちょっとキラキラな生活してるだけ。自分が何者でもないと知り始めた25歳
気がつけば、季節はいつの間にか冬になっていた。
私は、冬が嫌いだ。
人肌が無条件に恋しくなり、一人で過ごすには寂し過ぎる季節だから。
そしてクリスマスに向けてライトアップが始まった街並みも、時として何故か虚しさを助長する時がある。
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第7話:満たされぬ女が言う定型文「私、友達は可愛い子しかいないの」
真理亜があっさりとアメリカへ旅立ってから、1年が過ぎようとしていた。
東京で一生懸命働き、美容にもお金を注ぎ、それなりに遊んで手入れしてきた分、22歳の頃の自分よりも、26歳の今の方が見た目には自信があった。
そのせいなのか、連日のように食事会へ参加したお陰なのか、私は医者の健一郎という彼氏を捕まえた。
「私の彼氏、医者なの。」
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第8話:東京で生きていく女が、バーキンよりも手に入れるべきもの
「東京に行くなら、真理亜に紹介したい人がいるよ。彼と繋がっておけば、“間違いはない”から。」
当時まだ神戸に住んでいた私に、 音楽会社のCEOである松田さんを紹介してくれたのは、学生時代によく遊んでもらっていた、音楽協会の会長だった。
そんな松田さんに連れて行ってもらった、記念すべき東京での初ディナー『キャンティ』へ行った時、まだ22歳だった私はお店の価値も、歴史さえも知らなかった。
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第9話:結局みんな独りぼっち。大人数でいるほどに深まる、女の孤独
—真理亜が帰ってきたらしい。
私は、真理亜の帰国を彼女のInstagramで知った。
それも無理はない。LINEも変更し、携帯の番号も変えたため、多分真理亜は今の私の連絡先を知らない。
真理亜が東京を離れて2年くらい経った頃、私は全てをリセットしたくて、一度自分の連絡先を全て変えた。
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第10話:「あの時の選択は、正しかった?」男のスネを齧り続けた女の、虚しい顛末
真理亜が帰ってきてから、私は妙に落ち着かなかった。ずっと、ソワソワして物事が手につかない。
「彩乃ちゃん、最近ミス多くない?気をつけて。 」
「はい...すみません。」
青山のオフィスから見えるどんよりとした冬の曇り空を見つめていると、上司から指摘が入り、私は慌ててPCを見つめ直した。
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第11話:普通の女が抱え続けた葛藤。“その他大勢”から抜け出せずに20代を終えた女の末路
相手が無欲なほどに、欲望だらけの自分が虚しく空虚に思える。
そうして思い知らされるのが、絶対的な敗北感だ。
私にとって、真理亜はそんな存在だった。
身の丈に合った自分の道を、自分の足でしっかり歩む。
そんな真理亜の生き方が羨ましくて、そして常に満たされずにいる自分が惨めになった。
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