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30歳になりまして Vol.14

いよいよ明日で最終話!「30歳になりまして」全話総集編

「30歳」

その数字は、女性の心に妙に重くのしかかる。

「年齢なんてただの数字」と本人は思っていても、世間がそれを許してくれない。

職場では、つい最近まで若手だったはずなのに、いつのまにか中堅どころになっている。

マッチングアプリだって自動的に30歳になった途端に「いいね」が減った気がする。

気持ちは追いついていないのに、30歳という年齢の重みがが急にのしかかる。

大手IT企業のマーケティング部で、課長職を担う桜庭菜穂は、30歳になって迷いが生じ始めた…。

「30歳になりまして」一挙に全話おさらい!

第1話:「時短で働く女性が正直羨ましい…」独身バリキャリ女のモヤモヤ

「今回の企画では、子育てをしながら時短で働いている安西さんのような社員がいる一方で、キャリアを積み上げる桜庭さんのような先輩もいるということを、新人に伝えたいです。

30歳でいち早く課長に昇進した桜庭さんが安西さんと話すことで、新人は、幅広い働き方を想像できると思います」

― なるほどね。

趣旨はわかった。が、同時にモヤモヤしてくる。登壇を承諾するか迷いながら、私はなんとなく同期のグループLINEを開き、安西さんを探した。

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第2話:「30歳でも、まだまだイケる?」マッチングアプリでの自分の市場価値に、女が安堵したワケ

「私も楽しいです。つい、飲みすぎてしまいますね」

お互いに4杯目のワイングラスを傾ける。私が今、考えていることは2つ。

― ひとつは、飲みすぎて、顔が変になってるんじゃないか?ということ。

最近、もともと良くなかった化粧ノリがさらに悪くなってきた気がする。今日は、ディオールのファンデーションを使ったけれど、飲みすぎてポカポカしているから、早くも崩れているのではないかと心配だ。

それから、もう一つは――。

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第3話:「マッチングはするのに、続かない」2回目のデートもすぐにお開きに…30歳女の切実な悩みとは

「菜穂さん、ごめんなさい」
「え?」
「デートはここまででもいいでしょうか」

私は戸惑いながら、支払いに何か問題があったのだろうかと思った。うっかりお財布を忘れたとか、そんなことかと。

しかし、宏伸さんが口にした言葉は、予想外のものだった。

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第4話:「バリキャリ」って言われると、嫌味に聞こえる…。大手IT企業30歳独身女性の本音

実際、今の自分は仕事が趣味だと私は思う。

週末に買い物に行ったり、映画を観たり、友達と美味しいものを食べに行ったり。それなりに遊びはするが、目的は「週明けに頑張るため」のエネルギーチャージに過ぎない。

そのアクティビティ自体を楽しむ、という感覚があまりないのだ。そんなことを考えていると、コンシェルジュは妙に明るい声で言った。

「総じて、とてもいいプロフィールでした。…問題があるとしたら」

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第5話:残業中、5つ下の後輩にコーヒーを奢られた30歳女。彼に心惹かれ始めて…

「少しお時間いいですか?…差し出がましいようなのですが、僕、率直に話すと、昨日の新人研修の企画はナシだと思ってたんです」
「え?」

澤石さんは、今どきの俳優にいそうな整った顔をゆがめる。

「2人の人生を比較するような企画ってどうなんだろうって。2人とも頑張って働いたり育児をしたりしているのに、お互いにモヤモヤするんじゃないかなって思ったんです」

菜穂は、どんな表情をしたらいいか迷ってしまう。まさに昨日からずっと「モヤモヤ」しているから。

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第6話:「居心地が悪い…」結婚・出産ラッシュの友人を前に、恋愛相談をする30歳独女の気まずさ

今日は、中高一貫校時代のダンス部の同期会。年に3〜4回、こうして集まって近況を共有するのだ。

出会ってから20年弱。こんなにも関係が続いていることも、会話が「子育て」にシフトしているのも感慨深い。

― 最近は、私にはあんまりわからない話ばかりだけれど。

今回集まった同期は7人。3人は子育て中で、1人は妊娠中。もう1人は子どもを持たないことを決めて大型犬を飼い、目黒区にマイホームを建てたところだ。そしてもう1人は、夫の海外転勤でロンドンにいる。

― みんな、人生のステージが、着々と進んでるわ。

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第7話:「婚期を逃しそう…」5歳下の彼に、結婚話ができない30歳女の切実な悩み

― なんか、幸せすぎないか。

本当は蒼人と、「結婚」というかたちをとれるのがベストではある。

でも「結婚」なんてワードは、若い彼にとってプレッシャーになるだけだろう。

それでこの穏やかな幸せを壊すくらいなら、今のままでいい。いわゆる婚期を逃したとしても、きっと私は、後悔しない。

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第8話:「このままだと婚期逃す?」結婚の話をせずに同棲をスタートした30歳女の後悔とは

「菜穂、今日なんかあったの?昼過ぎに会社で見かけたよ。ロビーを慌ただしく歩いてたよね」

私は苦笑して、今日がいかに大変だったかを話す。話し終わらないうちに、蒼人の細くて長い腕が、背中に回ってくる。

「お疲れさまだね。菜穂の大変さは、僕にはまだわからないけど、すんごくかっこいいよ」

ささやくようにそう言われ、疲れは吹っ飛んでしまった。蒼人と一緒に住むようになって3週間。私は、彼がくれる幸せにどんどん溺れていく。

― でも、この沼に沈んじゃダメだよなあ…。

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第9話:「30歳過ぎて彼氏と別れるのはツラい…」恋人を簡単に切れない、切実な理由

― 嘘…でしょ。

なんてタイミングが悪いのだろう。私は、化粧室の中で一人、自分の不運を呪う。

15時すぎ。オフィスフロアの化粧室に入っていたら、聞きたくない会話が耳に飛び込んできたのだ。

女子社員2人の軽やかな声。声の主はわからないが、若々しい明るい会話が、壁越しに響いた。

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第10話:元カレから「結婚前提でやり直そう」と言われた30歳女。もう好きじゃなくても心が揺らぐワケ

「あれから女性とデートしたりしてみたけど、菜穂の強くて面倒見がいいところが、すっごい特別だったなって思わされるんだ。…なかなかの子を手放してしまったなって悔やんでる」

私は、ただただ戸惑う。

「…そんなこと言われても」
「だからね、菜穂。今の彼とちゃんと話して、もし結婚が本当に見えなかったら、俺とまた過ごしてみない?」

彼の声が、心に真っ直ぐに響く。

「今日、思った。俺は、菜穂とやり直したい。もう36歳になるし、結婚前提で」

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第11話:付き合って半年でやや不穏な空気に…。箱根へのお泊り旅行で修復しようとしたら

「今日ね、さっそく蒼人とのことで声をかけられたよ。思っていた以上に、情報がまわるのは速いのね」
「そっか。…菜穂は、嫌?広まるの」
「ううん。そんなことはないよ。ちょっと怖いけれど」

私の言葉に、彼はしばらく箸を止めた。そして、少し困ったような表情で言った。

「そっか。僕の本音を言ってもいい?」

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第12話:半年記念日に、彼と一泊旅行。しかし、幸せな雰囲気が一変した“プレゼント”とは?

「…真剣な話って?」

私は、浴衣の裾を直しながら、座布団に座り直す。

泊まっている旅館の部屋は、まるで雑誌から抜け出してきたような上等さだ。窓の外では、箱根の山々が深い夜に沈み、かすかに虫の声が響いている。

「え…蒼人、どうしたの?」

私の声は、深刻さを帯びていた。なんとなく、いい話ではないような気がしたから。

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第13話:「私何やってるんだろう…」30歳で失恋し、寂しさからつい元カレと過ごしてしまった女の混乱

20時すぎ。仕事を終え、エレベーターの中でスマホをチェックする。LINEの通知が来ていた。

『博俊:今、菜穂の会社の近くにいるんだけど、飲まない?』

元カレ・博俊からのメッセージだった。

― えっ…ちょっと気まずいけど。

先日、突然告白されて断ったばかりなので会うのがはばかられる。なのに…寂しかったからか、なんでもいいから気を紛らわす先がほしかったからか、私は「いいよ、飲もう」と送っていた。

第13話の続きはこちら

30歳になりまして

「30歳」

その数字は、女性の心に妙に重くのしかかる。

「年齢なんてただの数字」と本人は思っていても、世間がそれを許してくれない。

職場では、つい最近まで若手だったはずなのに、いつのまにか中堅どころになっている。

マッチングアプリだって自動的に30歳になった途端に「いいね」が減った気がする。

気持ちは追いついていないのに、30歳という年齢の重みがが急にのしかかる。

大手IT企業のマーケティング部で、課長職を担う桜庭菜穂は、30歳になって迷いが生じ始めた…。

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