◆これまでのあらすじ
大手IT企業のマーケティング部課長・桜庭菜穂(30)。5歳下の人事部・澤石蒼人と交際して6ヶ月。彼から、交際について社内でオープンにしたいと言われる。結婚に一歩近づくのではと期待した菜穂だが――。
▶前回:元カレから「結婚前提でやり直そう」と言われた30歳女。もう好きじゃなくても心が揺らぐワケ
Vol.11 “恋愛公表”の落とし穴
“社内で、菜穂と付き合ってるって言ってもいい?”
そんな彼の言葉にうなずいたのが5日前。
そして一昨日、蒼人はさっそく部内に私の話をしたらしい。
「先輩から、またしつこく合コンに誘われたんだ。だから、僕には付き合ってる人がいるって言ったよ。質問攻撃されちゃって、菜穂の名前も出した」
「これでもう、合コンとかには誘われないから」と、蒼人は晴れやかな笑顔で言った。
恋愛関係を社内でオープンにする。それは少し勇気がいる決断だった。でも大きな会社だし、そこまでウワサにはならないだろう。
そう甘く考えていたのだが…。
今朝。
出勤したタイミングで、後輩のひとりが、からかうような笑顔で言ってきたのだ。
「菜穂さんの彼氏について、聞きましたよ~。まさか、あのイケメンと!」
それから、お昼休みには、食堂で同期の男子から声をかけられた。
「社内恋愛中なんでしょ?楽しそうだね」
2人とも、蒼人と同じ人事部ではない。なのに、どうしてこんなに早く情報が伝わっているのだろう。
胃のあたりが重くなる。
自分では手の届かない“ウワサ”の渦に飲み込まれていくようで、なんだか落ち着かない。
ソワソワしたまま帰宅した私は、夕食の席で、蒼人に話してみることにした。
「今日ね、さっそく蒼人とのことで声をかけられたよ。思っていた以上に、情報がまわるのは速いのね」
「そっか。…菜穂は、嫌?広まるの」
「ううん。そんなことはないよ。ちょっと怖いけれど」
私の言葉に、彼はしばらく箸を止めた。そして、少し困ったような表情で言った。
「そっか。僕の本音を言ってもいい?」
この記事へのコメント
28点!もう少し別の表現方法があると思うし、旅館のくだり、全体的に雑。