◆これまでのあらすじ
大手IT企業のマーケティング部課長・桜庭菜穂(30)。5歳下の人事部・澤石蒼人と交際して5ヶ月。「結婚なんてまだ真剣に考えていない」と言われ、がっかりしてしまい…。
▶前回:「婚期を逃しそう…」5歳下の彼に、結婚話ができない30歳女の切実な悩み
Vol.8 時代が変わっても「結婚」のプレッシャーはある
― 今日は、めちゃくちゃ疲れたなあ。
私はやっとの思いで自宅マンションにたどり着き、エレベーターの壁にもたれる。パンプスで1日中歩き回ったから、つま先の小指が腫れていた。
今朝、後輩が営業部に提出したマーケティング資料に、大きなミスがあったことが発覚。その資料はすでに得意先の手に渡ってしまっていて、取り返しがつかない状況になった。
そこで急遽、後輩と一緒に得意先に訪問していたのだ。
― 課長として、うまくトラブル対応できたかな。
さっきまで、会社近くのカフェで、その後輩にケーキをごちそうしていた。落ち込んでいた後輩の表情が少し和らいだのでよかったけれど…。
「あーヘトヘトだあ」
エレベーターを降り、短い廊下を歩いて部屋のドアを開ける。
「ただいま〜」
疲れ切ってからびた私の体に、和食割烹のようないい香りが入り込んできた。
「菜穂、おかえり」
マリメッコのエプロンをつけた蒼人が、ニコニコしながら玄関にやってくる。
「今日の夕飯は、豚汁とお刺身だよ。本当は唐揚げを作ろうと思ってたんだけど、なんだか疲れてたからお刺身にしちゃった」
「ありがとう、楽しみ」
「菜穂、今日なんかあったの?昼過ぎに会社で見かけたよ。ロビーを慌ただしく歩いてたよね」
私は苦笑して、今日がいかに大変だったかを話す。話し終わらないうちに、蒼人の細くて長い腕が、背中に回ってくる。
「お疲れさまだね。菜穂の大変さは、僕にはまだわからないけど、すんごくかっこいいよ」
ささやくようにそう言われ、疲れは吹っ飛んでしまった。
蒼人と一緒に住むようになって3週間。私は、彼がくれる幸せにどんどん溺れていく。
― でも、この沼に沈んじゃダメだよなあ…。
この記事へのコメント
もう少しテンポよく話を進めて欲しい。第一、タイトルが先週とほぼ同じ(若干表現は違っても意味合いは酷似)ww ガン見してきた男は幼馴染みかなんか?
気強いな、この女。