もう片隅で、凍えないよう Vol.12

忘れていた過去を突き付ける、謎のDMの送り主は…?「もう片隅で、凍えないよう」全話総集編

きっかけは、1遍のエッセイだった―。

『私の、忘れられない冬』

ライターの希依(28)は、WEBエッセイに自身の過去を赤裸々に綴った。

その記事の公開日、InstagramのDMに不思議なメッセージが届く。

「これって、青崎想太くんのことですよね?LINE、知ってますよ」

平和だった希依の人生が、めまぐるしく変わっていく―。

「もう片隅で、凍えないよう」一挙に全話おさらい!

第1話:「もう無理」と、イブに突然フラれた女。数年後、謎のDMが届いて…

「“忘れられない冬”だよね…」

人気女性誌のWEBページに『私の、忘れられない冬』というエッセイを書いてほしいと、依頼が来ていたのだ。あさってまでに、原稿を出さなくてはいけない。書く内容はおおむね決まっていた。「忘れられない冬」といえば、たったひとつのことしか思い浮かべられないからだ。

― 想太…。

頭にあるのは、想太との、あの冬のエピソード。

― でも、元カレの話をエッセイに書くなんて、正介は嫌がるだろうか。

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第2話:結婚していても、忘れられない人はいる。元カレに、4年ぶりにLINEを送ってみると…

『この「彼」って、青崎想太くんのことですよね?』。

突如届いたDMを、希依は何度も読み返した。

「急にDMしてきたけど…この人、いったい何者なの?」

恐怖に顔を歪めながら、送り主のプロフィールを確認する。アカウントを開いてみると、アイコンは黒一色の画像だ。しかも投稿数は0件。

― これじゃあ、誰なのか見当もつかないよ…。

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第3話:元カレと4年ぶりの再会。「未練はない」と確信していたのに、彼の“ある言葉”に動揺し…

― LINEの相手が想太じゃなかったら、どうしよう。

なにかの罠だったら怖いと思い、今日は、咲と顕彰に立ち会ってもらうことにしていた。

広尾駅前で咲と顕彰と合流し、タクシーに乗り合わせ、想太の最寄り駅だという阿佐ヶ谷に向かう。

15時。3人で指定のカフェで待っていると、数分経ったところで「お待たせ」と声がした。

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第4話:優しかった彼が、急に冷たくなったのはなぜ?4年ぶりの再会で彼が明かしたまさかの理由

― 私のエッセイのせいで、想太が彼女とケンカしてたらどうしよう。

思わずソワソワしてしまう。

「彼女さん、なにに怒ってたの…?」
「希依は気にしなくて大丈夫だよ。電話で呼び戻されるのはいつものことなんだ。どうして、希依がそんなにソワソワするの?」

想太がおかしそうに笑うので、希依は白状する。

「さっき顕彰がね、『あのDMは、想太の彼女が送ってきたんじゃないか』って言ったの」

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第5話:「お前の彼女、奪ってもいい?」友達からのありえないお願いに、男がOKを出した理由とは

『顕彰:希依から聞いたよ。お前、あんなに好きだったのに、なんで希依をふったの?あいつ泣いてたよ。なんで希依をそんな適当に扱うの?クリスマスイブを忘れるって、なに?』

想太は震える声で、その内容を口にした。まるでいま目の前にあるLINEを読んでいるかのように、はっきりと。

諳んじるほどに、そのLINEを繰り返し思い出してきたのだろう。それがありありとわかるから、また希依は泣きそうになる。

「…そうだ、私、咲と顕彰にグループ電話で泣いて訴えた。想太がひどいって…。ごめん」
「ううん、そりゃ訴えたくもなるさ。それでね希依、顕彰のメッセージには、続きがあったんだ」

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第6話:近所の男友達と、2人で飲んだ帰り道。マンションのエントランスに夫が立っていて…

広尾駅から数分のところにある和食居酒屋に行くと、顕彰は先に着いていて、ビールをあおっていた。

「わりい、お先に飲んでた。喉乾いてさ。にしても、2人で会おうなんて珍しいね?」
「そうだね、急にごめんね。咲には断っといたから」

「別に断らなくていいよ」と顕彰は笑った。希依も、ビールを注文する。乾杯をすると、顕彰が身を乗り出した。

「話したいことってなに?ちょっと怖いんだけど」
「実はね、想太と話したの。あの冬のこと。顕彰が、想太に送ったLINEの話」

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第7話:「元カレとは、もうただの友達」既婚者になった女が、そう思って2人きりでお茶したら…

「想太が別れたのって、希依と再会したことと関係あるんじゃない?希依、実は想太となにかあったとか?元に戻りそうになってない?」

決めつけるように言う咲に、希依は珍しくむっとした声色で答えた。

「なんにもないよ。私には正介がいる。想太とは、2人で昔の話をちょっとしただけ」

再会した日に想太と随分長く話し込んだことや、しまいに泣いてしまったことは、咲には内緒にした。咲が「既婚者のくせに未練がましい」と責めてくるのがわかっていたからだ。

バスタブのへりに腰掛けると、咲は低い声で話し始めた。

第7話の続きはこちら

第8話:「これで会うのは最後にしよう」そう言い合った男女が、数分後にとったまさかの行動

「怒られるとは思ったけど、咲以外にしか話せないから相談してるの。だから咲、そんな顔しないでよ」
「…わかったわよ。でも相談ってなに?」
「私、どうしたらいいのかなって」

咲は、冷笑した。

「え?旦那さんのことも好きだけど、想太のことも好きだから、どうしたらいいかって?なんか希依、楽しそうでいいね」

嫌味っぽい言葉が、希依の胸をチクリと刺した。

第8話の続きはこちら

第9話:夫に内緒で元カレに会ってきた女。帰宅後、夫に「あるコト」を気づかれ、冷や汗が…

着替えもせずに寝室のベッドに横になっていた希依は、体を起こし、立ち上がった。罪悪感から無意識に、想太にキスされた唇を指先で拭う。

「寝室にいたんだ。玄関しか電気ついてなかったから、いないのかと思った。ただいま」
「お、おかえり」
「…どうしたの?それ」

正介が、希依をじっと見ながら首をかしげる。希依には、質問の意味が読み取れない。

「え。どうしたのって、なにが?」

第9話の続きはこちら

第10話:「今、君の家の近くにいる」突然LINEしてきた元カレが、お願いしてきた”ある行為”とは

『想太:一瞬でいいから会いたい。いま、広尾にいるんだけど』

想太からのLINEメッセージが、希依の脳内で、柔らかい声色とともに再生される。大学時代から長いこと聞いてきた、優しくて深みのある声で。

― もう会わないって決めてたけど…。

窓の向こう、しきりに振り続ける雪を睨む。

― こんな雪空の下で追い返すわけにはいかないか。

会わないと心に誓ったはずなのに、どうしても放っておけなかった。

第10話の続きはこちら

第11話:親友の住むマンションから、なぜか部屋着姿の夫が出てきて…。女が青ざめた、まさかの事実

「正介こそなんでここにいるの、フ…フライトは?」
「いや、まあ」

正介は混乱した様子で、希依から咲へと目線を移す。咲は、なにも言わずに正介を見つめ返した。3人は三角形を作って立ち尽くし、しばらく沈黙する。

「なんか言ってよ。正介」

希依が促すとようやく正介は、小さな声で口を開いた。

「実は、俺と咲ちゃんは…」

第11話の続きはこちら

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