2021.09.08
ドクターKの憂鬱 Vol.15憂鬱(ゆううつ)―。
まるで曇り空のように、気持ちが塞ぎ込んでしまうこと。
失恋を経験した人だったら、少なからず経験したことがある感情だろう。
”ドクターK”と呼ばれる男も、ある失恋をきっかけに、憂鬱な日々を過ごしていた。
彼はかつて、医者という社会的地位も良い家柄も、すべてを忘れて恋に溺れた。
恵まれた男を未だに憂鬱にさせる、叶わなかった恋とは一体―?
「ドクターKの憂鬱」一挙に全話おさらい!
第1話:「合鍵、もらってもいい?」医師が25歳の彼女と結婚を考えた矢先、実家に猛反対されたワケ
「影山、週末何やってんの?」
短い昼休憩中、病院の食堂でうどんを啜っていると、同僚が声をかけてきた。
「金曜日と土曜日は、群馬の病院でバイト。日曜日は一日中寝ていたい」
僕は、そっけなく返答した。同僚の明石は、東京大学医学部時代の同級生。これまで彼女ができれば報告し合い、時にはお互いの彼女を連れて一緒に旅行したこともある親しい仲だ。
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第2話:「もう恋はしないと、誓ったのに…」34歳医師が惹かれていく、年上女性の魅力とは
「カゲヤマはやらないの?」
はしゃぐ彼らを船上から眺める僕の元に、愛子さんがやってきた。いつの間にか僕を「カゲヤマ」と呼ぶ愛子さんの人懐っこさは、きっと仕事で身につけたものなのだろう。
「水着忘れちゃって…」
濡れても構わないロンハーマンのボードショーツを穿いていたのに、何故かとっさに僕は嘘をついた。きっと彼女は覚えていないだろうけど、これが初めての、僕たち2人きりの会話だったと思う。
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第3話:「銀座は楽しいけど、ほどほどにしろ」友人の忠告を受けても、34歳医師は想いびとを諦められず…
「時間が空くと、ママの顔を見にいらっしゃいますよ」
ふと僕が奥を見ると、愛子さんが政治家の1人と親密そうに、話をしている。僕の隣に座っている女の子が、耳元で囁いた。
「あの先生は、人目もはばからずママに夢中です」
その後に続く彼女の言葉に、僕は店に来たことを、心から後悔した。
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第4話:「私も好きって言ったらどうなるの?」既婚の年上女性が、34歳医師に突きつけた厳しい現実
愛子さんに促され、僕たちもタクシーに乗る。初夏にしては肌寒かった真夜中の銀座。車窓から銀座の街を見ていると、次第に酔いも覚めてきた。
銀座の女はやめておけ、と僕に忠告をしておきながらも、気を使ってくれた明石に感謝した。
彼のおかげで、今僕の隣には会いたいと思っていた人がいる。
無意識に早くなっていく鼓動を彼女に気づかれまいと、僕は必死で話題を探すが、思い浮かばずにいた。
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第5話:人妻に翻弄され、失恋した大病院の御曹司。彼が見合いをした意外な相手は?
この日、僕は親に決められた見合いのために、大阪に向かっていた。
「どうしても、お断りできないお見合いのお話があるの。大阪まで来てちょうだい」
神戸の母から電話があったのは、2週間ほど前のことだ。
「仕事が忙しいから、勘弁してよ」
母が聞く耳を持たないことはわかっていたが、気持ちばかりの抵抗を試みた。しかし、普段は我関せずの父親まで「会うだけ会ってみろ」と言い出し、僕はしぶしぶ見合いを了承した。
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第6話:「もう一度、真剣に恋愛してみたい」離婚調停中の人妻に芽生えた、恋心と躊躇い
最後に1度だけ会って話したいと言った僕の希望で、愛子さんと一緒に品川駅のカフェにいた。
彼女への想いを断ち切るために見合いをしてみたが、やはり気持ちは変わらないことを正直に伝えた。すると、愛子さんは僕に話しておきたいことがあると言う。
「それって、今聞いてもいい?」
せっかちな僕は、それが良いことであれ、悪いことであれ、早く答えを求めてしまった。
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第7話:「金のためならなんでもするのか?」エリート男が夢中になった、女の裏の顔
僕は愛子さんと湘南へドライブに出かけ、2人でランチを済ませたところだった。
「こんなところで先生にお会いするなんて!今日はどうされたんですか?」
電話をしに席を立った愛子さんを待っている僕のほうに、見覚えのある女性がやってきた。
僕に声をかけてきたのは、愛子さんの店の女の子、聖菜だ。彼女は、明石と一緒に店に行った時、卓についていた子だった。
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第8話:「男できた?」久しぶりに妻と会い、驚く男。変わり果てた女の態度に思わず…
夫が若い女性と連れ立って街を歩いていたことを、言いにくそうに伝えてきた人物がいた。それが先日、湘南で偶然出会った聖菜だ。
「実際に私が見たわけじゃないんですけど…。店の女の子たちが噂していましたよ」
私は内心動揺していたが、それを表には出さないよう注意を払って言った。
「あら、そうなの?息子もいないし、私も家を留守にしがち。そのくらいの遊びも時には仕方がないわよ」
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第9話:離婚寸前の42歳妻ににじり寄る中年夫。女を恐怖させた、彼の驚愕の行動とは
「やめてよ!」
いきなり夫に右手をつかまれ、私は手にしていたiPhoneを落とした。
だが力を弱める様子はなく、それどころか夫は口元に気味悪い笑みを浮かべながら、こちらににじり寄ってくる。私は壁側に後退りし、とうとう逃げ場を失った。
― なにをする気…?
「そもそも、僕が家を出て行ったのは、君が相手をしてくれないからでしょう?」
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第10話:資産家の親が取りつけた見合い話を断れない男。見合い相手の女医が見せた、意外な一面に思わず…
見合い相手の加那は、先日連絡があったとおり、昨日から学会で東京に滞在しているようだった。
「パークハイアットにつきました。せっかくなので、お食事しませんか?」
ショートメールで食事に誘われたのは昨日。急な誘いなだけに、断ろうと思えばできたはずだった。だが、なぜか断るという選択肢が、その時思い浮かばなかったのだ。
「お誘いありがとうございます。ホテルまで伺いますよ」
僕は即答していた。
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第11話:「信じてもらえてなかったなんて…」42歳の女をどん底に突き落とした、8歳下のパートナーの発言
私は彼の腕の中に引き寄せられながら、上着のポケットから、ひらひらと紙切れが落ちていくのが見えた。なんとなく気になってそれを拾った時、店名と日付、そして印字されている金額が真っ先に目に入ってきた。
― えっ?今日?それに5万円って…どう考えてもディナーだよね?
思わず修史を見上げると、バツが悪そうな顔をしている。
「病院にいたんじゃなくて、誰かと食事してたのね。それなのに、なんでわざわざ嘘ついたの?」
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第12話:「その結婚、誰が祝福するの?」将来を意識せず、8歳差の女性と付き合う医師が直面した厳しい現実
「お前、愛子さんとは別れたのか?こないだ見合いしてたけど、結局、誰と付き合ってんだ?」
真顔の明石を前に、僕は言葉に詰まってしまう。
「な、なんで知ってんの?」
すると明石は「やっぱりな」と言いながら、ニヤニヤと笑い出す。
「お前、なんか最近色気付いた顔してるから、絶対そうだと思ったんだよ。影山、お前やるときはやるなぁ」
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第13話:「ほかに付き合っている人がいても構わない」二股を容認しても男を繋ぎ止めたい32歳女医の本音とたくらみ
僕は彼女と一緒に過ごす時間の居心地の良さから、今の状況から一歩も踏み出せずにいた。
名古屋で一緒に暮らそうとも言い切れず、かといって明石が言うように別離を選ぶこともできない。
実家と彼女をてんびんにかけ、結局何ひとつ決断できずにいるのだ。冷蔵庫からもう一本ビールを出そうと立ち上がる。
その時。テーブルの上で、スマホが鳴っていることに気がつき、手に取った。画面には「加那さん」と表示されている。
― いったい何の用事だ…?
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第14話:「結婚っていう形にばかりこだわる女はね、男からしたら窮屈よ」42歳女が言い放った言葉の真意とは
「縁談はお断りしたと、彼から聞いてたんだけど…」
アイスティーのグラスを手にしたまま、私は最初の一言を発した。銀座で店を経営しているといろんなことがある。お客様同士のトラブルや苦情…今までその一つ一つを、私はその時の思いつきや経験でどうにか丸く収めてきた。
だから、目の前に座っている女性が修史の見合い相手だということに、大して動揺はしていない。
しかし、この加那という女も、それに負けず平然と返してくる。
第14話の続きはこちら
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