ドクターKの憂鬱 Vol.1

ドクターKの憂鬱:「合鍵、もらってもいい?」医師が25歳の彼女と結婚を考えた矢先、実家に猛反対されたワケ

憂鬱(ゆううつ)―。

まるで曇り空のように、気持ちが塞ぎ込んでしまうこと。

失恋を経験した人だったら、少なからず経験したことがある感情だろう。

”ドクターK”と呼ばれる男も、ある失恋をきっかけに、憂鬱な日々を過ごしていた。

彼はかつて、医者という社会的地位も良い家柄も、すべてを忘れて恋に溺れた。

恵まれた男を未だに憂鬱にさせる、叶わなかった恋とは一体―?


恋を忘れたドクターK、39歳


僕は、もう本気で人を好きになることはない。

20代の時にある女性と別れて以来、ずっとそうだ。あんなに好きになれる人は、きっともう現れないと思っているから―。



「影山、週末何やってんの?」

短い昼休憩中、病院の食堂でうどんを啜っていると、同僚が声をかけてきた。

「金曜日と土曜日は、群馬の病院でバイト。日曜日は一日中寝ていたい」

僕は、そっけなく返答した。

同僚の明石は、東京大学医学部時代の同級生。これまで彼女ができれば報告し合い、時にはお互いの彼女を連れて一緒に旅行したこともある親しい仲だ。

「うちの奥さんの後輩を紹介しようと思ったんだけど、相変わらずつれないなぁ…」

呆れた顔で、明石が続ける。

「お前、鍛えてるからいい体してるし、清潔感もある。ちょっと口下手なところをのぞけば、女にモテるはずなんだけどなぁ」

彼の心配をよそに、僕は答えた。

「別に、女には不自由してないよ」

医師という肩書きを魅力的に思う女性は多く、正直、こんな僕でもその気になれば付き合う女性には困らない。

そこまで時間に余裕がない、というのも本音だ。

僕は消化器外科、明石は整形外科に所属している。要領がいい明石は、忙しい合間を縫いながら独身生活を謳歌し、昨年あっさりと別の病院の看護師と結婚した。

「とりあえずさ、日曜日の夜、来られるなら連絡しろよ」

その時、明石に呼び出しが入る。

「俺、医局から呼び出し来たから行くわ」

彼は急いで食事を終え、大慌てで去っていった。

― まったく…。あいつ、僕が恋愛する気がないってわかってるのに。

僕が”恋”を諦めたきっかけは、今から12年前にさかのぼる。

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