2020.10.04
必要ですか? Vol.12“思い出”はときに、“ガラクタ”に変わる。
ガラクタに満ちた部屋で、足を取られ、何度も何度もつまずいて、サヨナラを決意する。
捨てて、捨てて、まだ捨てて、ようやく手に入る幸せがある。
合言葉は、ひとつだけ。
「それ、あなたの明日に必要ですか?」
「必要ですか?」一挙に全話おさらい!
第1話:婚約破棄からの堕落生活…ドン底の女を救った男の意外な職業は
「僕は魔法使いでもなければ、ハウスキーパーでもありません。お片づけをするのは、僕ではありません。美桜さん、あなた自身です」
雅矢の口調は柔らかく、笑顔は柔和で美しい。ただ、的確で厳しい指摘と、“美桜さん”と下の名前で呼ばれた照れ臭さが相まって、美桜は顔を真っ赤にし、しどろもどろに「あの、その…」と繰り返した。
「雅矢さん。私には、とても無理です。自分の力で、この部屋を片付けるなんて」
美桜がようやくそう声を絞り出すと、雅矢はしばらく美桜の顔をじっと見据え、こう言った。
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第2話:美容整形で顔を変えた女。辛い過去と決別するために「婚約者に見せる」と決めた物とは
「私、子供の頃、お姫様になりたかったんです。でも容姿が悪いせいで、みんなにバカにされて…」
お片づけの依頼を翌日に控え、ヒアリングをかねてうけることになったネイルトリートメント。苦しそうに視線を落としたまま筆を止めた千恵美を見て、美桜は思い切って踏み込むことにした。
「あの…千恵美さんが捨てたいと考えているものって、もしかして…」
美桜の問いかけに、千恵美はおずおずと視線を合わせる。そして、悲痛な決意の滲んだ瞳を向けて、コクリと首を縦に振ったのだった。
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第3話:「これまで、女性と縁がないんです」六本木タワマン在住の成功者の、切実な婚活事情
「会計士の仕事なんて全然華やかじゃないですよ。めちゃくちゃ地味です」
「そういうことを言っているのではありません」
雅矢は今日何度目かのため息を吐くと、半ば諦めたように肩を落とした。
「雅矢さん、今日のお客様は華やかな方なんでしょうね。六本木のITベンチャーの社長ですよ。どんな方なんだろう」
別世界の住人のような依頼者に、美桜は胸を踊らせる。しかし数十分後、美桜の期待は意外な裏切られ方をするのだった。
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第4話:収入を全て使ってしまう女医。ブランド品が散乱する部屋で、声を震わせた理由は
「仕事とプライベートは完全に切り分けています」
待ち合わせ場所の『ザ・ラウンジ/ウェスティンホテル東京』で、依頼人の冴子は言った。
見た目は、テレビドラマに出てくるような”デキる女性医師”の風貌、そのものである。モデル体型の美人で、口調も表情も厳しく、かなり近寄りがたいタイプだと、美桜はさっそく怖気付いた。
「僕も、同じです。公私混同したくない気持ち、よくわかりますよ、冴子さん」
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第5話:インスタは偽りばかり。家から出られなくなった元エリート証券ウーマンの苦しみとは
これまで、何軒かの依頼を雅矢と一緒に行う中で、実感していることがある。
今まで出会った依頼人は全員社会的にも地位があり、仕事も成功している人ばかりだ。一様に身なりもよく、散らかった部屋で鬱々と暮らしているなんて、とてもじゃないが誰にも思われていないだろう。
―外向けの顔が、本当の自分とかけ離れているのって…実は結構、普通のことなのかも。
まさに、美桜自身もそうだったのだから、強く実感している。そして案の定。今回の依頼人の女性は、インスタの中に広がる世界からは想像もできない、ひきこもり生活を送っていた。
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第6話:「夫の海外赴任中に、寂しすぎて…」豪邸に残された妻が取ってしまった予想外の奇行
「ご依頼人の前でパフェは食べませ…」
そう、雅矢が否定の言葉を言い終わる前に、二人に声をかける「あの…」という言葉が耳に届き、美桜と雅矢は同時に振り向く。
「徳重雅矢さんですよね。僕が依頼人の、綿貫翼です。よろしくおねがいします」
声の主の姿を見て、二人は思わず言葉を失う。姿勢良くぺこりと頭を下げたその声の主は…
小学生と思われる、少年だったのだ。
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第7話:「俺なしじゃ生きていけないだろ?」弁護士の夫とのモラハラ生活から、妻が目を覚ました瞬間
「結婚して10年が経ちますが、これまでずっと弁護士の夫からひどいモラハラを受けてきました」
何かと理由をつけては、友香里は働くことも、遊びに行くこともほとんど許されず、極め付けは子供を望むことさえ許されなかったという。
「そんな…ひどすぎます…」
美桜は、思わずそう呟いていた。友香里は頷くと、意外な言葉を続けた。
「でも、自分がひどい目に遭っているんだとやっと気づいたのは、ここ1〜2年のことです。それまでは“バカな私が悪い”ってずっと思っていました」
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第8話:結婚願望ナシの男に「家庭を持ってもいいかも」と思わせた、未亡人の重すぎる言葉
この館の女主人・峰子は少女のようにいたずらな笑顔を見せると、口元に手を当て、ふふふと笑った。
美しい白髪と、淡いブルーのワンピースが、この庭の緑によく映える。きれいに整えられた爪には淡いピンク色のマニキュアが施され、豪華なサファイヤの指輪が木漏れ日に反射していた。
「立派なお庭ですね。バラを見事に咲かすのは大変なことだと聞いたことがあります。峰子さんがお世話をしているのですか?」
雅矢の紳士的な振る舞いと、天性のレディーである峰子のやりとりは実に麗しい。峰子はしゃんと姿勢を正し、愛おしそうに庭を見つめた。
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第9話:「これが、略奪女の末路です」二番手にしかなれない女の、屈折した日々とは
忘れることのできない、「倉持愛美」という名前。彼女は、美桜の監査法人時代の後輩であり…。
「この依頼人は、私の元婚約者を奪った人です」
声が震え、うまく息ができない。言葉にすると当時の記憶が蘇り、動悸がした。
雅矢は無言で美桜のことを見つめると、意外なことを言い放った。
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第10話:「僕のコレクションを、捨てようとするなんて」収集家の夫と潔癖の妻。衝突する夫婦の結末は
「お片づけをするにあたって、絶対にしてはいけないことが一つだけあります」
雅矢は、青ざめた顔の果穂に向かってきっぱりと言った。
「他人の物を勝手に捨てること。たとえ家族でも、それは断じて許されることではありません」
「それがゴミやガラクタでもですか?」
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第11話:元カノの痕跡まみれの同棲生活。キレた彼女の怒りを鎮める方法とは
依頼人が同棲をはじめたばかりのカップルと聞いて、「幸せのおすそ分けをしてもらおう」と期待していた美桜の心は、早速裏切られたようだ。里奈と洋一が声を荒げるたびに、雅矢と美桜は目を合わせて苦笑いするのだった。
「もう、別れる!元カノに未練タラタラの洋一とは暮らしていけない!」
「過去に囚われてるのは里奈の方だろ!婚約破棄したければ好きにしろ」
“婚約破棄”という響きを聞くと、その経験のある美桜はどうしてもぎくりとしてしまう。それに気づいてか、雅矢はちらりと美桜に視線を送った。
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