2020.01.03
浪費の女王 Vol.13買い物は、魔法だ。
流行の服と良質な宝飾品を買えば、美しい自分になれる。
贅沢なエステや極上のグルメにお金を費やせば、優雅な自分になれる。
女は買い物という魔法を使って、“なりたい自分”を手に入れるのだ。
ならば、どれだけ買っても満たされない女は一体何を求めているのだろう―?
2020年も頑張りましょう。昨年2019年のヒット小説総集編、「浪費の女王」一挙に全話おさらい!
第1話:物欲に抗えない32歳・年収1,200万の女。買い物を巡って彼との間に流れた、不穏な空気
年収1,200万円は、湯水のようにお金を使えるほどの額とは言えないかもしれない。でも、気に入った場所に住み、美味しいものを食べ、ときどき贅沢な「自分へのご褒美」を買うのには十分な金額だ。
―欲しいものはまだまだたくさんある。もっと素敵な自分になるためには、お金を使うことを惜しんでちゃダメよね。
ポジティブな物欲が自分の原動力だということを、紗枝はよく理解している。
この時の紗枝にとってはまだ、買い物は“幸せになるための魔法”だった。
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第2話:彼氏へ“禁断のお願い”をしてしまった32歳。何をしても満たされず、焦りを募らせた女の悲劇
自分を奮い立たせる“買い物の魔法”が効かない状態では、どれだけモニターとにらめっこをしても仕事に身が入らないのだった。
紗枝の心をここまで憂鬱にさせているのは、2週間前に勃発した慎吾との冷戦が原因だ。
慎吾の不機嫌を直すために大量に購入したルームウェアが、思いがけずすれ違いを深めてしまったのだ。
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第3話:「私の金銭感覚はおかしいの?」買い物が生きがいの女に、彼氏から押された“異常”の烙印
「お金、貸してもらえないかな…?」
その言葉を発した途端、紗枝を抱きしめていた温かな腕の力がゆるんだ。あけすけな言い方で慎吾の機嫌を損ねたと感じた紗枝は、慌てて説明を重ねる。
「30万、ううん、20万円。今度の給料日まででいいの。再来週には絶対返すって約束する。取り置きしてる洋服が2つあるのにカードが止まっちゃって…。それから、週末にはエステの予約もしてて…」
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第4話:超富裕層の男からの、甘く危険な誘い。「浪費をやめる」と誓った女の価値観が揺さぶられた日
予想外の事態に紗枝が言葉を詰まらせていると、喜多川と名乗った男は腕時計の袋を強引に押し付けて言った。
「とにかくさ、買ってあげたくなっちゃったんだから貰ってよ。本当にいらなかったら来週末にでもリッツカールトンの『タワーズ』に返しに来て。僕、日曜は大抵そこでブランチしてるから」
「え?え?ちょっと…」
「じゃ」と踵を返して鷹揚に立ち去る喜多川を、追いかけている時間はない。憧れの高級腕時計を手にしながら、紗枝はただその場に立ち尽くすしかなかった。
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第5話:振られて悲しいはずなのに、心の隅ではホッとしてる…。複雑な思いを抱えた女の事情とは
一時は危ぶまれた慎吾との関係も、紗枝が浪費をやめてからはすこぶる上手く行っている。2人で休日デートを楽しめるくらい関係性が修復できたことに、紗枝は改めて安堵の吐息を漏らした。
このまま、平穏な時が続きますように。そう願って目を閉じた時、寝室に向かった慎吾から大きな声で呼びかけられた。
「ねぇ、俺のあの春物のパーカーどこにしまったっけ!?」
「あ、それならクローゼットの奥の方に…」とそこまで言いかけた時、紗枝の体に戦慄が走った。
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第6話:男に買わせた高級品で、辛い現実から逃避する女。何事にも動じないリッチな彼が、声を荒げた理由は
「最低限の荷物だけ取りに帰って、あとは買えばいいよ」
ホテルのルームキーを受け取った紗枝はその言葉に従い、喜多川の運転するテスラの助手席に乗って自宅へ一時帰宅していた。
すでに夕方になっていたが、慎吾の帰ってきた形跡は無い。今朝別れ際に吐き捨てられた「しばらく帰らない」という言葉は、本当のようだ。
―私たち、本当に別れたんだ…。2ヶ月前にこの部屋に入居した時は、まさかこんなことになるなんて思いもしなかった。
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第7話:「ここには入らないで」と男から禁じられていた部屋で、女が見てしまった秘密とは
なぜこのような扱いを受けなければいけないのか、紗枝には本気で分からない。
―今の私は、完璧なはず。なのに、どうして…?これだけ着飾って、素敵な自分になれているはずなのに、嘲笑うような周囲の反応はなんなの?
買っても買っても、満たされない。それどころか紗枝の心は、慎吾に節制を強いられていた頃よりも激しい焦燥感や虚しさに苛まれているのだった。
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第8話:「もっと買え」。女に買い物ばかりさせる男の目的とは?過去を隠していた男の、悲しい秘密
歩み寄ってきた喜多川は紗枝の手からボロボロの星の王子様を受け取ると、パラパラとページをめくる。
「これはね、僕が子供の頃に読んでいたものを、娘に譲り渡した本なんだ。宝物だと言ってたのに…あいつらはゴミとして置いていったよ。なんでだか分かる?」
静かに首を振る紗枝に対し喜多川は、まるで罪を懺悔するかのような悔恨の表情で打ち明け始めた。
「僕が…金を出し惜しんだからだよ」
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第9話:「私もう、何も貰えません…」リッチな彼氏に散々貢がせた女が一転、贈り物を断るそのワケは
「喜多川さんが本当に愛されたい、愛したいのは…多分、私じゃないからです。私がどれだけ喜多川さんに感謝をしても、喜多川さんの心はきっと満たされないと思う」
慎吾と別れたその足で、喜多川の元に転がり込んだのが約2週間前。それから今日まで喜多川は、一度たりとも紗枝に恋人らしい関係を求めてこなかった。
紗枝はそれを、喜多川の紳士的な配慮だと思っていた。しかし、おそらく違う。喜多川が求めていたのは、恋愛関係ではない。本当に求めていたのは、娘との親子の愛情だったのだろう。そう考えた紗枝は、言葉を続ける。
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第10話:忘れられない元カレに呼び出された夜。金銭感覚の違う2人が本音をぶつけ合い、選択した未来とは
あの時と同じカップを手に持ちながら紗枝は過去に思いを馳せる。そしてふと、カップを見つめる自分の視界が潤んでいることに気がついた。
あの頃に戻れたら。これ以上こうしていたら泣いてしまう。確信した紗枝は、慌ててカップを置いて立ち上がった。
「荷物を詰めてくるね」
そう言ってその場を去ろうとする紗枝を、すかさず慎吾が引き止める。
「ちょっと待って。話があるんだ」
第10話の続きはこちら
番外編:彼女の年収は、自分の2倍。格差恋愛に悩む卑屈な男がやってしまった、最悪の行為
千葉へと向かう総武線の揺れに身を任せながら、慎吾は今朝終わってしまったばかりの紗枝との関係を振り返っていた。
星の見えない夜を走る電車の窓が、鏡のように慎吾の姿を映し出す。カッとなってつい言い放ってしまった別れの言葉は、慎吾自身の胸にも激しい痛みを伴いながら突き刺さっている。
でも、きっとこれで良かった。紗枝に借金を申し込まれた時、あんな事を考えてしまった時点で…
関係を続けることは難しかったのだ。
番外編の続きはこちら
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