浪費の女王 Vol.7

「ここには入らないで」と男から禁じられていた部屋で、女が見てしまった秘密とは

買い物は、魔法だ。

女は買い物という魔法を使って、“なりたい自分”を手に入れる。

ならば、どれだけ買っても満たされない女は一体何を求めているのだろう―?

32歳にして年収1,200万円を稼ぐ紗枝は、稼いだお金を存分に買い物に使う「カッコイイ女」のはずだった。

しかし、紗枝の向上心にも似た物欲は恋人・慎吾とのいさかいをキッカケに徐々に歪み始めた

超富裕層の個人投資家・喜多川に押し付けられた超高級腕時計が招いた誤解によって、紗枝は慎吾から別れを告げられてしまう

慎吾を失った悲しみから浪費を肯定してくれる喜多川の元へと向かった紗枝は、与えられたカードで好きなだけ買い物をすることを許されるが…。

紗枝の欲望の、行き着く先は?


「紗枝さん、最近どうしちゃったんですか?なんだかすっごく綺麗になりましたよねぇ」

ランチをテイクアウトするため『クリスプ・サラダワークス』へと連れ立つ道中、後輩のエミちゃんが紗枝の頭からつま先までを舐め回すように見て言った。

喜多川の財力を自由にするようになって約2週間。これまでも決して質素ではなかった紗枝のファッションは、段違いにレベルアップしたものになっていた。

新作のバーキンを携え、ヴァレンティノのトレンチコートを肩から羽織り、首元にはブシュロンのキャトルクラシックのペンダントが揺れている。

それだけではない。豪奢なブランド物で飾り立てられた紗枝の体その物も、以前とは全く違う様相を呈していた。

こまめに通うリンパドレナージュに、ヘアサロンでの丹念なトリートメント。購入した電気バリブラシで毎日血行を促している肌は陶器のように艶めき、手入れが行き届いたネイルはそれ自体が10粒の宝石のようだった。

贅の限りを尽くした今の紗枝は、間違いなく32年間の人生の中で最も美しい。

だが、高まる美貌と反比例するかのように、紗枝の心は鉛のような重みを増していた。

紗枝は、美貌の秘密を知りたそうにしているエミちゃんに、「そう?ありがとう」と何の感情もこもらない機械的なお礼を返す。

知っていたのだ。エミちゃんたちが、紗枝の事をどのように噂しているかを。

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