浪費の女王 Vol.2

彼氏へ“禁断のお願い”をしてしまった32歳。何をしても満たされず、焦りを募らせた女の悲劇

買い物は、魔法だ。

流行の服と良質な宝飾品を買えば、美しい自分になれる。

贅沢なエステや極上のグルメにお金を費やせば、優雅な自分になれる。

女は買い物という魔法を使って、“なりたい自分”を手に入れるのだ。

ならば、どれだけ買っても満たされない女は一体何を求めているのだろう―?

32歳にして年収1,200万円を稼ぐ紗枝は、稼いだお金を存分に買い物に使う「カッコイイ女」であるはずだった。

そんな紗枝の向上心にも似た物欲は、メーカー勤務の堅実な恋人・慎吾とのいさかいをキッカケに徐々に歪み始める…


「紗枝さん、今度はヴァンクリですか?素敵です〜!」

職場の後輩のエミちゃんが、紗枝のヴィンテージアルハンブラのピアスを目に留めてうっとりとため息をつく。

まだ20代だが帰国子女で気が回るエミちゃんは、いつも紗枝の“戦利品”に気づいて賞賛の言葉をくれるのだ。

普段ならこうした賛辞を受けることで紗枝の心は喜びに満たされるのだが、今日はどうもそんな気になれない。

鮮やかなマラカイトのグリーンが気分を明るくしてくれるかも、と期待して購入したピアスだったが、残念ながら今のところその効果はないようだ。

―ずっと欲しかったピアスだったのに、買っても気分が晴れないなんて…。

空元気で「ありがとう」と言葉を絞り出すと、紗枝は中断した仕事に再び取り掛かる。しかし、自分を奮い立たせる“買い物の魔法”が効かない状態では、どれだけモニターとにらめっこをしても仕事に身が入らないのだった。

紗枝の心をここまで憂鬱にさせているのは、2週間前に勃発した慎吾との冷戦が原因だ。

慎吾の不機嫌を直すために大量に購入したルームウェアが、思いがけずすれ違いを深めてしまったのだ。

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