200億の女 Vol.24

1億、そして5億…男と共に大金を使い始めた女。破滅へ向かう時、裏で暗躍する人物の思惑

騙されたのは女か、それとも男か?
「恋」に落ちたのか、それとも「罠」にはまったのか?

資産200億の“恋を知らない資産家の令嬢”と、それまでに10億を奪いながらも“一度も訴えられたことがない、詐欺師の男”。

そんな二人が出会い、動き出した運命の歯車。

◆これまでのあらすじ

1度は、詐欺師の罠をかわしたかに見えた智だったが、詐欺師は夫の裏切りをきっかけに、夫へ智が好きだと告白。智はついに夫と離婚してしまう。さらに詐欺師は2人きりのアフリカの夜、智に初めてのキスを。そして2人はついに恋人関係になったがそれを知った詐欺師の元カノが嫉妬に狂い、警察へ出向く…。


―5億、寄付したのか。

神崎潤一郎は、兼六堂の社長室で受けた報告の電話を、驚きを隠せないまま切った。智が資産の現金化に動いているようだ、という報告も受けている。それは数億の話ではないようで、十数億か、それ以上になるのか分からなかった。

―自分の資産の使い道なんて、全く興味がなかった智が…。

父であり社長であるとはいえ、智個人が管理する資産の使い道を、密かに知ることはできない。部下には可能な限り金の流れを調べるよう命じたが、寄付される金は秘匿性も高く、なかなか難しいことが分かっていた。

小川弁護士と社内で頻繁に打ち合わせをしているという報告も受けている。娘に影響を与えたのであろう、小川の顔を思い出すと、忌々しい気持ちが込み上げてくる。

小川の雇い主である田川弁護士が、いつもとは別人のように殊勝な態度で、潤一郎の元に頭を下げにきた時、潤一郎は迷った挙句、田川法律事務所を切ることはやめた。だがそれは小川の暴挙を許し、受け入れたからではない。

父親の前で、既婚者の娘に愛の告白をするなどリスクしかないバカげた行動だ。だが結果的にその後小川は、人を信頼することが苦手な智の信頼を得た。そして、その小川を、兼六堂に招き入れたのは田川だ。ならば…

―田川を…近くで泳がせてみよう。

だから、智が啖呵を切って社長室を出て行ったあの日から2か月が過ぎた今も、田川は兼六堂に出入りをしている。

その間に、大輝から離婚を報告された。さらに彼は退職を希望して、これまでの礼と共に、何年かかったとしても必ず借金は返します、と頭を下げた。潤一郎は返す必要はないと言ったが、どこか吹っ切れた様子の大輝は頑なだった。

自分の前にいる時は、いつも顔が強張り萎縮しているように見えた大輝の変化に、潤一郎は少し驚いたが、潤一郎にも譲れないことがある。

―大輝くんには、智の側にいてもらう。

退職については、智を交えて話し合うまでは結論を出せない、と大輝を帰らせた日のことを思い出しながら、潤一郎はテーブルの上に置きっぱなしになっていた、探偵からの封筒を持ち上げた。

『小川親太郎に対する調査報告書』

小川弁護士の経歴に嘘がないことは、最初に雇う時に調査済みだった。だが今度は『全て』を調べるように指示した。

封筒から紙と写真の束を取り出す。その中に混じった智と小川の親密な様子は、何度見ても潤一郎を不快にさせる。

苦々しく思い、潤一郎は視線を書類に移した。

それは、小川の動向に張り付いた探偵が、日誌のように事細かに記したもの。中の一文を、潤一郎は声に出して読み上げてみる。

「小川親太郎の近辺で、警察が動いている気配。捜査2課の刑事だが、捜査目的や内容は今のところ不明」

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