2018.12.06
想定外妊娠 Vol.14「結婚なんかしない」
そう、言い張っていた。
今の生活を手放すなんて考えられない。自由で気まぐれな独身貴族、それでいいと思っていた。
仕事が何より大事だと自分に言い聞かせ、次々にキャリア戦線を離脱してゆく女たちを尻目に、私はただひたすら一人で生きてゆくことを決意していたのに−。
ある日突然、想定外の“妊娠”に直面した木田千華、32歳。一生独身主義を豪語していたはずだったキャリア女子の人生が、大きく動き出す。
「想定外妊娠」一挙に全話おさらい!
第1話:一生独身だと思っていたのに。突然妊娠が判明した、32歳キャリア女子の運命
トイレを飛び出して、照明が煌々と照らすリビングで確かめてみる。だけど、縦線はくっきりと刻まれたまま当然消えてはくれなかった。
見間違いなんかじゃない、夢であるはずもない。その事実を突きつけられると同時に、私は携帯電話をカバンから引っ張り出して親友の舞子に電話をかけた。
混乱に溺れながら、長い呼び出し音の後にやっと電話に出た舞子に告げる。
「私、妊娠した…。」
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第2話:「順番、守ってくださいよ」。未婚で妊娠した女に突き刺さる、世間からの冷酷な視線
「別れた、って…、どういうこと?」
舞子の刺すような視線が痛い。
妊娠判明により、私がここまで動揺し、パニックに陥った理由。それは、私自身、一生結婚なんてするつもりがなかったから。ましてや、妊娠なんて想定すらしていなかった。
だけどそれ以上に大きな理由は、子どもの父親であるはずの男・ショーンとの恋が、すでに終わっていたからだったのだ。
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第3話:「父親は、あなたよ」。別れた男に真実を告げる、32歳キャリア女の決心
収入も貯金も余裕があるとは言え、年中こんな激務の仕事でいいのか、産休育休を取ったところで復帰できるのか。福岡の実家に安易に頼ることはできないし、問題は山積みだ。
それに、考えることと言えば…ショーンだ。どちらにしても彼には知らせたほうがいい、と親友の舞子は言っていた。
「妊娠ってね、オンナだけのものじゃないのよ。半分は男が責任を持たなきゃいけないの。結婚するにしろ、しないにしろ、責任は半分。だから連絡は必ずしなさい。」
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第4話:「酒、飲めよ」。妊娠を誰にも言えないキャリア女。絶体絶命のピンチを救った意外な助け舟
ウォークインクローゼットでも息を止めなければ、服を選ぶことさえできない。なんとか身支度を整え、会社に向かう途中に思い出すのは昨日の夜のこと。私は一体ショーンに何を期待していたのだろうか。
ショーンの瞳が陰り、明らかな戸惑いを見せたことが予想よりも遥かにショックだったのだ。会社に着いてからも、昨夜の出来事を思い返しては一人で傷ついていた。
時計は昼をまわり、吐き気はあるものの空腹感に負け、唯一口にできそうなゼリーでも買いに行こうと席を立った時だった。
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第5話:「仕事であなたの代わりは、いくらでもいる」。妊娠2カ月の未婚女が気付いた残酷な真実
「元彼の反応は妥当だと思うわよ。だって、不妊だと思っていたわけでしょう?しかも別れていたなら尚更ね。今、千華ちゃんがしていることって、ただ傷つきたくないから逃げ回っているだけじゃない?」
先輩の言葉に、ぐうの音も出ない。ショーンと再会した夜だって、私は傷つきたくない一心で逃げ出してしまったのだ。
「…確かに、そうですね。仕事のことも、ショーンのことだって、まだ…。」
「仕事ってね、残酷だけど代わりはいくらでもいるの。私もそうだった。」
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第6話:「2人目は、まだ?」結婚生活に苦しむ既婚女の、未婚女子への嫉妬心と“親友”の仮面
「舞子。私、妊娠した。」
千華からそう告げられた夜、私の感情の大部分を”怒りと嫉妬”が占めていた。
―なんで、千華なの…。
けれど、この本心を千華に悟られてはいけないと平静を装い、混乱する彼女をひたすら励ましたのだ。それが私にとっては拷問のように辛いことなのだと、千華は知らない。
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第7話:「みっともないわねぇ」。“授かり婚”に浮かれる32歳を、一瞬で絶望のどん底へ突き落とした強烈な女
左手の薬指に指輪をするなんて、ほんの少し前の私なら想像もしていなかった。
予測不能の吐き気に襲われ、情緒が不安定になる度に、私はその指輪を触るようになっていた。 自分が幸せの絶頂にいるのだと、この指輪は思い出させて、安心させてくれる。
だけど、この日ばかりはどんなに指輪に触れてもこの不安を和らげることは出来なかった。
ダイニングでのプロポーズから数日後。いよいよ、ショーンの母親に会う日が来たのだ。
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第8話:“結婚”と“妊娠”の順序が、逆なだけなのに。信頼していた男の態度が180度豹変した日
「…木田、徳永には早めに言っておけよ。」
「え?」
「マネージャーであるお前が、きちんと後輩の為に道を作ってやるのも仕事のうちだ。こういう準備は、早いほうがいい。特に徳永みたいなタイプは。」
好意的な反応を見せていた部長だったが、部下である徳永の名を出すと、その表情は固くなった。
西日の差し込む会議室で、部長は遠くを見つめていた。その時彼が一体何を懸念していたのか、私は直後に知ることとなる。
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第9話:ジワジワと、社会から切り離されていく。キャリアを捨てきれぬ妊娠3︎ヶ月の女を襲った、突然の悲劇
「トツキトオカなんて、あっという間ね…。」
妊娠をきっかけにダウンロードした妊娠カレンダーのアプリを眺めながら、迫られる決断を先延ばしにすることは不可能だと悟る。
—次の検診までにショーンと相談して決めよう。
だが、肝心のショーンも相変わらず仕事に忙殺され、不定期な電話連絡を待つしか無い状態だ。そして、私が背負っていた問題はそれだけではなかった。
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第10話:家族のぬくもりを知らない男が、父になる覚悟を決めた瞬間。彼が目に涙を浮かべたワケ
会社で倒れた日、ショーンにすぐ連絡を入れたが、返信が帰ってきたのは真夜中を過ぎた頃だ。
折返しの電話をかけ事情を説明するなり、ショーンは慌てふためき「すぐに帰る!」と大騒ぎしていた。以来、毎日のように電話をくれるようになった。産院についても結局、ショーンが駆けつけやすいようにと東京のクリニックに決めた。
そして、数日の間、点滴を打って落ち着いたことと、しばらく実家に帰ろうと思っていることを告げると、彼は「いい機会だから俺も行く!」と、出張先からそのまま福岡に来ると宣言したのだった。
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第11話:親友の妊娠を、祝ってあげられない…。望んでいた未来を手にすることが出来なかった女の悲痛な叫び
—こんな大変なのね、母親になるって。
そんな事を思いながら、青果コーナーをぐるぐる回っていると、背の高い女性の姿が目に入った。
髪は顎のラインまでバッサリ切り落とされていたけれど、見慣れたその姿が誰なのかはすぐにわかった。
「…舞子?」
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第12話:「幸せな妊婦」を直視できない。“理想の母親”を演じ続けた女が、親友ともう会わないことを決めた理由
「ごめんね、千華。こんな話して。でも、洗いざらい話したらスッキリしちゃった。」
「舞子…。」
「千華って不思議ね…、この歳になって何でも話せるって、すごいわ。誰にも言ったことなかったのに。」
舞子はようやく笑顔を見せたが、その表情はどこか悲しげにみえる。
「でもね、だからこそ、しばらく会わないほうが良いわ。それがお互いの為だから…。」
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第13話:妊娠が原因で、亀裂が入った部下との関係。32歳女がキャリアを手放すことを決意したワケ
ただでさえ年末商戦に向けてのキャンペーンがいくつも走っている今、急な出張や残業が続き、徳永もチームも疲弊しているのは火を見るよりも明らかだった。
確かに、そんな状況で徳永にこの件を一任するというのは、身勝手なことなのかもしれない。けれど、私はこの仕事を心から愛しているし、思い入れがあるからこそ信頼できる徳永に託したいと考えているのだ。
「ねえ、徳永くん…。」
そして私は、数ヶ月の間ずっと伝えられずにいた事を徳永に明かした。
第13話の続きはこちら
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