想定外妊娠 Vol.8

“結婚”と“妊娠”の順序が、逆なだけなのに。信頼していた男の態度が180度豹変した日

「結婚なんかしない」

そう、言い張っていた。

今の生活を手放すなんて考えられない。自由で気まぐれな独身貴族、それでいいと思っていた。

仕事が何より大事だと自分に言い聞かせ、次々にキャリア戦線を離脱してゆく女たちを尻目に、私はただひたすら一人で生きてゆくことを決意していたのに―。

”想定外妊娠”に戸惑っていたのもつかの間、千華ははじめてのエコーで心を揺さぶられ、たとえ独身だろうと産む決意を固める。

元カレ・ショーンとすれ違い続けていた千華は、憧れの先輩から言われた一言をきっかけに自分の本心に気づき、ついに彼と結ばれた。

しかし、ショーンの母・妙子の反応は、千華を絶望の底へと叩き落とすものだった。その頃、会社ではー。


「木田が…、ついに結婚か。しかも妊娠まで。」

私は1番小さな会議室に、部長を呼び出していた。

なかなか収まる気配のないつわりは、業務に支障をきたす寸前のところまできていた。これ以上隠し通すことは不可能だ。

どんな困難も乗り越えてみせると誓ったものの、目の前に座る部長に”オメデタ婚”を報告した私は、罵倒されるのではないかと恐れ、身構えている。

だが、次にかけられた言葉は私が想像していたものとは真逆だった。

「そうかあ、めでたいなぁ!ウチの奥さんも去年、妊娠してつわりもひどかったから、随分早く産休を取ったんだ。木田は大丈夫なのか?」

本気で心配そうな顔をする部長に驚いていると、それを察知したように彼は続けた。

”三好アリサ”の件もあったから気に病んでるのか?妊娠ってのはな“おめでた”って言葉の通りめでたい事なんだ。とにかく自分の体調を優先しろよ。」

「部長、ありがとうございます。ご迷惑おかけしますが…。」

よろしくお願いします、と私が言い切る前に、部長は私の言葉を遮る。

「…木田、徳永には早めに言っておけよ。」

「え?」

「マネージャーであるお前が、きちんと後輩の為に道を作ってやるのも仕事のうちだ。こういう準備は、早いほうがいい。特に徳永みたいなタイプは。」

好意的な反応を見せていた部長だったが、部下である徳永の名を出すと、その表情は固くなった。

西日の差し込む会議室で、部長は遠くを見つめていた。その時彼が一体何を懸念していたのか、私は直後に知ることとなる。

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