想定外妊娠 Vol.9

ジワジワと、社会から切り離されていく。キャリアを捨てきれぬ妊娠3︎ヶ月の女を襲った、突然の悲劇

「結婚なんかしない」

そう、言い張っていた。

今の生活を手放すなんて考えられない。自由で気まぐれな独身貴族、それでいいと思っていた。

仕事が何より大事だと自分に言い聞かせ、次々にキャリア戦線を離脱してゆく女たちを尻目に、私はただひたすら一人で生きてゆくことを決意していたのに―。

”想定外妊娠”に戸惑っていたのもつかの間、千華ははじめてのエコーで心を揺さぶられ、たとえ独身だろうと産む決意を固める。

元カレ・ショーンとすれ違い続けていた千華は、憧れの先輩から言われた一言をきっかけに自分の本心に気づき、ついに彼と結ばれた。

だが真っ先に報告した親友・舞子は浮かない顔だった。さらに、ショーンの母・妙子は辛辣な言葉で千華を絶望の底へと叩き落とし、信頼していた部下・徳永さえも冷淡な反応で…。


「なしそげん大事なこと、もっとはよ言わんかったんね!」

母の大声が電話越しに響き、私は思わずスマホを耳から遠ざけた。

福岡の実家に電話をかけ、私はついに「妊娠して、結婚することにした。」と母に告げたのだ。

「はあー、あんた体調は?」

「日によるかな、まだ落ち着かなくて。」

私がそう言うと、母は興奮気味に「入籍する前にショーンと一緒に顔を見せろ」とまくしたてる。

母の言葉を遮り「仕事があるから、切るね」と私が言うまで、母は延々と喋り続けていた。

「福岡、遠いなぁ…。」

ぼんやりとリビングの天井を見上げながら、この先のことを考えていた。



「産院は10週目までに決めてくださいね、当院だと枠も少ないので早めにおっしゃって下さい。もしご実家での出産を希望されているなら…。」

クリニックで先生に言われた言葉が頭をぐるぐる巡っている。

—実家かぁ…。

東京のど真ん中で、両親のサポートもなく出産することにためらいがないと言えば嘘になる。

浅野先輩の「いろんな人を巻き込んで子供は育つ」という言葉の通り、妊娠中から様々な人の助けがないと出産すら乗り越えられないと痛感していた。

「トツキトオカなんて、あっという間ね…。」

妊娠をきっかけにダウンロードした妊娠カレンダーのアプリを眺めながら、迫られる決断を先延ばしにすることは不可能だと悟る。

—次の検診までにショーンと相談して決めよう。

だが、肝心のショーンも相変わらず仕事に忙殺され、不定期な電話連絡を待つしか無い状態だ。

そして、私が背負っていた問題はそれだけではなかった。

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