恋と友情のあいだで~廉 Ver.~ Vol.17

従順だった妻が急に豹変した理由。夫は知る由もない、平日昼間の“ある出来事”とは

−なぜ今、思い出すのだろう?

若く、それゆえ傲慢だった同級生・相沢里奈の、目を声を、ぬくもりを。

これは、悪戯に交錯する二人の男女の人生を、リアルに描いた“男サイド”のストーリー。

一条廉は3歳年上の美月と結婚し、駐在先のシンガポールで新婚生活をスタートさせる。

しかしその心には、特別な思いを抱く大学時代の同級生・里奈がいた。

腐れ縁のように少しずつ距離を縮めていくふたりはやがて一線を超え、廉は情熱のまま「結婚しよう」とまで口走るが、すぐに現実を突きつけられてしまう。

日本に本帰国した廉は、再び美月と穏やかな生活を取り戻すが、里奈が妊娠したことを知った動揺から妻の地雷を踏んでしまう


美月:ぷつり、と切れた糸


それは、糸が切れるように一瞬のことだった。

−別に、子どもとかいなくてもよくない?−

廉がそう口にしたとき、私の胸は刹那の間、強く痛んだ。しかしその次の瞬間、突如として何も感じなくなってしまったのだ。

あまりにも痛すぎて、感覚が麻痺してしまったのかもしれない。もしくは、疲れて果ててしまったか。

私はもうずっと、廉の前で無理ばかりしていたから。

−廉の子どもを授かりたい−

それは、よそ見ばかりしている男の妻となった私にとって、唯一ともいうべき願いだった。しかしその情熱ももう、消えた。

私は空っぽの心のまま、廉に弱々しい笑顔を向ける。

「終わりにするって、何を」

私が激昂するのを恐れていただろうに、廉は予想外の反応に戸惑っているらしい。

震える声でそう尋ねるので、私は子どもに言い聞かせるが如く、彼に答えてあげた。

「何って、子どもの話でしょ?廉がそう言うなら、もうやめましょうって言ったのよ」

私の言葉に、わかりやすく安堵の表情を浮かべる夫。

…そんな彼をぼんやりと見つめていたら、私の頭にふと、 “昼間の出来事”がプレイバックされた。

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