恋と友情のあいだで~廉 Ver.~ Vol.16

「子どもができたの」まさか、そんな。婚外恋愛に溺れた男が突きつけられた、信じがたい現実

妻の豹変


その夜、自由が丘の自宅に着いたのは結局、日付が変わろうとする頃だった。

美月はすでに寝巻きに着替えていたが、僕の帰りを起きて待っていた。食事を無駄にしたことを責めるでもなく、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。

促されるまま適温に調節された浴槽に浸かると、今宵、未祐から聞かされた事実がどっと覆いかぶさってきた。

耐えきれず、大きなため息を吐く。

「子ども、か…」

思わず声に出したら、苦々しい味がした。頭に美月の顔が浮かぶ。

おそらく今頃、妻はベッドで僕がくるのを待っているだろう。しかしさすがに今夜は…どうしてもそんな気になれそうもなかった。

それに僕と美月はもう随分と長い間、こうして子作りに励んでいる。

しかしなかなか結果が出ない。こればかりは授かりものだとはわかってはいても、度々やるせない感情に襲われるのを止めることはできない。

…先に言い訳をするようだが、僕としては、永らくそんな葛藤を抱いていた上での、発言だったのだ。


「美月、あのさ…。別に子どもとかいなくてもよくない?二人の生活だって、充分に幸せだし」

隣に寄り添う妻を刺激しないよう、最大限に気も遣ったつもりだった。

しかしその言葉を聞いた美月は、ピクリと身体を震わせ、これまでにない表情で僕を見た。怒り、諦め、絶望…そういった類の感情......


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