パーフェクト・カップル Vol.22

「清く正しく」を続けることができなかった、人気アナウンサーの転落劇

誰もがインターネットやSNSで監視され、さらされてしまうこの時代。

特に有名人たちは、憧れの眼差しで注目される代わりに、些細な失敗でバッシングされ、その立場をほんの一瞬で失うこともある。

世間から「パーフェクトカップル」と呼ばれ、幸せに暮らしていた隼人と怜子。しかし結婚6年目、人気アナウンサーの夫・隼人が女の子と週刊誌に撮られてしまう。夫のピンチが続く中、妻は番組での夫婦共演で夫を救うことに成功する

夫は以前の名声を取り戻した。が、再びスキャンダルが襲う。夫は妻を守るためある決断をし妻に告白するが…。

「世間の目」に囚われ、「理想の夫婦」を演じ続ける「偽りのパーフェクトカップル」の行く末とは?


隼人:「人生も、生きがいも、俺のせいで失って欲しくない」


「…今、リコン、って言った?」

怜子の、キョトンとした顔の問いかけに思わず怯みそうになったが、僕は頷き、もう一度言った。

「…離婚してほしい。」

2度目の僕の言葉に、怜子の顔からさっきまでの柔らかな表情が消えた。けれど彼女は、僕から目をそらすことはしなかった。

怜子はまるで、僕の心の奥底を見透かそうとするように、僕の目を見つめたまま、言った。

「どういうこと?ちゃんと、説明してくれるわよね?」

―私は、もう逃げない。

怜子のまっすぐな視線が、そう言っているように感じた。僕の言葉の真意をきちんと理解しようとしていることが伝わってくる。

僕は、握ったままだった彼女の手を、もう一度握り直すと、どうか一つの誤解も生まずに、僕の気持ちが全て伝わりますように、と祈りながら経緯を説明した。

ついさっき、さやかが暴露記事を出す、と教えてくれた香川さんのこと。そしてその記事には、さやかと付き合っていた時の写真も載せられていて、さらに際どい写真を出される可能性もあること。

まるで、怜子がさやかを脅してあの騒動の時に彼女を黙らせたように書いてあること。そしてこの記事を叩き潰してくれる、という香川さんの申し出を断ってしまったことと、その理由を…。

怜子は、相槌を打つこともなく、黙ったままだった。

「確かに、俺のキャリアのことだけを考えれば、香川さんに裁判を起こしてもらって、さやかを黙らせるのが一番いい方法だと思う。でも、怜子や翔太はどうなる?夫が女性問題で裁判中なんて、怜子の仕事はどうなる?」

モデルの中でも、特にクリーンで明るいイメージを求められるのが「ママモデル」だ。裁判になれば、仕事は確実に減る。

裁判=罪ととらえる雑誌やスポンサーが、たくさんのママモデルの中からわざわざそんな「危険な渦中」にいるモデルを選ぶわけはない。

その上、裁判になれば記者や心ない人…不特定多数の人が傍聴することができる。そうなればゴシップだけが切り取られ、広がる可能性も高い。

世間は正しい情報よりも、下世話な話を面白がる。

幸せな理想の夫婦だと言われていた僕らなら尚更、その知られざる顔が世間の興味を引き、広がっていく。

僕は、怜子の仕事への情熱も、どれほど仕事にプライドを持ってきたかも一番側で見てきた。だから前回のように、自分のキャリアのことだけを優先する判断はしない。今回は夫として、怜子を守ることだけは決めていた。

「モデルとしての人生も、生きがいも、俺のせいで失って欲しくない。」

ずっと見つめていた怜子の目が、少し歪んだような気がして胸が痛んだが、僕は続けた。

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