2018.05.13
リスクを嫌う男 Vol.12−保険プランニング−
そのとき、人間の本性を垣間見ることになる。
その人に適した保険を設計するには、人生計画、金銭事情、価値観、そして家族や異性関係についても…様々なヒアリングを重ねる必要があるからだ。
三上保(みかみ・たもつ/30歳)は、外資系保険会社の保険プランナー。
東京のアッパーな男女を数多く顧客にもつ彼は、順調に成績を伸ばし、トップセールスマンとしての地位を確立している。
「リスクを嫌う男」一挙に全話おさらい!
第1話:幸せアピール=離婚フラグ!外資系保険プランナーを驚愕させた、新婚夫妻の闇
午前7時半。保は青山の自宅マンションを出ると、扉の鍵がかかっていることを、2回、確認した。これは、保の日課である。
学生時代に短期留学していたロンドンで盗難被害にあって以来、戸締りには念には念を入れておかないと気が済まなくなってしまった。
革靴の音を響かせてエントランスを通り過ぎ、自動ドアを抜ける。その瞬間…ふいに後ろ髪を引かれて、保は「しまった」と声を出した。
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第2話:女には皆、裏の顔がある。超絶好みな25歳小悪魔美女のリスキーな私生活
「…もしもし、三上です」
慌てながら小声で応答すると、耳元で甲高い早口が響いた。
「ああ、三上さん!ちょっと緊急事態で…赤坂のお店にすぐ来られるかしら?30分以内に」
声の主は、田所紗英(たどころ・さえ)。都内で複数店舗を展開するコルギサロンのオーナーで、月額15万円の積立保険を契約してくれている、そこそこの太客である。
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第3話:知らぬは夫だけ…巧妙に隠された、清純な(はずの)妻の秘密
日曜日の、豊洲。
このエリアほど、アラサー独身男が似合わぬ場所もないだろう。そびえ立つタワマン、子どもたちの姿、ショッピングモール。
その圧倒的ファミリー感にどうしようもなく疎外感を覚えながら、保は足早にアポイント先へと向かった。
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第4話:外資系保険プランナーが惚れた、貯金0円・浪費女の意外な素顔
「今日はまた雰囲気が違って…素敵ですね」
つい口走った後で「しまった」と後悔したが、美里は言われ慣れているのだろう、定型文のごとく「ありがとうございます♡」と口を動かし、首を傾げてみせた。 そのしぐさも、猛烈に好みである。しかしながら、彼女が続けた次の一言で、保は一気に現実へと引き戻された。
「このお洋服たち、今朝届いたばかりなの。褒めてもらえて嬉しい!」
…そうなのだった。原井美里は、25歳にして未だ貯金0円。入ってきたお給料もボーナスもすべてその月に使い切ってしまうという、筋金入りの浪費女なのだ。
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第5話:家庭で存在感を失った夫が癒しを求めた女は、まるで“妻の劣化版”
高野文雄。見覚えのあるその男は、およそ1年前に夫婦で保険契約を預かった、保のクライアントだ。
高野は保より5歳ほど年上。東工大卒、大手ゼネコンに勤めるエリート。日本各地のデザイナーズホテルや商業施設の設計に数多く関わっていると聞いた。
もともとは、高野の妻・沙知(さち)と保が早稲田の同級生であり、「子どもが生まれたので保険を見直したい」と、彼女から連絡をもらったのだ。しかしながら今、高野の肩に寄り添う女性は…保の知る顔ではなかった。
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第6話:庶民が“東京人生ゲーム”でもがくことに、意味はあるのか?
「…こんにちは」
空が夕焼け色に染まる頃、保は橘に書いてもらった地図を頼りに、“大ちゃん”の家へとやって来た。石垣に囲まれた赤煉瓦の、独特な伝統家屋。その奥から、非常にのんびりとした声で「はーい」と叫ぶ女性の声がした。
しばらくして保の前に現れた“大ちゃん”は、橘とも、『ひとし 石敢當店』で出会ったその仲間たちともまた違う雰囲気を持つ男だった。穏やかさの中に、苦労の痕跡を感じるような…。
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第7話:「保険プランナーさんとかいいな♡」思わせぶりな小悪魔美女に、リスクを嫌う男が翻弄された夜
「三上さんって、結婚されてますか?」
書類にペンを走らせていた美里が、急に顔を上げた。
「いえ…独身ですよ。彼女もいません」
咄嗟の質問に慌て、保は聞かれてもない彼女の有無まで正直に答えてしまう。「そうなんですね」と呟く美里が一瞬、ホッとしたように見えたのは、願望からくる幻覚だろうか?
しかしその後、美里はなおも、保を翻弄するようなセリフを口にするのだった。
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第8話:まさかあの、名の知れた経営者まで…。(自称)モデルに転がされる愚かな男
「実は、折り入って相談がありまして」
保をソファ席に誘った後、中條はそう切り出すと、わざわざいったん応接室のドアを開け、外に誰もいないことを確認した。
そして再びソファに腰を下ろすと、とんでもない無理難題を求めてきたのだ。
「単刀直入に言うと、妻ではない女性を受取人にして、保険を契約したいんです」
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第9話:寡黙な男は要注意。会話のない夫婦を襲った突然の離婚危機
「保険プランナーの、三上です!」
しばらくして玄関に現れた原井茂は、本当に美里の父親なのか?と疑いたくなるほど全く愛想のない男だった
一切の無駄口を叩かず「どうぞ」と小さく口を動かすと、保を中へと誘うのだった。
−寡黙な人なんだな。
会って数秒で保はそう理解したが…しかし美里の父・原井茂は、「寡黙な男」ではどうにも済まされない、重大な秘密を抱えていたのである。
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第10話:夫の昇進に大きく貢献した美人妻が語る、“男を上げる”女の条件
美里とやりとりをした数日後。保は、青空を突き抜くようにそびえる、東銀座の高級タワーマンション最上階を見上げていた。
「関取って、こんなところに住んでるのか…」
完全なるただのイメージだが、関取とタワマンというのは意外な組み合わせに思え、つい独り言ちたのだ。これから初アポに向かうのは、美里の紹介リストにあった“五十嵐有沙(いがらし・ありさ)”という女性。
そんなに詳しくない保でも名前を知っている、某関取の妻ということである。
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第11話:数々の夫婦を見てきた保険プランナーが語る、成功する男が妻にしている女性の共通点とは?
「いや、本当に素敵なご自宅で…すべて奥様のご趣味ですか?」
保なりにオブラートに包んだ聞き方をしたが、どう考えても関取の趣味が反映されているとは思えない。そのことを、彼がどう思っているのかを聞いておきたかったのだ。
インテリアもさることながら、二人のやりとりを見ていれば彼が夫人の尻に敷かれていることは明らか。そこに、不満はないのだろうか?
第11話の続きはこちら
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