京都ちゃん Vol.10

京都ちゃん:恋愛経験ゼロの京おんなを打ちのめした、婚約者の意外な過去

生粋の京おんな・鶴田凛子(26歳)は、西陣で呉服店を営む京野家の跡取り息子・京野拓真と婚約中だ。

義母の過干渉に苦しむ凛子は拓真に嘘をつき、学生時代に好意を寄せていた竜太と密会心が揺れてしまう。

ますますエスカレートする義母の横暴。しかし婚約者・拓真は事なかれ主義で凛子は我慢の限界に。

ついに爆発した凛子を拓真は意外にも男らしく受け止めるが、凛子は桜子に誘われ東京へ。

竜太と再び再会し、自分には逃げ場所があることを知った凛子は、もう一度だけ拓真と頑張ってみようと心に誓うが...。


「これ…よかったらお義母さんに」

東京から戻った翌日、凛子は拓真とともにオープンしたばかりの『FRANZE&EVANS LONDON』を訪れていた。

夜にJCの会合があるがその前に少しだけ会おう、と拓真に誘われたのだ。

『ララ・ファティマ』っていう紹介制パティスリーのローズケーキ。予約しないと買えへんらしいんやけど、桜子さんがお土産にって、私の分と拓真さんの分を用意してくれてて」

持参した小箱を取り出しながら語る凛子は、無意識に饒舌になってしまう。…別に、後ろめたいことがあるわけでもないのに。

「私の分を昨日家で食べたんやけど、ローズのいい香りがして美味しかったよ。…お義母さんの口に合うかはわからへんけど…」

「ありがとう。母さん甘いもの好きやから、喜ぶと思う」

そわそわと持ち帰り用の紙袋を渡す凛子に、拓真がそんな気遣いを見せた。

すると彼もまたそわそわと、凛子の機嫌を伺うように口を開くのだった。

「凛子ちゃん、あの、今週末なんやけど…」

言いづらそうに、弱々しく尋ねる拓真。

その言葉の続きを、凛子は笑顔で遮った。

「大丈夫やよ」

「え…?」

凛子の反応が意外だったのだろう、拓真が怪訝な表情を見せる。

そんな彼に凛子は再度、笑顔で頷いてみせた。

「お義母さんとの食事やんね?大丈夫、よろしくお願いします」

…竜太の言う通りだ。人生なんて、変えようと思えばいつでも変えられる。

それなら、もう少しだけ。

拓真と一緒に、この道で頑張ってみよう。

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